数時間後。
カガリを乗せたオーブのシャトルがAAの近くに到着したとの連絡が入った。
ミリアリアは医師と話をし、無理はしない条件で格納庫までカガリを出迎えに向かった。
先ほどの通信で、驚きに驚きを重ねてしまったミリアリアの頭は飽和状態だった。
が、いたずらっぽい笑みを浮かべたカガリにある事を提案され、気づけば身を乗り出して話に夢中になっていたのだ。
ディアッカたちは、ミリアリアが格納庫にいることを知らない。
エターナルからは既にラクス達も到着している。
聞けばマリューやフラガ、バルトフェルドにキラとラクスも、カガリから事の次第を聞かされているらしい。
つまり、何も知らされていないのはディアッカ達とアスランだけ。
「あいつの驚く顔とか喜ぶ顔、見たいじゃないか。」
そう言ってはにかむカガリを見て、ミリアリアも一枚噛むことに決めた。
カガリは、カガリなりのやり方でアスランを今も大切に想っている。
ミリアリアはそれが嬉しかった。
それに、ミリアリアもディアッカとイザークを驚かせたかった。
「ミリアリア!」
シャトルのドアが開くとすぐに、カガリがミリアリアを見つけ大きく手を振った。
その後ろから、サングラスにオーブ軍服姿のラスティが現れる。
ミリアリアも微笑み、手を振りかえした。
ラスティは、ダストコーディネイターの生き残りとして保護された後、傭兵としての腕を買われ今回のみカガリの護衛として雇われたらしい。
オーブの軍服姿はそのためだ。
彼もクルーゼ隊で赤を着ていたと言っていたが、白い軍服もなかなか様になっている。
「ちょっとキレイになったんじゃない?ミリアリア」
「記憶が戻っても変わらないってことは、昔からそういう話し方なのね、ラス。」
ザフトの認識票に残されていた名前は「ラス」のみ。
そのためラスティはラスと名乗っており、ミリアリアもそのように呼んでいたのだった。
「あいつらは?」
カガリが声を潜める。
「ブリーフィングルームよ。ラクスとキラがうまく誘導してくれたみたい。」
「よし。では行くぞ、ラスティ、ミリアリア!」
そう言ってカガリが勇ましく歩き出す。
ミリアリアとラスティは顔を見合わせて、その張り切りぶりに吹き出した。
コンコン。
ブリーフィングルームの扉がノックされた。
マリューの「どうぞ」という声に扉がシュンと開く。
「失礼します。アスハ代表をお連れしました。」
そう言って入ってきたのはミリアリアで、ディアッカは思わず立ち上がった。
「お前、なんで」
部屋で休んでいるはずのミリアリアがなぜ案内を?と慌てるディアッカにきつめの視線を送ることで黙らせると、ミリアリアはカガリを室内に通し、そのままドア付近の椅子に腰掛けた。
ちらりと見ると、キラが心配そうにミリアリアを見ていた。
ディアッカから、ミリアリアがプラント降りることを聞いたのだろう。
あとで、キラとも話をしないとね。
ミリアリアはキラに向かってばちりとウインクを送り、呆気に取られたディアッカを尻目に澄ました顔で携帯端末を開いた。
「ラクス嬢、お久しぶりです。
この度は我々の依頼に過分なご対応、本当に感謝しています。
オーブを代表して、礼を言わせて頂きたい。」
そう言って優雅に頭を下げるカガリを、アスランが驚きの表情で見ていた。
いつの間に、こんな儀礼を身に付けたのだろう…。
自分の知らぬところで変わっていくカガリを、アスランは眩しそうに見つめた。
「カガリさん、顔をお上げくださいな。
わたくしこそ、お礼を申し上げねばなりません。
この度のテロリスト移送の件、サイさんとカズイさんをいち早くこちらに向かわせてくださった件、本当に感謝しております。」
ラクスも立ち上がり、優雅に礼を返した。
「アーガイル特別参事官補佐とバスカーク氏はどちらに?」
「別室で待機しておられますわ。彼らはこのままプラントに?」
「ええ。さすがにテロリストと同じ艦では彼らも気が休まらないでしょう?」
そう言うとカガリはくすりと笑った。
「ジュール隊長、エルスマン副官も久しぶりだな。」
カガリが不意に二人の方に振り返る。
一瞬カガリから向けられた視線を、ミリアリアは見逃さなかった。
左肩の負担にならないよう気をつけながら、右手のみで端末を開き短くメッセージを打ち込む。
「お久しぶりです、アスハ代表。」
イザークが慇懃無礼な口調でカガリに応じる。
ディアッカはミリアリアの事が気がかりで仕方なかったが、カガリの挨拶を無視するわけにもいかず、そちらに向き直る。
「今回のテロ未遂の件、礼を言わせて頂く。
ミリアリア達を守ってくれて感謝する。…アスランも、ありがとう。」
アスランがびくっと体を震わせ、慌ててカガリに向き直った。
「いえ…彼らが無事で何よりでした。アスハ代表。」
他人行儀な口調に、ミリアリアの眉が顰められる。
だがカガリは気にした様子もなく、「そうだな。」などと答えている。
アスランのバカ!
ミリアリアは内心アスランを罵倒しながら、メッセージの送信キーを押した。
「…さて。堅苦しい挨拶はここまでだ。」
不意にカガリの口調が砕けたものに変わった。
「アスラン、ディアッカ、イザーク。お前たちにちょっとした贈り物がある。
ミリアリア達を守ってくれた礼、のようなものだと思って欲しい。」
きょとんとする三人。
「なんの、話だ?カガリ…」
アスランもすっかり元の口調に戻っている。
頃合い、かしらね。
ミリアリアは端末を置くと、ゆっくり立ち上がった。
「ミリアリア、悪いが準備を。」
「わかったわ。」
そう言って、あえてディアッカの方は見ずに部屋を出る。
あの紫の瞳にかかったら、とてもごまかし通すなんてできないじゃない!
扉が音を立てて閉まる。
ミリアリアは、扉の横で控えているラスティに声をかけた。
「ラス、心の準備はいい?」
「準備もなにも。連絡もなしにって殴られないか、そっちのが不安。」
くすくすと笑いながらラスティがそんな事をぼやくと、ミリアリアは彼の肩を叩いた。
「ああ、うん…その時はきっと誰かしら止めてくれるんじゃない?」
「うわ、慰めにもなってねぇ」
「うるさいわね!ほら、行くわよ。」
ミリアリアはそう言うと、扉をコンコンコン、と三回ノックした。
それは、カガリと決めた合図。
ラスティがミリアリアの横に立つ。
シュン、とドアが開き。
ミリアリアの目の前には、面白いくらいに同じ顔をして固まる元クルーゼ隊の姿があった。
「よっ、久しぶり、お前ら。元気してた?」
「…軽すぎじゃない?その挨拶」
ミリアリアの呆れ声と、カガリ達の失笑。
ガターン!と椅子が音を立てて倒れた。
感動の…再会?(笑)
2014,6,11up