月と星空 2

 

 

 

「あなたたち、プラントで…」
マリューが最後までいい終わらないうちに、ディアッカがミリアリアの右手をそっと握り、マリューに向き直る迷いのない声で答えた。

 

 
「結婚するつもりです。プラントに着いて、諸々の問題が落ち着いたらすぐにでも。
彼女のことは、自分の婚約者として連れて帰ります。」
その言葉にミリアリアが驚き、頬を染める。
マリューはそんな初々しい二人を見て、気づけば自分も微笑んでいた。

 
「…ミリアリアさんの気持ちは分かりました。
ディアッカ君、彼女はAAの、そしてオーブの優秀な軍人でありオペレーターであり、キラ准将やアスハ代表の大切な友人でもあるわ。
そして、私の大切な部下でもあるの。
責任重大よ?」
ディアッカをまっすぐに見つめ、問う。

 

 
「彼女を、幸せにしてくれるかしら?ザフトのディアッカ・エルスマン?」

 

 
ミリアリアの瞳が見開かれ、隣に佇むディアッカは一瞬真剣な表情の後、見たこともないような妖艶で大人びた笑顔を見せた。

 

 
「自分の一生をかけて、幸せにします。ラミアス艦長。」
そうして、美しい動作でザフト式の敬礼をする。
マリューも自然と、オーブ軍式の敬礼を返していた。

 

 
「このことは、私の他に誰が知っているの?」
「まだ誰も。イザークとキラ、ラクス嬢には自分から話をするつもりでいます。
今後の対応策を考えることも必要ですし。」
マリューは頷く。
「そうね、なにかとプラント側で便宜をはかってもらう必要が出てくるかもしれないものね。」
特にラクスには、今後何かと助けを借りることになるだろう。

 

 
「カガリやサイ達には、私から話します。
どちらにしても、AAのクルーには時期を見て話をしないとですし。」
ミリアリアは責任感が強い。
AAがいずれオーブに戻る時、CICとして自分が抜けてしまうことを気にしているのであろう。

 
マリューは立ち上がった。
「そうと決まれば、話は早い方がいいわ。
ディアッカ君、談話室からエターナルへの通信を許可します。
ジュール隊長も同席の上、今後の対応について話をしてちょうだい。
ラクスさんも、あなた方に話があるようだったしちょうどいいわ。私も同席します。」
「了解しました。」
ディアッカも立ち上がる。
点滴のパックは既に空になっていた。
ディアッカはサイドテーブルの器具を手に取り、腕から針を抜いて器用にそれを処理する。

 
「ミリアリアさんは、ここから出ることはまだ許可できません。
あなたの部屋からラップトップをここに持ってこさせます。
カガリさんがあなたと話をしたがっているの。
体調に余裕があれば通信してみてくれるかしら?」
「はい、了解しました。」

 
カガリが?一体なんだろう?
内心首を捻ったミリアリアだったが、さすがにまだ起きて動き回る元気はなかったのでマリューの申し出はありがたかった。

 

 
「それじゃ、私は先に行くわね。ディアッカ君、談話室で。」
そう言って微笑むと、マリューは部屋を出て行った。
ミリアリアは思わずほぅと息をついた。
意識してはいなかったが、緊張していたようだ。

 
「ミリィ、大丈夫か?」
ディアッカがミリアリアの顔を覗き込んだ。
「うん、平気よ。ありがと。」
すると、傷に触らぬよう気をつけながらディアッカがミリアリアを自分の胸に抱き寄せた。
「ディアッカ?早く行かないと…」
そう言って心配するミリアリアの頭を胸に押し付けるように抱え込み、ディアッカはぼそりと口を開いた。

 
「俺も、しょっちゅう月や星空を見てた。」
「え…?」

 
「プラントにいる時は星空を見てた。
宇宙に出た時は、月や地球を見てた。
遠く離れちまったけど、お前の事をいつも考えてた。
強がって自分の気持ちに嘘をついてたけど、本当はいつだってお前に会いたかったんだ、俺も。」

 
ミリアリアはディアッカの腕の中で目を閉じ、なぁんだ、と呟いた。

 
「私達、おんなじこと考えてたのね。」
「みてーだな。」
「二人して、おんなじように月と星空を見てたのね。」
「ああ。」
「…ごめんね、ディアッカ。」
「もういいって。それよりもう、そんな思いをお前にさせないから。
だからもう、泣くなよ?」
「…努力します。」
「いや、そこは素直になっとけよ」

 
ふたりは顔を見合わせ、くすくすと笑う。
そうしてひとつ、キスを交わし。
「また後でな。ちゃんと休んどけよ?」
「うん」
そしてディアッカは談話室へと向かい、ミリアリアの元には自身の端末が届けられた。

 

 

 

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