「…離して。」
ミリアリアは、ディアッカを睨みつけた。
「なんで?俺たち婚約してんだろ?だったらいいじゃん。」
ディアッカの紫の瞳が、ミリアリアの全身を舐めるように見つめた。
「何が、いいじゃん、なのよ」
「抱いたっていいじゃん、ってこと。わかんねぇの?」
「…嫌。私の記憶のないあんたに抱かれたくなんてないわ。離してよ!」
ミリアリアはそう言って、ディアッカの手から逃げようとしたが、ディアッカはその手を離そうとはしない。
「しょうがねぇじゃん、覚えてねぇんだから。それでも、キモチイイのは一緒だろ?」
ディアッカは酷薄な笑みを浮かべ、そのままミリアリアを組み敷いた。
「…どうせ、もう俺に食われてんだろ?俺もいい加減溜まってるし。
せいぜい気持ち良く、してやるよ。」
ディアッカの、甘くて低い声。
しかしそれは、ミリアリアの知るものとはどこか違っていて。
「いや…!」
ディアッカの手がミリアリアの胸元に入り込む。
覚えのある感触に胸を掴まれ、ミリアリアは必死で声を抑えた。
どうして急に、こんな事を?
でも、こんなの、ディアッカじゃない!
ミリアリアの心が悲鳴をあげる。
「や、だってば!あんたはディアッカじゃない!」
ミリアリアは渾身の力を込めて、ディアッカの身体の下で身を捩った。
ディアッカは薄く微笑むと、皮肉たっぷりに言った。
「じゃあ、俺は誰なわけ?」
ミリアリアは答えられない。
「お前はディアッカ・エルスマンの婚約者なんだろ?
そのお前が違うって言うんなら、俺は、誰?」
意地の悪い言葉に、ミリアリアはディアッカを睨む。
が、次の瞬間、違和感に気付く。
黙り込んだミリアリアに、ディアッカの手が再び伸びた。
「…不安なの?」
ぴたり、とディアッカの手が止まった。
ミリアリアは組み敷かれたまま紫の瞳をまっすぐに見上げて、ディアッカに問いかける。
「記憶が戻らないことが、怖いの?ディアッカ。」
ディアッカは、ミリアリアに射るような眼差しを向けた。
「…何だと?」
「じゃあ、どうしてあんな顔したのよ?!私には分かるわ!
ほんとは不安なんでしょう?」
「お前に俺の何がわかんだよ!!」
ディアッカの怒鳴り声が部屋の空気を揺らした。
ミリアリアも負けじと声を張り上げる。
「分かるわよ!馬鹿にしないで!私がどれだけあんたのこと好きだと思ってるの?」
ディアッカはミリアリアを睨みつけたまま動かない。
「ずっと会えなくて、やっと会えて、たくさん話をしたわ!
それを勝手に忘れちゃったのは、分かってないのはあんたじゃない!
とにかく、もう本当にやめて!!」
ミリアリアは何とかしてベッドから抜け出そうと動いた。
しかしディアッカは、それを許さない。
「きゃ…」
「…ひ弱なナチュラルのくせに、言いたい事言ってくれやがって…」
心労で弱った体はあっと言う間にディアッカに捕まり、両手を頭の上で押さえつけられる。
ミリアリアはまた体を捩ったが、今度は腕ひとつ動かすことができなかった。
「生意気なナチュラルには、お仕置きが必要、だな。」
そう言ったディアッカの紫の瞳は、冷たい怒りと欲情に染まっていて。
ミリアリアはぞくりと体を震わせると、そのまま顔を横に背けた。
2016,6,16up