13, プレゼント

 

 

 

プラントに、冬がやってきた。
「さむ…」
ミリアリアは領事館の窓を開け、思わずそう呟いた。
ディアッカとともにプラントにやってきたのは春の終わりだった。
「あとひと月で、今年も終わりかぁ…」
 
 
ディアッカとミリアリアの婚約発表は、クリスマスイブに決まった。
ディアッカはもっと早い段階での発表を希望していたのだが、父親であるタッド・エルスマンの日程が合わず、年内ギリギリの発表になったのだ。
とは言え、夏から秋にかけて内々には二人の婚約は周知の事実になっていたので、ミリアリアの身辺はなかなかに目まぐるしいものであった。
 
「…さて。館長たちが来る前に掃除しちゃおうかな。」
ミリアリアは冷たい空気を吸い込むと、くるりと振り返り室内に戻った。
 
 
「イザーク!シホさん!」
朝の寒さが嘘のような、暖かい昼下がり。
ミリアリアは待ち合わせた場所で、現れた二人に手を振った。
「すまない。あいつを撒くのに手間取ってな。」
「あら…。バレなかった?」
「大丈夫です。ヤマト准将が協力してくださいましたから。」
シホの言葉にミリアリアは微笑んだ。
「なら、大丈夫ね。」
 
 
ミリアリアは、ディアッカへのクリスマスプレゼントを買いに来ていた。
何をプレゼントするか散々悩んだミリアリアは、イザークと会う機会があった時コッソリとディアッカの好きなブランドを尋ねた。
ちょうどそこにいたシホも話に加わり、結局目星をつけたものを二人にも見てもらうことになったのだ。
 
ミリアリアはオーブの軍服の上にコートを着ていた。
その為、イザークやシホと一緒に居ても、一見ナチュラルとは分からない。
今日はこの後ザフト本部にいるキラにオーブの報道官として用事があったので、そのままイザーク達とザフトに戻ることになっていた。
 
 
「でね、これとこれで迷ってるんだけど…」
ミリアリアとシホはショーケースを覗き込む。
「ああ…確かに、どちらもエルスマンに似合う色ですね…」
「でしょ?でも、どうせならお仕事中も使える方がいいかなと思って。」
「それなら、デザインだけではなく利便性も考えないと、ですね。」
「そっか!あまり派手でも良くないわよね…」
 
 
そんな女同士の会話を、イザークは目を細めて眺めていた。
これが、平和、というものなのだろうか。
ナチュラルのミリアリアと、コーディネイターのシホ。
タイプは違うが、二人は同い年だそうだ。
こうしてきゃあきゃあと話をしているのを見ると、イザークまで心が温かくなってくる。
 
「イザーク!ちょっといい?」
ミリアリアに声をかけられて、イザークは我に返り慌てて二人のそばに歩みを進めた。
「イザーク、これって任務中も邪魔にならないと思う?どっちがいいかな?」
イザークはショーケースを覗き込んだ。
ミリアリアが指差した二つを見比べ。
「…黒もいいが…カーキの方だな。」
「やっぱり!」
ミリアリアとシホは同時に叫び、キョトンとしたイザークの顔を見て、また同時に笑った。
 
 
ミリアリアが選んだのは、ディアッカが愛用しているブランドの腕時計だった。
任務の邪魔にならないように、シンプルなデザインになっている。
早速代金を払い、時計をプレゼント用に包んでもらったミリアリアはにこにことご機嫌だ。
「二人とも、ありがとう!今度お礼させてね。」
「お気遣いなく。久しぶりにこんな時間を過ごせて、とても楽しかったですから。」
「気にするな。その分あいつにしっかり働いてもらう。」
二人の言葉にミリアリアは笑顔になり。
「じゃあ、私はキラのところに行くから。またね!」
そう言ってパタパタと走り去るミリアリアを、二人は微笑ましく見送った。
 
 
「本当に、可愛らしい方ですね。」
「あれで、電子工学にかけては相当なものだからな。ナチュラルとは、よく分からん。」
「…隊長も、やはりああいった…」
「?何か言ったか?」
シホは慌てて首を振った。
「いえ、何でもありません。戻りましょう。エルスマンが騒ぐと厄介です。」
 
 
 
 
 
 
016
 
なぜ腕時計にしたか、はこの後のお話で明かされます…
 
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2014,6,13up
2015,2,5改稿