チャンス 2

 

 

 

『さあ、脱出するぞ!』
フラガの声が力強く響く。
サイはイージスをそろそろと立て膝の体勢にすると、ハッチを開けた。
少し離れたデュエルから、同じように機体を動かしたカズイも顔を出す。
バスターだけが、そのままの姿で立ち尽くしていた。
サイの顔色が変わった。
「ミリィ…まさか!」
カズイがバスターの異変に気付き、慌てて一旦デュエルのコックピットに戻る。
その時、すぐ近くに着地した黒いザクのハッチが開き、ディアッカが顔を出した。

 
「サイ!無事か?」
「ディアッカ!」
「あーっ!捕虜!」
再び顔を出したカズイが素っ頓狂な声をあげ、ディアッカはこんな時なのにハッチから落ちそうになった。
「捕虜じゃねぇっ!なんだてめぇは!」
「ディアッカ、今はそれどころじゃない!ミリィがバスターから出てこないんだ!」
「なんだって!?…くそっ!」
ディアッカは急いでコックピットに戻ると、ザクの手をバスターに触れさせた。
接触通信を試みる。
「ミリィ!聞こえるかミリィ!」
『…ディアッカ?』
小さな声で、返事が聞こえた。
「ミリィ、大丈夫か?どうした?」
『血が、止まらなく…て…。うで…いたくて…動かなくて…』
「な…」
ディアッカは愕然とする。
『ディアッカ…』
ミリアリアの小さな声が、かすかに震えた。
『ディアッカ、たすけて。』

 

 
ディアッカがハッチから出たと同時に、イザークもグフのハッチから飛び出してきた。
「ディアッカ!ミリアリアはどうした?」
「出血多量で動けなくなってる!外からハッチをこじ開けて運び出す!」
ディアッカはギリギリまで機体をバスターに近づけると、コックピットに手を伸ばした。
「素手で出来るわけないだろう!」
「じゃあどうしろっつーんだよ!?」
二人が怒鳴り合う中、カズイがデュエルから何かを差し出した。
「あのっ、捕虜さん!これ使って!」
必死な声に、イザークとディアッカが振り返る。
「俺が設定した端末!接触通信と同じ原理だから、この端末でハッチ解放の操作すれば多分開けられる!捕虜さんバスターのパイロットだったんでしょ?」
呼ばれように大分疑問点は残るが、今はそれどころではなかった。
「サンキュー!早く貸してくれ!俺がやるのが一番早い!」
カズイがサイに、サイがイザークに。そしてイザークからディアッカに端末が手渡された。

 
「イザーク、サイ達を連れて先に脱出してくれ。」
「ディアッカ!?」
「もうすぐ20分切るだろーが!俺はミリィを引っ張り出してすぐ後を追う。だから早く行けって!」
イザークは一瞬躊躇うそぶりを見せたが、ディアッカの目を見ると頷いた。
「こんなところでくたばったら承知せんぞ。」
「お前こそ、もたもたしてっと途中で追い越すぜ?」
ディアッカが、いつもの大胆不敵な笑みを浮かべた。
「…分かった。おい、キラ!一人乗せていけ!」
ちょうど降り立ったキラにそう言うと、イザークはサイを促しグフに乗り込ませた。
ラスティ、ミゲル、ニコル、あいつを守ってやってくれ。
イザークはそう心の中で祈ると、ハッチを閉めた。

 

 

 

016

書きたかったのは、ミリィの素直な言葉。

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2014,6,10up