ディアッカは、状況が理解できなかった。
ミリアリアが、なんでラスティを連れてるんだ?
しかも、どう見ても彼らは知り合いで。
その前に、ラスティはヘリオポリスで…
「ラスティ…!」
初めに動いたのは、意外にもアスランだった。
よろよろとラスティの前まで進む。
「…えっと、アスラン?アスラン・ザラ!」
なぜか合点が行ったように声をあげるラスティ。
「生きて、たんだな…。良かった…」
アスランの翠色の瞳が揺れる。
「まーね。ちょっと色々忘れてたんだけど。」
「ラスティ、貴様…!」
イザークが我に帰り、ずんずんとラスティの前まで歩く。
「あ、ほらミリアリア。」
「あー、愛情の裏返し、みたいなものよ、きっと。ね、イザーク?」
その様子を見ていたマリューがぷっと吹き出す。
やっぱり、知り合い?艦長なんで笑ってんだ?
ディアッカには、訳が分からなかった。
「これが、お前たちへの贈り物だ。…心ゆくまで堪能してくれ。」
カガリがゆったりとソファーにもたれ、足を組んだ。
ミリアリアはお役御免とばかりにラスティ達から離れ、少し迷った後ゆっくりとディアッカの方へやってくる。
「ディアッカ、大丈夫?ちょっとびっくりさせすぎちゃったかしら…」
そう言うとミリアリアはディアッカの額にそっと右手を当てた。
その手は、ひんやりと冷たい。
「お前、なんで起きて動いてんだよ?」
ディアッカはやっとの事でそれだけ言い、額に置かれたミリアリアの手を取ると近くのソファーに座らせた。
「ちゃんと先生の許可は貰ってるわよ。もう少ししたら戻るわ。
そんなことより、いいの?ラスの所行かなくて。」
ラスって何だよ、ラスって!
「えーっと、ディアッカ。ディアッカ・エルスマン。」
気づけば、ラスティが目の前まで来ていた。
明るいオレンジの髪に、青い瞳。
まぎれもなくラスティだった。
「お前…背こんな高かったっけ?」
「…感動の再会、ってやつなのに、言う事がそれかよ…」
数え切れないくらい疑問はあったのに、ラスティを目の前にするとそれらは全て後回しとなった。
「生きてたんだな、ラスティ。」
「お前らも、無事で良かったよ。」
そう言ってにっこり笑ったラスティは、ディアッカの肩を力強く叩いた。
「姫さん、説明してくんねぇ?」
ディアッカは、カガリを振り返った。
見れば、マリューに加え、ラクスとキラも笑みを浮かべている。
「お前ら、知っていたなっ!?」
イザークがアスランに押さえつけられながら怒鳴った。
「お前、変わんないね。イザーク。今のでまたちょっと思い出したわ。」
その後は、ラスティとカガリの話に皆聞き入った。
ラスティがヘリオポリスで傭兵に拾われ、九死に一生を得たこと。
ダストコーディネーターの事。
記憶を失ったラスティがいたダストコーディネイターのコミュニティに、ミリアリアが取材に訪れた事。
ブルーコスモスのテロの際、またもや九死に一生を得た事。
その時の負傷がきっかけで、記憶が戻り始めた事。
今は傭兵として、地球で暮らしている事、等々。
「今ラスティは、私のボディガードとして働いてもらっている。
と言っても、今回限りの話だがな。本職は傭兵だ。だから、このオーブ軍服も今だけだ。」
「赤もイイけど、さすがにもう着れねぇしな。プラントに戻るつもりもないし。」
そう言って肩を竦めるラスティを、ディアッカとイザークは呆然と見つめた。
「俺、あっちじゃあれでしょ?MIA。もうそれでいいかなって思ってさ。」
「…母君には、会うつもりはないのか?」
イザークが尋ねると、困ったようにラスティは首を傾げた。
「実はさ、家族とかまだ思い出せねーんだ。」
「ラスティ…」
ラスティは困ったように笑った。
「顔を見たら思い出すかもしれねぇけど、それもな…。
せっかく息子が帰ってきたってのに、肝心の本人が親の顔すら覚えてないんじゃ報われねぇじゃん?」
部屋にしんみりとした空気が流れる。
「ラスティ、私はサイたちのところへ行ってくる。」
カガリがそんな空気を断ち切るように立ち上がった。
「あまり時間はないが、積もる話もあるだろう。2時間後にブリッジで。いいか?」
「俺一応、姫君の護衛で来てるんですけど?いいの?」
そう言って戸惑った顔をするラスティにカガリは微笑んだ。
「私は大丈夫だ。せっかくこうしてまた会えたんだ。ゆっくり話せよ。」
そう言い残してカガリは部屋を出て行った。
「ミリアリアさん、お体はもうよろしいのですか?」
ソファーに座るミリアリアに、ラクスが心配そうな目を向けた。
「あ、うん。元々貧血気味だしね、私。走り回ったりは出来ないけど、痛み止めも飲んでるし大丈夫。」
ディアッカは再び意識をミリアリアに戻した。
「お前、もうそこから動くな。」
「はぁっ?」
ミリアリアが目を丸くする。
「後で俺が部屋に運ぶから、お前はそこでしばらく休んでろ。何なら寝ろ。」
「バカじゃないのっ!ていうか、私は荷物じゃないんだから、普通に歩いて戻るわよっ!」
「ミリィ。」
はっとしてディアッカを見上げると、紫の瞳が眇められている。
ほんとに、なんでこんなに過保護なのよ!?
こんな目をしたディアッカと拗れると、後が非常に面倒だ。
「…分かったわよ。」
ミリアリアは唇を尖らせ、ソファーに沈み込んだ。
「ミリアリア、すげー愛されてんじゃん?」
のんびりとしたラスティの声に、今度は恥ずかしくなったミリアリアはますますソファーに沈み込む。
「ディアッカって、そういうキャラだったっけ?」
「…キャラが変わったんだよ、この数年で。悪いか。」
ふてくされるように答えたディアッカに、ラスティだけでなくアスランまで笑った。
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狡猾で残忍なキャラ設定ですもんね…
あ、ミリィに護身術や物騒なものを持たせたのは、予想通りこのオレンジの方です(笑)
2014,6,11up