調印式の翌日。
プラントでは、翌朝出立するオーブ代表首長、カガリ・ユラ・アスハとAA、クサナギクルーのための晩餐会が催された。
「カガリ、私はこの軍服でいいし、そもそも別に出席もしないでいいんだってば!」
「何を言う!在プラント領事館の正規職員たるお前がパーティーにも出んでどうする!?」
「傷の具合もよろしいのでしょう?肩の出ないドレスでしたら着られますわね。」
両脇をオーブとプラントの姫君に挟まれ、ミリアリアは逃げ場をなくしていた。
「あのねラクス。ドレスの問題じゃなくて、晩餐会とかそういう場自体私には不釣り合いなの!」
「まぁ、なぜですの?」
「民間人は、普通こういうパーティーなんて縁がないからよっ!」
きょとんとしてミリアリアを見つめたラクスに、きつく言い過ぎてしまったかとミリアリアは不安になる。
「あの、ね、ごめんねラクス。
でも私、ほんとに…」
「ディアッカさまと、何かお約束でもされていますの?」
「…ぜんぜん。それはない、けど」
そう、ミリアリアはプラントに降りて以来、ディアッカと話していなかった。
調印式と、その後の協議で顔は合わせたものの、公の場ということもありミリアリアはディアッカをあえて見ようとはしなかった。
ディアッカも特にこちらに何かしては来なかった…はずだ。
任務中であるからして、それは仕方のないことなのだが。
「そうでしたの…。
ディアッカさまは、今夜のパーティーにもいらっしゃれませんのよ。
ジュール隊は警備のお仕事がありますの。
ごめんなさいね、ミリアリアさん…」
何を勘違いしたのか、途端にしゅんとなるピンクのお姫様にミリアリアはちぎれんばかりに首を振った。
「ぜんぜんそんなのいいの!」
するとラクスが顔を上げ、にっこりと微笑む。
「では、出ていただけますわよね?」
ミリアリアは思った。
このお姫様、実はとんでもない策略家かもしれない…
「分かったわよ!でも仕事よ?ドレスなんて着ないからねっ!!」
そこまで一気に叫ぶと、ミリアリアはがっくりと肩を落とした。
「なぁイザーク、俺たちずっとここで警備なわけぇ?」
だるそうな声でイザークに問いかけるのはディアッカ・エルスマン。
先日黒服に昇格したばかりの、ジュール隊副官である。
「…お前の気持ちは分からんでもないがな。アスハ代表達が無事プラントを出立するまで俺たちの仕事は終わらん!
分かったらとっとと配置につけ!!」
「りょーかいしましたー。」
イザークの雷に、ディアッカは首をすくめると渋々歩き出した。
ミリアリアは今頃、何をしているだろう。
キラの話では、思ったより傷の回復も早く昨日抜糸も済んだとのことだった。
ディアッカの血が効いてるんじゃない?
笑顔でそんなことを言うキラの頭を一発はたいたのは、ひとえに照れ隠し、であった。
あいつが、プラントにいる。
それだけでもディアッカには奇跡のようなことなのに、ミリアリアは明日地球には発たず、プラントに残る。
在プラント、オーブ連合首長国総領事館のスタッフとして。
その人事がカガリによるものであるということは察しがついたし、後でカガリに礼を言わねば、とも思っていた。
だがしかし。
ここ数日というもの、ミリアリアと話が出来ていなかった。
協議の場でも、他人の目を気にしたのかミリアリアは終始無表情で、こちらを見ようともしなかった。
ディアッカももちろん任務をそつなくこなしていたが、気を抜くとミリアリアを目で追っていて、イザークに小突かれたものだ。
「ミリィ…」
ディアッカはつい今までの癖で、空を見上げて愛しい恋人の名を呟いていた。
パーティーは大盛況だった。
普段軍服姿しか知らないAAのクルー達も、用意された衣装に身を包み談笑している。
「ミリアリアは?」
ちょうど通りかかったキサカにカガリが尋ねる。
「依然、特訓中だ。」
憮然としてキサカが答える。
「間に合いそうか?」
「今、アーガイルがつきっきりで見ている。
全くの素人ではないそうだし、まぁ何とかなるだろう。」
「そうか。で、警備の方は?」
ますます渋い顔になるキサカ。
「さすがに、ジュール隊をこの部屋に入れるのは無理だ。
あまり目立った動きをさせすぎては彼らの立場にも響く。」
カガリは考え込む。
「まぁ、それもそうだな。
…よし、作戦変更だ。ラクスに伝えてくれるか?」
「…了解した」
キサカはそう言うと、カーテンの向こうに消えて行った。
近くにいるのに会えないって、寂しさが募りますよね…。
2014,6,12up