25, 愛すべき存在

 

 

 

会見場を出てしばらく歩くと、不意にミリアリアがよろけた。
「ミリアリアさん!」
いち早く気づいたラクスが、ミリアリアに駆け寄る。
「ごめん…ちょっと、気が抜けて。大丈夫、よ。」
「…今日はこのまま休んだ方がいい。ディアッカには私から…」
タッドがミリアリアを支えた。
 
「…いえ、このまま行きます。ディアッカと約束したので。」
 
 
会見場ではライトで分からなかったが、ミリアリアの顔色は真っ青だった。
ひと月近く、満足に食事も休息もとっていないのだから無理もない。
 
「しかし…君の体がもたないよ?
一応これでも私は医師だ。言うことを聞いてはくれないかね?」
タッドが優しくミリアリアを諭す。
 
 
「…行かせてやって、頂けないでしょうか。エルスマン議員。」
 
 
アマギのその言葉に、タッドやラクスだけでなくミリアリアも驚いて顔をあげた。
 
「私には息子しかおりません。しかし、ハウを見ているうちに、まるで自分の娘のような気持ちになってしまいましてな。
彼女の想いを、叶えてやりたいのです。」
アマギは頭を下げた。
 
「仕事なら、もともと婚約会見に合わせて休暇の調整をしています。
それに、彼女の頑固さは私やアーガイルもよく存じています。
どうか、ハウを婚約者殿のところへ。」
 
 
「館長…」
ミリアリアの瞳に涙が浮かぶ。
カガリの好意で公にプラントに残る事が出来、こんなに素敵な上司にも巡り会えた。
自分は、本当に幸せ者だ。
ミリアリアは改めてそう思った。
 
「…ディアッカさんのことですもの。きっと、寝ずに待っていらっしゃいますわね。」
ラクスがそう言って、くすくすと笑う。
 
タッドは苦笑し、溜息をついた。
「…少しだけ話をしたら、すぐに休むように。
それと、目が覚めてからでいいから、医師の診察を受けなさい。
それが、君を行かせる条件だ。
あいつは特別室に入っているから、着替えを持って行って、そのままそこに泊まりなさい。
守れるかね?ミリアリア。」
ミリアリアは、笑顔で頷いた。 
 
 
「はい、お父様。」
 
 
そして、ラクスとアマギに向き直る。
「館長、ありがとうございます。私、行ってきます。
ラクスも…いろいろありがとう。」
 
ラクスとアマギは微笑み、頷いた。
 
 
 
 
「…ディアッカ、大きく出たね。宇宙でいちばん、なんて。」
キラがからかうようにディアッカを見ると、ほのかに顔を赤くしたディアッカがそっぽを向いた。
「…あいつ、よりによって…」
「いいじゃない。嘘は言ってないんだし。ね、イザーク?」
「ふん。くだらん。俺は帰るぞ。」
イザークは踵を返し、出口に向かった。
「あれ?イザークには刺激が強すぎたかな?」
「…お前、そんなキャラだったっけ?」
キラはにこっと笑い、首を傾げた。
 
「さぁ?じゃあ、僕も帰るよ。
ミリィの為にもちゃんと休んで、早く治してね、ディアッカ。」
「ああ、サンキュ。イザークも。」
「…ミリアリアに、よろしく伝えてほしい。料理の腕も、素晴らしかった、とな。」
「…ああ、分かった。」
 
 
キラとイザークの姿が、ドアの向こうに消える。
ディアッカはひとつ息を付くと、先程の会見でのミリアリアを思い出した。
俺とあいつは、これで、正式に婚約者になったんだ。
 
しかし、本来なら喜ぶべきはずのディアッカの心には、ずっしりと重い何かが腰をおろしていた――。
 
 
 
 
 
016
 
タイトルは、ミリアリアのこと。
ディアッカだけでなく、ミリアリアにはたくさんの味方がいるんです。
 
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2014,6,16up