14, 金髪巻き毛

 

 

 

キラへの用事を済ませたミリアリアは、とんぼ返りで領事館に向かっていた。
「ちょっと、あなた」
自分に声をかけられているとは一瞬思わなかったミリアリアは、ワンテンポ遅れて振り返った。
 
「…はい?」
ミリアリアの目の前には、艶めいた金髪を綺麗に巻いた美しい女性が立っていた。
琥珀色の綺麗な瞳、大きな胸に細い腰。
スラリと伸びた足に、キュッとしまった細い足首は男なら誰もが振り返るだろう。
「…あなたがディアッカの婚約者?」
意外な問いに、ミリアリアは目を見開いた。
 
 
「あの…どちら様でしょうか?」
とりあえずミリアリアは、当たり障りのない返答をすることにした。
発表まであと数週間。余計な揉め事は起こしたくない。
「私、ディアッカと、とっても仲良くさせてもらってたの。
これでわかるかしら?」
 
やっぱり…。
 
ミリアリアは内心溜息をついた。
いつか、こんなことがあるかもとは思っていたけど。何も今じゃなくても!
 
 
「…エルスマンさんのお友達ですか?」
女性はくすっと笑った。
「そう。親密なお友達。ナチュラルにはここまで言わなきゃわからない?」
ムッとしたミリアリアだったが、ここで揉める訳にはいかない。
「そうですか。エルスマンさんに用事があるなら、私ではなくご本人のところに行かれたらいかがですか?
私、仕事中ですので失礼します。」
そう言って、女性の横をすり抜けようとすると。
 
 
「あのディアッカを、どうやって誑かしたのかしら?」
ミリアリアの足が止まった。
「それとも、何か弱みでも握った?」
 
揉め事は、おこしちゃ、だめ、だけど…。
 
 
「ディアッカも、随分女の趣味が悪かったのね。」
「…なんですって?」
女性の眉が釣り上がる。
「そんな顔したら、せっかくの美人が台無しですよ。」
ミリアリアは無表情にそう言うと、碧い瞳でキッと女性を睨んだ。
 
「ディアッカの『もと』彼女だか友達だか知りませんけど、私に何を言ってもどうにもならないですよ。
私、バカで図太いナチュラルなんで。
ディアッカなら今日は本部にいるはずですから、話があればそちらへ直接どうぞ。
では、私はあなたと違ってとても忙しいので、これで。」
 
あまりの言葉に呆然とする女性をその場に残して、ミリアリアは早足にその場を立ち去った。
 
 
 
領事館に戻ったミリアリアは、がむしゃらに仕事をこなした。
そのおかげで、数日分の仕事が一日で片付いてしまった。
「…ミリィ、なんかあったの?」
無言で仕事を片付けて行くミリアリアに、恐る恐るサイが声をかけた。
 
「どうってことないわ。ディアッカの元カノに絡まれただけ。」
サイが書類をばさばさと落とした。
「ディアッカの元カノぉ!?」
「そう。金髪巻き毛に琥珀色の瞳で、スタイル抜群。分かりやすい好みよねぇ。
どうやってディアッカを誑かしたのって聞かれちゃったわ。」
「…そう。」
ディアッカ、これは大変だぞ…。
サイは、散らばった書類をゆっくりと拾い集めた。
 
 
 
「金髪巻き毛の女ぁ?」
ディアッカは、サイからの通信に声をあげた。
 
『そう。で、琥珀色の瞳って言ってたなぁ。…カガリと一緒だね。』
「それは…あー…」
『心当たりは、あるわけだね。』
「まぁな。でも、彼女とかそう言うんじゃないぜ?」
『適当につまみ食いした相手ってとこだろ?どうせ。』
「…その通りです。」
『まぁ、婚約発表までもうあまり間がないんだから。どうにかしなよね。』
「ああ、サンキュ。でもなぁ、休みもあわねぇし、そうそう領事館に押しかけるわけにもいかねぇし…」
『あ、ミリィ明日休みになったよ?』
「マジで!?」
ディアッカは身を乗り出した。
『…怒りのパワーで、数日分の仕事を一日で片付けちゃったからね。
館長が休んでいいって言ってたのを聞いたけど。』
「…分かった。早速対処する。じゃな!サイ!」
『ちょ、ディアッカ…』
 
 
そうして通信を切ったディアッカは、ポケットの中にある包みを転がした。
「ちょっと早いけど、ま、いいだろ。」
 
 
夕方。
仕事が終わったミリアリアは、気晴らしに外へ出ていた。
館長から突然休みを言い渡されたが、ディアッカに連絡する気にもなれない。
「せっかく、プレゼント買ったのになぁ…」
ミリアリアはバックの中にある包みを見て、溜息をついた。
近道をしようと、細い路地へ入る。
 
 
「ミーリィ!」
「きゃあ!」
突然後ろから抱きしめられ、ミリアリアは驚いて声をあげた。
「ディアッカ…」
振り返れば、そこにいたのは黒い軍服のディアッカで、ミリアリアはその姿にどきりとした。
 
 
「ちょっと、ここは外ですけど?抱きつかないでくれる?」
「こんな時間にこんなとこで、何してんの?」
「…べつに。ご飯買いに行くだけ。」
そう言ってミリアリアは歩き出した。
 
 
「何怒ってんの?」
「怒ってない」
「仕事終わったの?」
「終わった、けど」
「じゃ、行こ?」
「…は?」
「お前を、連れて行きたいところがあるんだ。」
そう言うとディアッカは笑顔になって、ミリアリアの手を取り走り出した。
「ちょっと!なんで走るのよ?!」
「日が沈むまでに行かなきゃ意味ねぇの!」
「何よそれ?!」
ミリアリアは、不機嫌だったことも忘れてディアッカに手を引かれるまま走った。
 
 
 
 
 
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2014,6,13up