失われた記憶 2

 

 

 

ミリアリアは愕然とし、碧い瞳を見開いた。
「…え…?」
「つーか、お前ら、なんで軍服変わってんの?赤にこんな美人いたっけ?」
ディアッカはミリアリアには目もくれず、イザークとアスランにそう尋ねる。
 
「…キラ、ミリアリアを一度外へ。シホは残れ。」
「分かった。ミリィ、行こう」
イザークの言葉にキラはミリアリアに声をかけた。
しかし、ミリアリアはあまりのことに動けない。
 
「ミリアリアさん、大丈夫です。ヤマト准将と外へ。ここは私たちに任せてください。」
「シホ…さん…」
シホは安心させるようにミリアリアに微笑んだ。
「ミリィ、行こう」
キラの言葉に、ミリアリアは素直に従った。
ディアッカの方を、見ることはなかった。
 
 
「一体なんなんだよ、あのナチュラルは…」
忌々しげにぼやくディアッカに、イザークとアスランは目を見交わす。
 
「あなたの、婚約者よ。エルスマン。」
 
「はあぁ!?」
「シホ!」
ディアッカとイザークの声が同時に上がった。
「一から説明するしかないでしょう!婚約発表までもう時間もないんです!」
シホの気迫に、イザークとアスランはそれ以上何も言えない。
 
「…どういうことになってんだか、説明してくんない?イザーク。アスランも。」
途方に暮れるディアッカに、そこにいる誰もが複雑な視線を向けた。
 
 
 
 
「…つまり、まとめると。今俺は20歳で。お前らも19歳と20歳で。
もう戦争は終わってて。」
「ああ。」
「バスターはもう存在してなくて。クルーゼ隊長もとっくに戦死して。」
「ああ。」
「イザークは隊長、アスランはオーブ軍属になったけどなぜかここにいて。
俺はイザークの隊の副官で。イザークは隊長やってて。」
「ああ。」
「俺は投降した後、どういうわけか足つきに乗ってバスター使ってあっちの陣営として戦って、そん時にさっきのナチュラルと出会って。」
「…ああ。」
「一度付き合って別れた後、二度目にあった大戦で再会して、よりを戻して結婚することになったと。」
「…まぁ、そういうことだ。」
 
 
「…俺、記憶喪失ってやつ?もしかしなくても。」
 
 
イザークは深々と溜息をついた。
「そうらしいな。エアカーに撥ねられたときに頭を打っている。
サイがたまたま近くを通りかかって、すぐ俺たちとミリアリアに連絡をくれた。
だからすぐにみんな集まれたんだ。」
「サイ?誰それ?」
「元AAのクルーで、在プラントオーブ総領事館の外交官だ。
俺たちと同い年で、オーブでは特別参事官補佐の任についている。」
「…そいつもナチュラル?」
ディアッカの顔が嫌そうに歪む。
イザークは無表情のまま話を続けた。
 
「そうだ。俺の友人でもある。サイも、ミリアリアもな。」
 
ディアッカはあんぐりと口を開けた。
「あの、ナチュラル嫌いのお前が?ナチュラルの友達?マジで言ってんの?」
 
 
「ディアッカ。いい加減真面目に考えたらどうだ?」
 
それまで黙っていたアスランが口を開いた。
「あぁ?」
ギロリとディアッカがアスランを睨みつける。
シホは無表情を装っていたが、内心ディアッカの態度に驚いていた。
これが、ミリアリアさんと出会う前の、17歳のディアッカ・エルスマン?
 
「今の話は全て現実として、お前の周りに起きていたことだ。
自分が記憶喪失って事、いい加減認めろ!」
「とっくに認めてるっつーの。つーか、てめぇに指図される筋合いはねぇんだよ。」
どこまでも剣呑な、ディアッカの言葉。
「よせ、アスラン。今は無駄だ。」
イザークがアスランを止め、ディアッカに向き直った。
 
 
「…地球に戻るはずだったミリアリアをプラントに連れてきたのはお前だ。
お前には彼女に対する責任がある。それだけは承知しておけ。
シホ、ミリアリアとキラをここへ。」
「はい。」
さすがにイザーク相手では何も言えないらしいディアッカだったが、ミリアリアの名を聞き顔を顰める。
ほどなく二人がシホとともに入ってきた。
 
 
「キラ、ミリアリア。状況を説明する。いいか?」
イザークの言葉に、二人は頷く。
ミリアリアの顔色は、蝋人形のように真っ白だった。
 
 
 
 
 
 
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2014,6,15up