「い、たたた…」
翌朝。
ミリアリアはベッドから立ち上がろうとして、ついそう口にした。
結局、あの後キスだけでは止められなかった二人は、夜中まで再び何度も愛し合い、そしてしっかり抱き合ったまま眠った。
しかし、ディアッカの激しい責めに、体力が回復していないミリアリアがついて行けるはずもなく。
「か…体、痛い…。なにこれ…」
隣で眠るディアッカを起こさないようにそっとベッドを出ようとしたミリアリアだったが、筋肉痛のような痛みに顔をしかめた。
「…どこが痛いんだよ?」
「きゃっ!」
突然ディアッカに声をかけられ、ミリアリアは驚いて声をあげた。
「ご、ごめん、起こしちゃった?」
「…ん、平気。おはよう、ミリィ。」
ディアッカの腕が伸び、ミリアリアの頬を撫でた。
「おはよう、ディアッカ」
ミリアリアも手を伸ばすと、ディアッカの額にかかる髪をそっと後ろへ流して微笑んだ。
「ごめんな。昨日、無理させすぎた?」
「…大丈夫。ちょっと疲れただけよ。ディアッカこそ、足は?」
「俺はへーき。つーか、素直じゃねぇなあ…」
ディアッカがクク、と喉の奥で笑った。
「だって…無理させられてなんかないもの…」
「じゃあ、今からまた」
「それは無理!あ、む、無理、じゃないけどちょっと…」
慌てふためくミリアリアの言葉に、ディアッカがベッドの上で吹き出した。
「ディアッカ、甘いもの平気?」
シャワーを浴びてすっきりとしたミリアリアが、キッチンから顔を出しディアッカに声をかけた。
「好き、ってほどじゃないけど、食べるぜ?普通に。」
「そう。分かったわ。」
ミリアリアはにっこり笑ってキッチンに消えた。
そのかわいらしい姿に笑みを零し、ディアッカは上着を取りに寝室に向かった。
「よ…っと。」
クローゼットから適当に服を出し、ベッドに投げる。
昨晩散々抱き合ったせいで乱れたベッドは、シーツまで掛け直されてすっかり綺麗に整えられていた。
いい嫁さんになるぜ。
いつだか聞いたフラガの言葉を思い出し、首に掛けられた護り石をそっと撫でるとディアッカはくすりと笑った。
確かに、ミリアリアなら間違いない。
「あれ、何だこれ…」
身支度を整えたディアッカは、サイドテーブルの隅に置かれた写真立てに目を止めた。
「…サイ、キラ…。カズイ?」
それは、ミリアリアがカズイから貰ったカトーゼミの写真。
中心にいるのはトール・ケーニヒだろう。
トール、ミリアリア、キラ、サイ、カズイが笑顔で会話している姿が一枚の写真に収められている。
ごく普通の、ナチュラルの学生達の写真。
「お待たせ、ご飯…」
ディアッカを追いかけて寝室にやって来たミリアリアが、驚いたように立ち止まった。
「これ、いつの?」
「…3年前、かな。ヘリオポリス崩壊当日の写真なの、それ。」
「当日?」
ディアッカは振り返らない。
勝手に飾っちゃって、気に障ったのかしら…?
ミリアリアはひとまず、写真について説明した。
「プラントに残る時、カズイから貰ったの。キラとサイも同じものを持ってるわ。
…あの日、カレッジの広報誌から取材を受けてたの。その時の写真。」
「そう、か。」
「…ごめんね、勝手に飾っちゃって」
口数の減ったディアッカに、ミリアリアは怒らせたのかと本気で心配になった。
「…別に怒っちゃいねぇよ。
てか、せっかくだから俺のと一緒にリビングに置こうぜ?」
「え?いいの?」
ディアッカは、くるりと振り返る。
そこにあるのは、ミリアリアの心を掴んで離さない、紫の瞳と優しい笑顔。
「もちろん。ここはお前の家なんだから、遠慮なんかすんなよ?」
ミリアリアはその言葉にきょとんとし、そしてとびきりの笑顔を浮かべた。
「…うん。ありがとう、ディアッカ。」
ミリアリアはディアッカに駆け寄り、その胸に飛び込む。
「ミリアリア?」
「…ごはん、冷めちゃうよ?あとね、ケーキ焼いてるの。後で食べよう?」
そう言って腕の中でにっこり笑うミリアリアに、ディアッカの胸がどくんと疼く。
「なに?…んっ…」
ちゅ、とキスをひとつ、愛しい婚約者の唇に落とし。
「ほら、行こうぜ?」
ディアッカは、ミリアリアの手を取る。
「…うん。」
ミリアリアはその手をぎゅっと握りしめ。
二人は笑いあいながら、まずはミリアリアの手料理の元へ、歩き出したのだった。
ここまでお付き合い下さったすべての皆様に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
2014,6,19up