ミリアリアは、サイからの呼び出しを受け、ディアッカとともに領事館への道を急いでいた。
タッドとは、次の予定があるという事で、ザフト本部で別れていた。
「正式に婚約を発表したら、一度ミリアリアを連れてフェブラリウスの自宅に来たらいい。ディアッカ、分かったな?」
「ああ。親父も早いとこ予定調整してくれよな?今年中には婚約を発表したいからさ」
せっかちなディアッカの言葉に、タッドは苦笑する。
「分かった。早速予定の調整に入ろう」
「お父様、申し訳ありません…」
強引なディアッカに恐縮して小さくなるミリアリアに、タッドは優しい目を向けた。
「気にすることはない。私も早く、かわいらしい娘が出来ることを公表したいからね」
その言葉にぽかんとするディアッカとミリアリアに手をあげ、タッドは颯爽と迎えの車に乗り去って行った。
「なぁ、いつの間にあんな呼び方になってんの?」
「え?何が?」
「…おとうさま、とかさ…」
ミリアリアは、先程のタッドとの会話を思い出した。
「そう呼んで欲しい、って言われたからだけど…今思うと、私、とんでもないこと口走った気がするわ…」
「は?」
訳がわからない、と言った顔をするディアッカに、ミリアリアはぽつりと言った。
「…お父様に、ディアッカのどこが好きか散々説明して、ディアッカと結婚させてください、って…」
ディアッカの足が止まった。
「お前…それは普通、俺がお前の親に言うセリフじゃねぇ?」
「…それ、もう言わないで。恥ずかしくて消えたくなるから」
ミリアリアの顔は、真っ赤になっていた。
「サイ、どうしたの?」
執務室のドアを開けて開口一番、ミリアリアはサイに声をかけた。
「おかえりミリィ。あれ、ディアッカ?」
「よお」
ディアッカはサイに軽く手をあげた。
「…ま、ちょうどいいか。ミリィ、カガリから通信が来てるんだ。今館長が話してる。ディアッカも一緒についてきて」
「俺も?」
ディアッカはミリアリアと顔を見合わせた。
「とにかく、行きましょ?」
ミリアリアはディアッカを促すと、サイのあとに続いた。
「失礼します」
ミリアリアはそう声をかけ、ディアッカとともにアマギのいる通信室に入った。
アマギはディアッカを見て驚いた顔をしたが、その顔は苦笑に変わった。
「ちょうど良いところに、本人達がやって来ました。では、私はこれで」
モニタに向かってそう言うと、アマギはミリアリア達を手招きした。
「エルスマン殿。身なりを整えておいた方がいいぞ」
「…は?」
すれ違いざま、小声でそんなことを言うアマギに、ディアッカは挨拶も忘れて素っ頓狂な声を上げた。
そんなディアッカを置いて、ミリアリアは急いでモニタの前に座った。
「お待たせカガリ、元気だ…」
そこまで言って、ミリアリアの笑顔が固まった。
ディアッカが振り返る。
『…やあ。ミリィ』
「…おっ!お父さん!お母さん!?」
ディアッカが慌てて軍服を整えた。
「な、なんで…」
慌てふためくミリアリア。
思えば、すっかり連絡を怠っていた。
もう通信も回復したのだし、一番初めに連絡しなければいけなかったのに!
「カガリ様から連絡を頂いたのよ。もう、あなたって子はほんとに…。不精な所は相変わらずねぇ」
娘の驚きぶりに苦笑しながら、ミリアリアの母がおっとりと言った。
「ごめんなさい…。いろいろ忙しくて、その…」
「いろいろと、説明してもらおうか?ミリィ」
父の穏やかな声。
ミリアリアは、ディオキア近郊でAAに乗ってから今に至るまでのいきさつを説明した。
「…そうか。ではお前は、しばらくはプラントで生活するんだな?」
父の声に、ミリアリアはもう一つしなければいけない報告を思い出し、そっと息を詰めた。
「しばらくは、って言うか。あのね、聞いて欲しい事が…」
「失礼します」
ミリアリアはぎょっとして振り返った。
ディアッカがミリアリアの隣に立ち、突然モニタの向こうに声を掛けたのだ。
「始めまして。通信越しで失礼致します。ザフト軍ジュール隊副官、ディアッカ・エルスマンと申します」
「ちょ、ディアッカ…」
ミリアリアはおろおろして、ディアッカに目をやりハッとした。
ディアッカは、見たことのないような真摯な表情をしていた。
言うんだ。今、ここで。
ミリアリアは、真摯な表情のディアッカを見て、ふっと緊張が解けて行くのを感じた。
大丈夫。ディアッカに任せよう。
そう心に決めて、ミリアリアはモニタの向こうの両親に顔を向け、微笑んだ。
「お父さん、お母さん。私、彼と結婚しようと思うの」
最初に口を開いたのは、ミリアリアの父だった。
「…結婚?」
「はい。ご挨拶が遅くなり、結果このような形でのご報告になってしまって申し訳ありません」
「ディアッカ君、と言ったね。どうして娘と?」
ミリアリアの父は、怪訝な表情で尋ねる。
「君はコーディネーター…しかもその若さで副官、ということは、とても優秀なのだろう?娘は、こう言ってはなんだがごく普通のナチュラルだ。戦争が終わったとはいえ、プラントで娘は…」
「私が、守ります」
ディアッカははっきりとそう言い切った。
「確かに、プラントにナチュラルは多くありません。未だナチュラル排斥を謳う一派も暗躍しています。それでも、私が命をかけてでも、ミリアリアを守ります。私は彼女と、この先の人生を支え合って生きて行きたい。彼女もそう言ってくれました」
「まぁ…」
ミリアリアの母が口元に手をやった。
ディアッカは、ひとつ息をつきしっかりとミリアリアの両親を見つめた。
「必ず幸せにすることをお約束します。私とお嬢さんを、結婚させてください」
ディアッカはそう言って、深々と頭を下げた。
「ディアッカ君、顔を上げてください」
ミリアリアの父が、穏やかな声でディアッカに語りかけた。
「娘は、決して出来た女性ではない。無鉄砲でお節介で、考えなしな面もある。それでも、君は娘と?」
その言葉に、ディアッカが微笑んだ。
「そんな彼女だから、愛してしまったんです」
ミリアリアは赤裸々な言葉に赤面する。
「ディアッカ君。ミリアリアを、よろしくお願いします」
「お父さん…」
ミリアリアはつい声を上げた。
「ミリアリア。彼に幸せにしてもらいなさい。結婚したら、少しは落ち着くんだぞ?」
「そうよ?フラフラしていないで、連絡はちゃんとしなさいね?慣れない土地でそんなじゃ、いつか迷子に…」
「もう充分落ち着いてるし迷子にもならないし、好きでフラフラしてたわけじゃないわよっ!」
ディアッカが、ミリアリアの隣で吹き出した。
「…これで、双方の親御さんの了承が得られた、というわけかな?」
通信を終えた二人に、アマギが声をかけた。
「はい。ありがとうございます、館長」
ミリアリアがアマギにぺこりと頭を下げた。
「エルスマン殿、うちの大事な報道官をよろしく頼みます」
ディアッカは目を丸くした後、美しい所作でアマギに敬礼をした。
「了解致しました。アマギ館長」
ミリィのご両親は、こんな感じのほんわか~な雰囲気で、でも肝はしっかり座ってるイメージ。
ミリィにも通じるものがある…はず。
2014,6,13up