護り石 2

 

 

 

「お待たせ。えっと、ディアッカ、手出して、目瞑って?」
「…俺は子供か?」
そう言いながらもディアッカはミリアリアの言うとおりにする。
ミリアリアの近づく気配がして、次の瞬間ディアッカの手のひらに、ころん、と何かが転がった。
 
 
「…もう、見ていいわよ」
 
 
ディアッカの手のひらに乗せられたもの。
それは、ミリアリアの瞳と同じ。
碧い小さな石のペンダントヘッド、だった。
 
 
 
「…ハウメアの、護り石。覚えてる?」
ディアッカは僅かな時間だけ思考し、目を丸くした。
「アスランが、紅い石のペンダントしてるの見たことない?」
「そう言えば…してる、な。」
「あれ、カガリが昔アスランにあげたのよ。
ハウメアの護り石、ってオーブの言い伝えなの。
ハウメア、って言う神様がオーブにはいて、この石を持っていると、ハウメアが護ってくれる前に、話したわよね…?」
ミリアリアは恥ずかしそうに俯いたまま、それでも必死に説明した。
 
 
「…これ、俺、に?」
「う、うん。カガリに相談して用意してたの。でも、あの…用意したのは、別れちゃう前、なんだけど。」
ディアッカはじっと石を見つめた。
ミリアリアの瞳と同じ、暖かい海の色。
 
「…ほんとは、初めての誕生日プレゼントにするつもりだったの。
カガリがアスランに護り石をあげたのを聞いて、そういえば昔あなたが欲しがってたことを思い出したの。それで、私もディアッカに、って思って。
だけど、あんなことになっちゃって…ずっと実家に置きっぱなしだったの。
でも、ディアッカが婚約指輪の石から全部選んでくれたって聞いて、ならやっぱり私も護り石を、って…思って…。」
 
 
ミリアリアは、石を見つめたまま黙り込んでしまったディアッカにそっと目をやった。
そして、もしかして気に入らなかったのかと不安になる。
 
「えと、原石だからあんまり綺麗じゃないかもだけどっ!私はそれが一番綺麗かなって思って!
時間がなくて、ラッピングすらしてないけどチェーンも用意してあるしすぐ使えるしっ!
あの、ほら、任務中もつけられるし、御守りにはなるから…。」
 
ミリアリアの声が、だんだん小さくなった。
 
「あの…。こんなのしか、用意できなくて。しかも遅くなって。ごめんね?ディアッカ…。」
 
 
「お前が、選んでくれたんだ?これ。」
ミリアリアは緊張にびくんと肩を震わせた。
「う、ん。あの、そう、よ。」
 
 
 
次の瞬間。
 
 
 
ミリアリアはディアッカの腕に絡め取られ、逞しい胸に体ごときつく抱き締められていた。
「…ほんと、ずるい。お前。」
「…え?」
「俺、なんも用意してねぇじゃん。クリスマスプレゼント。」
ミリアリアはディアッカの腕の中で、そっと首を振った。
「私の事、思い出してくれたじゃない。それが最高のプレゼントよ。
それにもう、世界に一つしかない指輪も貰ったわ。」
 
ディアッカの唇が、ミリアリアの髪に触れる。
 
 
「…今まで貰ったどんなものより、いちばん嬉しい。
ありがとう。ミリィ…愛してる。」
 
 
ディアッカの言葉に、ミリアリアはそっと息を吐いた。
「…うん。私も、愛してる。」
ミリアリアの体から、緊張とともに力が抜けていく。
「それ、今日の荷物の中に入ってたの。クリスマスに、間に合って良かった…」
「…ああ。」
 
だから、さっき日付の事を気にしてたのか。
ディアッカは、きつく抱き締めていた腕を少し緩める。
「つけて?」
「え、え?うん、いいけど…」
ディアッカはミリアリアにチェーンとヘッドを渡し、作業がしやすいように少しだけ前かがみになった。
ミリアリアの細い腕が、ディアッカの首に回される。
 
「…できた、わよ。どう?邪魔じゃない?」
ディアッカは再びミリアリアを力いっぱい抱きしめた。
「邪魔なわけねぇだろ?それよりどう?似合ってる?」
「…うん。」
恥ずかしいのか、下を向いたまま短く返事をするミリアリアの髪に、ディアッカはキスを落とす。
そして慈しむように髪を撫でると、ミリアリアの耳元で囁いた。
 
 
「…もうひとつ、欲しいもんがあるんだ、俺。」
「え?もうひとつ?なに?」
「お前が、欲しい。」
ミリアリアが、はっと顔をあげた。
 
 
「お前を抱きたい。」
 
 
ディアッカの紫の瞳が、ミリアリアを捕らえる。
そしてミリアリアの碧い瞳もまた、ディアッカを捕らえて離さない。
ミリアリアが、ぽつりと呟いた。
 
 
「私も、あなたに抱かれたい…」
 
 
それは、二人の心が重なった瞬間。
 
 
ミリアリアはディアッカの紫の瞳を見つめながら花が綻ぶように微笑むと、碧い瞳をそっと閉じた。
程なく、熱い唇が降りてくる。
 
 
ディアッカは、ひたすらにミリアリアの唇を貪った。
柔らかく跳ねる髪に指を絡めて梳きながら、震える唇に舌を入れ、獰猛に吸い上げる。
「んぅ…んっ」
柔らかく香る花の香りとミリアリアの甘い声がディアッカを、煽る。
 
 
狂いそうな程、愛しくて、愛しくて。
 
 
ディアッカはそのまま、ミリアリアに溺れて行った。
 
 
 
 
 
 
016
 
ハウメアの護り石ネタは、アスカガで有名?なだけにきっと色々なサイトで出ていると思ったのですが…。
アスカガのあのシーンが好きで、今回登場させてしまいました。
 
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2014,6,19up