自分を抱き寄せる逞しい体に、ミリアリアはそっと顔を寄せた。
温かくて、きもちいい。
そこから離れたくなくて、入らない力を振り絞り、必死に擦り寄る。
ふっ、と誰かが笑ったような気配がし、さらりと顔にかかっていた髪をどけられた。
こんな風に、心からくつろいでいられるのはいつ以来だろう。
ミリアリアは目を閉じたまま、ぼんやりと考える。
プラントに来て、与えられた居場所で必死に働いて。
ディアッカとの婚約発表に向けた準備、そしてそのディアッカの記憶喪失。
ザラ派による総領事館の襲撃事件。
短い間に、たくさんの出来事があった。
ディアッカに必要とされた自分。
ディアッカに忘れられた自分。
ディアッカがいなければ、もうミリアリアはミリアリアでいられない。
気づけばそれほどまでに、ミリアリアはディアッカを愛していた。
あの紫の瞳で、自分を見て欲しい。
優しい声で、名前を呼んで欲しい。
力強いあの腕で、きつく抱き締めて欲しい。
好き。だいすき。
愛してる。
ディアッカの腕の中で、ミリアリアの閉じられた瞳から涙が零れた。
ディアッカはそれに気づいて、そっと唇を寄せる。
「…ミリィ?」
ぽろぽろ、と涙は止まらず、ミリアリアの頬を伝う。
「ミリアリア」
ディアッカの声に反応したのか、ゆっくりとミリアリアの瞼が開いていく。
護り石と同じ、碧い瞳が現れる。
「…ディアッカ…」
喘ぎすぎて、掠れた声。
ディアッカはサイドテーブルに置いた水のボトルを取り、口移しでミリアリアに飲ませた。
こくん、とミリアリアの喉が動く。
「怖い夢でも、見た?」
ディアッカは、優しく問いかけた。
「…ううん。幸せなの。」
「幸せ?」
ミリアリアの瞳から、また一粒、涙が零れた。
「こんな風に、ディアッカがいて。
あったかくて、一緒にいられて、安心出来て。
幸せ、なの。好きすぎて、どうすればいいかわかんなくて、涙が出るの。」
ディアッカは、ミリアリアを抱き締める。
「そっか」
「…プラントに来てから、色々な事があって。
でも、ディアッカがいてくれたから、がんばれたの。
それが私を忘れたディアッカでも、その気持ちに変わりはなくて…」
「うん」
「だから、こうしてまた一緒にいられて、抱き合う事が出来て、ほんとに幸せで…。気づいたら、涙が出てたの」
「…そ、か。」
「ディアッカ、あったかくて、きもちいい…」
ミリアリアは小さな体をディアッカに摺り寄せ、その匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「…俺、さ。あのまま記憶が戻らなくても、またお前を好きになったと思う。」
ディアッカがぽつりと、呟いた。
「え…」
ディアッカは、ミリアリアの絡んだ髪をそっと指で梳く。
「やっぱり、俺にはお前が必要なんだ。例え何度記憶を無くしても、俺はお前を好きになる。」
「…それでも、忘れないで。もう。」
ミリアリアは碧い瞳を煌めかせ、ディアッカを見つめる。
「ああ、忘れない。言ったろ?いなくならないって。」
「…うん。」
ディアッカは、子供のように自分にしがみつくミリアリアの頬にキスを落とした。
「…メリークリスマス。婚約者殿」
ミリアリアが時計に目をやると、ちょうど日付が変わったところで。
「メリークリスマス。ディアッカ。」
ミリアリアは子供のように微笑むと、力の入らない腕を伸ばしてディアッカの首に巻きつけ。
柔らかい唇を、ディアッカの唇にそっと重ねた。
最終話は、クリスマス当日のエピソードです。
まぁ、梅雨時にupなんですけどね…(笑)
2014,6,19up