28, ひとつ屋根の下で

 

 

 

ディアッカの腕にぎゅっと掴まったままのミリアリアが、ひく、とひとつ嗚咽を漏らした。
 
「落ち着いた?」
「…うん。」
 
そう言いながらも、ミリアリアはディアッカから離れようとはしなかった。
泣いたせいで腫れてしまった瞼に、ディアッカは優しく唇を落とす。
そしてミリアリアの手を取り、うっすら赤く跡が残る手首にも、そっと唇を触れさせた。
 
 
「…ごめんな、これ。」
「…いいの。そのうち消えるし大丈夫。」
 
 
俺が、ミリアリアに付けた傷。
もう二度と、こんな事があってはならない。
守りたい。
出来ることなら、ずっとそばに置いておきたい。
 
ディアッカは、意を決してミリアリアに向き直った。
 
 
「…やっぱさ、一緒に、住まねぇ?」
 
 
「え?」
ディアッカはミリアリアの肩に手をかけ、その驚いた顔をじっと見つめた。
 
「婚約発表も済んだ、ってのもあるけどさ。
それよりも、俺はもう、お前と別々の場所に帰りたくない。」
「ディアッカ…」
ミリアリアはディアッカを見あげた。
 
「記憶がない間、お前、うちの別邸に一緒にいてくれただろ?
あの時、何だかんだでお前の事待ってたんだぜ?俺。」
 
 
ミリアリアはぽかんと口を開けた。
「う、そ…。そう、なの?」
「そ。まぁ最初はともかく、さ。今日はいつ帰るのか、ちゃんと飯食えたか、いつ寝てんだろ、とか。
そんな事ばっか考えてた。」
ディアッカは、涙で赤くなってしまったミリアリアの頬に指を這わせ、微笑んだ。
 「それと。」
「…それと?」
 
 
「俺、お前の作る飯、毎日食いたい。」
 
 
ミリアリアは、なぜかきょとんとディアッカを見上げていて。
そして、じわり、と碧い瞳にまた涙を滲ませた。
 
「おっ、おい!なんだよ!」
「ディアッカ…何にも言わなかったから、ひっく、おいしくないんだと、思ってた…」
ディアッカは慌てて弁解した。
 
「違うって!俺、毎回完食してたし!イザーク達も褒めてたろ?!」
「イザーク達は優しいから、ひく、不味いなんて言わないわよ…。
ディアッカだって、昔から出されたものは残さないじゃない…。」
「う、や、そりゃそうかもしれねぇけど!でも、お前の飯はマジで美味いの!俺好みなの!」
「…そう、なの?」
「そう!そうなの!ああもう!」
ディアッカはまた嗚咽を漏らし始めたミリアリアを抱き寄せた。
 
「…あん時は、意地はってて。
素直に美味いって言えなかったんだって。いいかげん気付けよな?」
「っく、…うん。」
ミリアリアは嗚咽を堪え、ディアッカの背中に細い腕を回す。
 
 
「…で、返事は?」
そのままの体勢で、ディアッカがぶっきらぼうに言った。
「返事?」
「…結構、一大決心して言ったんだぜ?一緒に住まねぇ?って。」
ミリアリアが、ディアッカの胸に顔を埋める。
 
 
「…今年中に、引っ越し、っく、出来る、かな?」
 
 
ディアッカは、再びミリアリアの肩に手をかけた。
「ミリィ?それって…」
ミリアリアは、子供のようにごしごしと洋服の袖で涙を拭って、ふわりと笑った。
 
「うん。一緒に、住もう?…きゃあっ!」
 
 
その言葉を聞いて、ディアッカは思わずミリアリアをそのままベッドに押し倒し、ぎゅっと抱きしめた。
 
「ちょっと!危ないでしょ!」
「…ほんとに、一緒に住む?嘘じゃねぇよな?」
「こんな大事なこと、嘘なんてつかないわよ。」
ミリアリアは、すぐ近くにあるディアッカの顔を見て、微笑んだ。
「あ、でもディアッカのアパート、キッチンに調理器具、ほとんどないわよね…」
ディアッカも、はにかんだような笑顔になる。
 
「二人で揃えてけばいいじゃん。足りないものはさ。
まぁ、俺はミリィとベッドがあれば当面なんもいらねぇけど?」
ミリアリアは、恥ずかしそうにディアッカを見上げ。
 
 
「私は、ディアッカがいれば、当面何もいらないけど?」
 
 
馬鹿!と怒られるかと思ったディアッカは、いたずらっぽく笑うミリアリアの言葉に目を丸くし。
晴れやかな笑顔を浮かべて、婚約者にとびきり甘く優しいキスを送った。
 
 
 
 
 
 
016
 
甘い・・・(笑)でも、幸せな二人の様子が書けて楽しいです!
ちなみに、公式ではどうか知りませんが当サイトのミリィは、お料理がそこそこ得意、です。

 

 

 
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2014,6,18up