ヴァレンタイン 3

 

 

 

『あれか?』
バルトフェルドが上空からグレーの建造物をモニタで拡大し、各機に配信する。
『大きな施設の外に資材らしきものが積んでありますね。
これがテロリストの拠点で間違いないと思われます!』
ダコスタの言葉に、緊張が走った。
『あの大きいのは格納庫かもしれん!とすれば、お嬢さん達もこの近くに捕らえられていると見ていいだろう。
ジュール隊長、どうする?』
バルトフェルドの言葉に、ディアッカの心臓が跳ね上がった。
『我々も着陸し、侵入する!ディアッカ、いいな?』
「了解!」
ミリアリア、今行くから。今度こそ助けに。

 

 

「…ごめん、終わった。」
ミリアリアのその声に、サイとカズイは振り返った。
「ソックスまで揃っててラッキーだったね。ミリィ。」
「そうね。」
こんな時なのに、ついミリアリアは苦笑してしまった。
用意されていた軍服は、AA時代のタイトスカートではなく、クリーム色のボックスプリーツだった。
丈も昔ほどではないが短いことに変わりはなく、ソックスがなければ危うくまた生足にブーツを合わせるはめになるところであった。
「サイとカズイも、それほど違和感ないわよ?」
「ミリィもね。」
飛び出す軽口は、緊張の裏返しなのかもしれない。
でも大丈夫。
ミリアリアは信じていた。
ディアッカが、助けに来てくれる事を。
「さぁ、行きましょ。格納庫に。」
その時、施設内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

『ラクス!アスランだ!』
アスランからエターナルに通信が入る。
「どうされましたか?」
『やつらが一斉に撤退を始めた!エクステンデット部隊も一部を残して戦列を突破し、コロニーに向かっている。キラも突破部隊を追ってそちらに向かった!』
ラクスは頷いた。
「おそらく、降下か侵入があちらに知れたのでしょう。アスラン、そちらをお任せできますか?」
『了解した。先遣隊とともに残存勢力を制圧する。
…ラクス、キラは大丈夫だ。』
ラクスは一瞬目を見張ると、ふんわり微笑んだ。
「わたくしは信じております、キラも、アスランも。
それに、アスランに何かあってはわたくしがカガリさんに怒られてしまいますわ」
『ラクス…俺たちは…』
「今は道を違えていても、想いは一緒なのでしょう、アスラン?」
カガリさんも、そう思っていらっしゃるはずですわ。
そう言ってラクスはアスランに微笑むと、通信を終えた。

 

「ちっ!もうお戻りかよ!」
フラガがコックピットから体を出したまま毒づく。
彼らは、テロリストの拠点から少し離れた場所に着陸していた。
すでに他の面々はMSを降り、エターナルの制圧部隊は建物の前に向かっている。
そんな中、上空にテロリストのMS部隊が現れた。
建物からはかすかにサイレンが聞こえる。
フラガはそれを見上げ、次の瞬間目を見張った。
「坊主ども、戻れ!」
銃を手に走り出していたイザークとディアッカが振り返る。
「地球軍のMS部隊だ。エクステンデットだぞ!」
やつらを格納庫に入れる訳にはいかない!

 
すぐそこに、ミリアリアがいるのに!
ディアッカは歯噛みしながら、イザークとともに愛機に駆け戻った。

 
施設内に、怒号と銃声が響き渡る。
バルトフェルドは、遮るものがないのをいいことにずんずん奥へと歩みを進める。
空から敵が戻ってきていることは承知していた。
ここに降り立つ前に、頭を抑えねば面倒なことになる。
バルトフェルドが足を止めたのは、明らかに他の部屋とは作りが違う扉の前であった。
小物なテロリストほど、形から入るんだよねぇ。
バルトフェルドは付き従う数名の隊員に手で合図をし少々下がらせると、義足をゆっくり振り上げ、思いきり扉を蹴破った。

 
数分後、バルトフェルドから通信が全機に入った。
「ヴァレンタイン盟主を発見、捕縛。
エクステンデット部隊がコロニー内に侵入。
現在アカツキ、ブレイズザクファントム、グフイグナイテッドが戦闘中。」
マリューは両手を胸の前で組んだ。
「ムゥ…」
頭は抑えた。しかし、彼らの戦いは、今始まったばかりだった。

 

 

 

016

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