ディアッカは戸惑った表情を浮かべた。
「…俺?」
「ミリアリアを助けに行くのか、行かないのか。どっちだ?」
「…俺、は…」
「迷うならやめておけ。そんな状態で行っても、お前が撃たれるぞ。」
タッドの言葉に、ディアッカは狼狽えた。
いつもなら皮肉の一つも返すはずの自分が、なぜ?
頭痛はますますひどくなって行き、ディアッカは額を抑えた。
「…その気になったら、後から合流しろ。時間がない、行ってくる。」
イザークはそう言い残して、シホの後を追った。
「頭が痛むのか?ディアッカ。」
タッドの声が遠くから聞こえる。
ディアッカは混乱していた。
あいつが、殺されるかも、しれない。
ついこの間、ディアッカの腕の中で甘い声をあげた細い体、あどけない寝顔、花のような笑顔ーー。
また、撃たれたら…。
「…また?」
ディアッカの口から、疑問がそのまま声となって零れ出た。
肩を撃ち抜かれ、柵の向こうに落ちていくのは、あいつ…ミリアリア?
「…なんで…あいつ、撃たれて…」
ずきずき痛む頭を押さえて黙り込むディアッカに、それまで無関心を通してきたキラが怒りの目を向けた。
「ミリィがいちばん助けて欲しがってるのは、君なのに…。
どんなことがあっても、守るって言ってたくせに…。」
「うる、せぇ…」
ディアッカはキラのその言葉に、ひどく苛立ちと焦りを感じる。
掴めそうで、掴めない何か…。
キラが怒鳴った。
「ミリィが殺されそうなのに、なんで、君がこんなところにいるんだよ!!ディアッカ!!」
その瞬間。
風船が割れるかのように膨大な記憶がディアッカの脳内に溢れかえる。
ーートールがいないのに…。なんで、こんなやつがここにいるのよ?!
ーーディアッカ、たすけて。
ーー私、あなたが好きよ、ディアッカ。今ここにいる、そのままのあなたが。
「…ミリアリア。」
頭痛が嘘のように消え、ディアッカの意識はあっという間にクリアになる。
キラとサイは、ディアッカの纏う空気の変化に顔を見合わせ。
タッドは眉をあげて立ち上がった。
「ディアッカ。戻ったか。」
「…ああ。多分、な。」
ディアッカはゆるゆると頭を振り、顔を上げた。
「…ディアッカ、もしかして…」
サイがおそるおそるディアッカに話しかける。
ディアッカはサイを見て、にやりと笑った。
「悪い、サイ。時間がねぇから話は後だ。」
「ディアッカ…!」
サイはぱぁっと笑顔になり、剣呑な表情だったキラまでもが目を丸くした。
「キラ。11時20分になったら、館内のシステムをダウンさせてくれ。そのタイミングで侵入、一気に制圧まで持って行く。
アスランは親父の警護を。俺はイザークたちに合流する。」
キラは、困ったように微笑んだ。
「…ミリィにちゃんと謝って、それでたくさん褒めてあげてよね?ディアッカ。
仕方ないから、今回僕はそれで許してあげる。」
「…りょーかい。」
「ディアッカ!」
タッドがディアッカを呼び止めた。
「…記憶が戻ったばかりだ。無理はするな。気を、つけてな。」
ディアッカはタッドに敬礼をして、不敵に笑った。
「サンキュ、親父。ミリアリアはきっちり連れて帰ってくるぜ!」
そう言い残すと、ディアッカはイザーク達の後を追った。
ディアッカの記憶を取り戻したのは、キラの叫び。そしてミリアリアのくれた言葉。