「行っちゃったわね…」
ミリアリアがどんどん小さくなって行く艦影を見ながらぽつりと言った。
「うん。俺たちも頑張らないとね。」
「その通り。我々にはオーブとプラントの未来が託されているのだからな!」
二人が驚いて振り返ると、新しく上司となったアマギが厳めしい顔でこちらを見下ろしていた。
「アマギ館長。慣れないことばかりでご迷惑をおかけするかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。」
ミリアリアがぺこりと頭を下げると、アマギは意外にも笑顔を見せた。
「貴殿らの優秀さはカガリ様のお墨付きだ。早速こき使わせてもらうぞ?」
その言葉に、サイとミリアリアは顔を見合わせて笑った。
「皆様、お疲れ様でした。」
ラクスが三人に声をかけた。
「これから新しい領事館の方に向かって頂きます。
ここからは、評議会の文官がご案内致します。そちらの方から説明をお受けください。」
「ありがとうございます、ラクス様。では、我々はこれで失礼させていただきます。」
キサカの言葉を合図にミリアリア達はラクスに一礼した。
ミリアリアはディアッカの方を見ようとはしなかった。
その事を少しだけ不満に思うディアッカだったが、次に続いたラクスの言葉に、そんな感情は吹き飛んだ。
「ああ、そうでしたわ。
急な話で申し訳ないのですが、評議会議員のタッド・エルスマン様から職員の皆様にご挨拶を、との申し出がございますの。
ご都合はいかがでしょうか?」
ミリアリアの目が、驚きの色をたたえてディアッカを見つめた。
「こちらは、一向に構いません。お時間はどのように?」
「午後3時ではいかがかと。」
「かしこまりました。用意をしてお待ち申し上げております。」
ラクスはにっこりと微笑んだ。
「エルスマン議員は、プラントの外交担当でいらっしゃいますの。
今後について、まずは一度早急にお話をされたいそうですわ。
よろしくお願いいたしますね、アマギ館長。」
ラクスはそう言って優雅に一礼すると、踵を返した。
キラが小声で、「じゃ、またね、サイ、ミリィ」と言いラクスの元に走る。
ディアッカはイザークに小突かれ、少しだけ慌ててラクスの後を追った。
ミリアリアは、一瞬こちらを見た後顔を強張らせて俯いたままだった。
親父…マジかよ!?
ディアッカは、頭を抱えて座り込みたい気分でいっぱいだった。
嘘!!嘘でしょう!?
ミリアリアは、そう叫びたい気持ちを必死に抑え、サイ達とともに領事館まで移動していた。
エルスマンという名は、決してポピュラーなものではない。
しかも、評議会議員。
これから会うタッド・エルスマンとは、どう考えてもディアッカの関係者、というより、面会のアポイントを取るはずだったディアッカの父親、だろう。
「…ミリィ、もしかして…」
そっとサイがミリアリアに問いかける。
ミリアリアは、虚ろな目でサイを見上げた。
「…もしかしなくても、そうよ。」
サイは溜息をついた。
「ディアッカはこの事を?」
「知らなかったと思うわ。今日、お父様に連絡して私を紹介する日をセッティングするって言ってたくらいだし。」
ミリアリアはそう言うと、大きく息を吐いて覚悟を決めた。
「こんなの、バスターに乗ったことに比べればどうって事ないわ。」
サイはそんなミリアリアの悲壮な決意を苦笑で受け止めた。
「ミリィなら大丈夫。いつも通りにね。…検討を祈るよ。」
タッドパパがいよいよ登場です。
2014,6,13up