ディアッカは、カズイから受け取った端末をものすごい速さで操作していた。
自爆まで20分を切っている。
脱出のチャンスがあるかも心配だが、ディアッカは何よりミリアリアが心配だった。
先程、ミリアリアが発した言葉。
たすけて。
「…どこに居たって、助けに行ってやるさ。お前が俺を呼ぶなら。」
ピーッ。
電子音が鳴り響き、コックピットのロックが解除された。
ゆっくりとハッチが開くのがもどかしく、ディアッカは途中まで開いた隙間から体をねじ込む。
「ミリィ!」
むせ返るような、血の臭いがした。
ミリアリアは、ぼんやりとした意識の中でディアッカの声を聞いていた。
左腕にはもう感覚がない。
自爆装置のセットは、出来た。
目の前の画面にアラートが赤く光っているから、間違いはないであろう。
ディアッカに、まだちゃんと謝ってなかったなぁ。
こんな時でもディアッカの事を考えている自分が滑稽で、ミリアリアはふっと笑った。
『ミリィ!大丈夫か?どうした?』
また、ディアッカの声が聞こえた。
ミリアリアは素直にありのままの状態を伝える。
そして、いつもいつも、離れている時でもずっと言いたくて、でもなかなか言えなかった言葉を口にする。
「ディアッカ、たすけて」
それから、どのくらい経っただろう。
電子音が鳴り響き、コックピットの扉がゆっくりと開いていく。
「ミリィ!」
心を揺さぶる、声。
ミリアリアが閉じていた目をそっと開くと、そこには綺麗な紫の瞳と豪奢な金髪の、彼女の大切な、とても大切な人。
ディアッカが、いた。
「ミリィ!なんでこんな…」
見覚えのあるコックピットに、地球軍のピンクの軍服を着たミリアリアがぐったりとしていた。
引き出されたコンソールパネルは血まみれで。
シートや床にも血が垂れている。
「くそっ!早く連れて帰らねぇと…」
そう呟いてミリアリアのベルトを外しにかかるディアッカの耳に、小さな声が聞こえた。
「ディアッカ…怪我…して、ない?」
ディアッカは、信じられない思いで顔を上げる。
こんなに血が出てるのに。
傷が痛くて動けないほどなのに。
真っ白な顔色してるくせに。
それでもまだ、自分より俺の事を気遣うのか?
「ああ、してねぇよ。大丈夫だ。」
そう答えてやると、ミリアリアは弱弱しく微笑んだ。
「そ、か。なら、良かった…。」
ディアッカはミリアリアを抱き上げた。
「痛むかもしれねーけど、ちょっと我慢しろよ?俺の機体に移動するから。」
「うん…。」
ミリアリアの右手が、ディアッカの腕をそっと掴んだ。
ディアッカはミリアリアを抱いたまま素早くバスターのコックピットから出ると、そのままザクへ移動した。
「あと13分か。とりあえず止血だけするぜ?そしたらすぐ出るから。」
「うん、ありがとう…。」
ミリアリアはおとなしく手当てを受ける。
「ディアッカ…」
「ん?」
ミリアリアが、無事な右手でディアッカの頬に触れる。
「おととい、わがまま言って、ごめん、なさい…。叩いたとこ、いたかったよね?」
ディアッカは思わずミリアリアを見た。
ずっと、気にしてたのか。
「平気。気にしてねぇよ。俺も悪かった。」
「たすけてって、言ったら、来てくれて。2回も。嬉しかった…」
「うん。」
「たすけて、って言えば、ディアッカは、きてくれるのに。きてくれない、なんて、言って…ごめんね…」
「もう喋んなって。」
「や…だ」
「何で。辛いんだろ?」
止血が完了し、ディアッカはミリアリアを抱いたままザクを起動する。
「いや…」
「何でだよ?」
「次に、目が覚めた…また、ディアッカが、いなかっ、たら、いや…だから…」
いなくならないで。そばにいて。
それは、ミリアリアの心からの願い。
もう、ひとりはいや。
ミリアリアの目から、涙がこぼれた。
ディアッカはたまらず、ミリアリアを抱きしめた。
「血…ついちゃうよ…」
「いいんだ、付いても。お前のなら、なんだって。」
「ディアッカ…」
ディアッカは、ミリアリアの唇を自分のそれで塞いだ。
冷たい、唇だった。
「どこに居たって、助けに行く。もう離さないしいなくもならねぇ。約束する。」
「約…束?」
「ああ。お前と一生一緒にいる。もう決めた。だから安心して目ぇ瞑ってろ。な?」
するとミリアリアが、ふわりと嬉しそうに微笑んだ。
思わずディアッカが見惚れるほどに。
「うん…。」
「…そばに、いるから。ずっと。」
そう言うと、ディアッカはもう一度だけミリアリアにキスを落とし、ザクの操縦桿を握った。
「いくぞ、あとちょっとだけ我慢してろよ!」
やっと再会。長かった・・・。
2014,6,10up