心の器 6

 

 

 

 
 

 

 

このお話はR18要素を含んでいます。

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

閲覧は自己責任でお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 
先にシャワーを浴びたシホは、緊張に震える手を膝の上でぎゅっと握りしめ、ベッドに腰掛けた。
いつもの下着に、いつものルームウェア。足元は素足。
これで、いいのだろうか?
イザークは一度もこの部屋に泊まったことがない。
毎回送り出す度に寂しくないと言えば嘘になるが、少しだけホッとしていたのもまた事実であった。
あの男たちとイザークは、違う。
頭ではそう理解していても、いざベッドで彼を待つ身となると、やはり少しだけ怖かった。
 
「あ…」
 
そういえばイザークは着替えをどうするつもりだろう?
シホはベッドから立ち上がり、おろおろと部屋の中を歩き回った。
何か持って行った方がいいのだろうか?
迷いながらもバスルームに足を向け、そうっとドアを開け──シホは石のように固まった。
「あ、え、す、すみませんっ!!」
きょとんとした顔で振り返ったイザークは、腰にバスタオルを巻いただけの姿で。
茹で蛸状態のシホは慌ててドアを閉めようとして──そのまま手首を掴まれ、バスルームに引っ張り込まれた。
 
 
「ふ…」
 
瑞々しい胸に抱き込まれ、唇を塞がれていたシホは小さく息を漏らした。
洗いたての黒髪を白い指で梳かれ、それだけでびくり、と体が震えてしまう。
細いけれど綺麗に筋肉がついた、男の体。
そっと背中に手をまわすと、そこはとても温かくて。
強張っていたシホの体から少しずつ力が抜けていった。
イザークなら、大丈夫。
あいつらとイザークは、違う。
「ひゃ…」
唇が離れたと思ったらさっと抱き上げられ、思わず声を上げてしまう。
「行くぞ。掴まっていろ」
まっすぐに前を見て寝室に向かうイザークの首に、シホはゆっくりと手をかけた。
 
 
 
「髪……濡れてます」
「すぐ乾く」
そっとベッドに降ろされたシホは、枕元に置きっぱなしだったタオルを手に取りそっとイザークの髪を拭いた。
「痛みますよ?せっかくこんなに綺麗なのに」
「丈夫なんだよ。髪も体も」
「なんですか、それ」
思わずくすくすと笑い出したシホをイザークは柔らかな表情で見下ろし、再び唇が重ねられる。
 
「……うまく出来るか分からん。それでも…いいのか?」
「……イザーク?」
 
きょとんと見上げたイザークの頬は、僅かに赤らんでいた。
 
 
「抱きたいと思った女は、お前が初めてだ」
 
 
シホの瞳が、ゆっくりと見開かれていく。
それは、つまり────。
 
「私、なんかで…いいんですか?」
「くどいぞ。シホでなければ駄目なんだ。過去も、未来も。でなければ母上にお前を紹介などしない」
 
きっぱりと言葉を落とされ、シホの体がふるりと震えた。
「きっと…嫌な思いをさせてしまうこともあると思います」
「構わん。そんなもの、どうということはない」
アイスブルーの瞳は、シホだけに向けられていて。
 
 
「私も…イザークじゃなきゃ、嫌です」
 
 
ふわ、と微笑んだイザークの唇が首筋に落とされ、シホはゆっくりと目を閉じた。
 
 
 
「…っ、ん」
「痛かったか?」
 
露わにされた胸元からイザークが顔を上げ、シホはかぶりを振った。
そこは、かつてあの男たちに蹂躙された場所。
傷が消えるまで少し時間はかかったが、今は何の痕も残らないそこに、イザークの唇が再び落とされた。
すっかり立ち上がった頂を指で摘まれ、舌でそっと転がされ、その度に背中が跳ねる。
 
「シホの胸は綺麗だな」
「や…恥ずかしい、こと、言わないでくださ…ん、あっ!」
 
両胸の頂を同時に愛撫され、ねだるような甘い声を漏らしてしまう。
あいつらの乱暴な行為とイザークの優しい行為。
同じようなことをされても、それがイザークであるならシホは安心していられた。
 
恋人同士であれば、いつかこういった行為──セックスをすることになる、とシホも分かっていた。
強姦されかけた過去をイザークが気にしてくれていることも、本当は分かっていた。
そして自分の、家族との確執。
結婚を前提に、と言ってもらえて、この人の隣にいていいんだ、と嬉しかったのも確かだけれど、現実に立ち戻るとやはり迷いと葛藤があった。
あの時の恐怖は簡単に忘れられるものではない。
もし、イザークを拒むようなことになってしまったら──。
だがその心配は杞憂だった。
これが、同じ高さに立つ、ということだろうか?
互いに話をして、今まで言えなかったことや恥ずかしいことも晒け出し、本音でぶつかり合う。
やっとそれが出来たのだ。
与えられる愛にたゆたいながら、シホは甘い吐息を漏らす。
だが、イザークの手が内腿を伝って中心に伸ばされた時、はっと我に返ったシホは小さく声を上げてしまった。
 
 
「や、だ…まって」
「……濡れているが、まだ駄目なのか?」
「そ、いう…意味じゃなくてっ!はずかし…あ、あっ!」
「痛くしてしまったら…すぐ言え」
 
 
一瞬止まっていた手が明確な意思を持って動き始め、微かな水音が漏れる。
小さく顔を出していた芽をそっと撫でられると、先ほどまでとは明らかに違う、色のついた声がシホの口から零れた。
そっと挿れた指をぎゅっと締め付けられ、イザークが少しだけ驚いた表情を浮かべたのが分かった。
「ひう、んっ…あ、んんっ…」
「大丈夫そうか?」
「はぁ…ん、は、い」
 
 
どうしよう、こんな感覚、知らない。
 
 
「ここがいいのか?」
「ひあっ!や、そこ、ばっかり…いやぁ…」
あからさまに反応を示す芽を重点的に弄られ、シホの体が細かく震えだす。
何かが体の奥底からせり上がってくる感覚に、シホは必死でシーツを掴んで首を左右に振った。
 
「こわ…何か、おかし…わたし、へん…っ!イザーク…こわ、いっ」
「シホ……好きだ」
「あ、ああ、だめ、おかしく…なっちゃ…んあ、あ…!」
 
あっという間に高みに押し上げられ、シホの腰がガクガクと揺れて。
「いや、イザーク、いやぁ…っ!!」
白い喉を晒して恋人の名を呼びながら、シホは生まれて初めての絶頂を迎えた。
 
 
 
 
 
 
 
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初めて同士、ってなんだかいいですよね(笑)
次で最終話です!一話伸びてしまいすみません;;

 

 

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2016,9,3up