「…いきなり最大火力かよ…」
ミリアリアの乗ったバスターが手にした超高インパルス長射程狙撃ライフルを確認すると、ディアッカは呆然と呟いた。
仮にもバスターを愛機としていたディアッカだったから、サイの通信でピンときたのだ。
ミリアリアは、格納庫の扉をライフルで破壊する、と。
『ムゥさん!動き出しました!』
キラの切迫した声に、フラガは我に返る。
バスターのビームで動きの止まっていたエクステンデット達の機体が、再びこちらに向けて攻撃体制を取り始めていた。
『キラ、他の奴らも!一旦攻撃を止めてくれ!試してみたいことがある!』
フラガは急いで回線を開き、そう叫んだ。
マリューは、賛成してくれるだろうか。
ダメとは言わないだろう。
ただきっと、悲しげに笑うんだろうな。
でも俺はもう、黙って見ているわけにはいかないんだ。
だが…!
「今から全回線をオープンにする!俺が発する言葉であいつらの動きに何らかの変化があるはずだ!もしそれでも攻撃を仕掛けてくるようだったら、迎撃して構わない!頼む!」
もちろん、ブロックワードが変更されている可能性もあった。
現にステラたちには、固有のワードがそれぞれ設定されていた。
しかし、ミリアリアの話を信じるなら、彼らはラボから直接ここに派遣されているはずだ。
そしてフラガは、ミリアリアを信じていた。
「うちのお姫様の頑張り、無駄にできないんでね!」
『了解しました!イザーク、ディアッカはミリィ達の近くに!』
『…よく分からんが了解した!行くぞディアッカ!』
キラの言葉に、いち早くイザークが反応した。
ディアッカもバーニアを吹かし、立ち尽くす3機の元に向かう。
ミリアリアが、すぐそこにいる。
フラガは全回線をオープンにした。
『ハワイラボの諸君、聞こえるか!』
エクステンデットの動きが止まる。
フラガは深呼吸を一つした。
落ち着いて、いつもの調子で。
『…地球連合軍第81独立機動軍ファントムペイン、ネオ・ロアノーク大佐だ。名前くらいは聞いたことがあるだろう?諸君』
イザークとディアッカは、思わず振り返った。
『ムゥさん!』
キラも思わずフラガの名を呼ぶ。
『黙って、キラ』
突然ミリアリアの姿がモニタに現れた。
やはり懐かしいピンクの軍服に身を包んでいるが、左肩には血が滲んでいるのがわかる。
ディアッカは愕然とし、叫んだ。
「ミリィ!…お前、もう動くな!」
ミリアリアはその言葉には返事をしなかった。
青白い顔で、一言だけ発する。
『フラガ一佐は、彼らを助けたいの。…お願い』
その言葉にディアッカは言葉を失い、キラは悲しげに目を細めると、フラガを、アカツキを見つめた。
『これ以上の戦闘は不要だ。諸君らは母艦に戻り、もう休め。…おやすみ』
そう言うと、一呼吸おいてフラガはブロックワードを発した。
『ブレイク』
エクステンデット達の機体が、かくんと一瞬揺れた気がした。
手にしたシールドや武器を取り落とすものもいた。
『さあ、すぐに母艦に戻れ!命令が聞けんのか!』
聞いたことのないフラガの声。
「お願い…戻って…」
ミリアリアは小さな声で呟いた。
彼らがいなくなれば、あとは自爆装置をセットして脱出するだけだ。
30分あれば、乗り換えを考慮しても安全な場所まで行けるだろう。
「お願い…」
その時、エクステンデット達の機体が動いた。
のろのろと後方に向き直り、バーニアを吹かす。
そして、7機のMSは、空に消えて行った。
『みんな、自爆装置の作動を!』
カズイから通信が入る。
ミリアリアは、力の入らない体を起こし、コンソールパネルを引きずり出した。
プラントを、ディアッカの大切にしてるものを、私も守る。
そう自分を叱咤し、自らの血で滑るキーボードを、出来る限り慎重に叩く。
『エンターキーは同時に押そう。これで、俺たちの出来ることはおしまいだからね』
サイの声が聞こえた。
『ミリィ、いい?』
「うん。」
ミリアリアはそう答えるのが精一杯だった。
『5,4,3,2,1』
ミリアリアは震える指で、エンターキーを押した。
2014,6,10up