ミリアリアが、証言台に立つ。
なぜ、そこまで思い当たらなかったのだろう。
確かに北欧のテロ事件については、ミリアリアほど証言するにふさわしい者などいないだろう。
その場にいて、なおかつその凄惨な様子を記録したデータも所持しているのだから。
「そう、なんだよな。…なんかさ、その事も聞きそびれたまま今まで来ちまって…。なぁなぁになってたのかもしれねーな。」
「遠慮もしてたんだろ?お互いさ。」
ラスティの青い瞳が穏やかな色をたたえ、細められる。
「昔、お前の事をミリアリアが話してた時にも思ったんだ。何で普段は無鉄砲なくせにこんな時だけ臆病なんだろ、って。
でも、二年前だっけ?AAでのお前らを見て何となく合点が行った。好きすぎて臆病になってて、受け止める、踏み込む勇気がなかったんだ。ミリアリアも、多分お前も。」
意外な言葉に、ディアッカは目を丸くした。
「俺の事…話してたのか?あいつが?」
「ああ。…これ以上は俺じゃなくて、ミリアリア本人に直接聞けよ。少なくとも北欧のテロについてはお前に与えられた任務の一環でもあるだろ?いい切欠じゃん。」
ディアッカはラスティの綺麗な青い瞳をじっと見つめ返し、頷いた。
「…そうするわ。俺、別れてる間のあいつの事、思えば全然知らなくてさ。
今まで聞けないでいたけど、あいつの本来の仕事についても意思確認?とか、してみようと思う。
オーブの報道官って立場もあるから、すぐにどうこうは言えねぇだろうけどさ。」
「まぁ、そうだな。…にしてもまずは彼女とアスハ代表の救出が最優先だ。メール、他に重要な事は書かれてないのか?」
ラスティの言葉に、ディアッカは画面をスクロールし他のファイルの内容を確認した。
「情報としては有益だけど、急ぎっぽいのはねぇな…。
ロイエンハイムさんの経歴と、助力を求めた事、ワクチンと復興支援についてはあっちから協力したいと申し出があった事、くらいか?
…あとは、アンノウンのMSについての情報、なんてのもあるけど。」
「MS?なんだよそれ」
「マイウス付近で、未確認のMSが数機目撃されているらしい。識別コードも型式も不明、恐らくザフトの量産機を不法に改造したものと思われる、ってさ。」
これが今回の事件と関わりがあるかどうかは分からない。
だがミリアリアがこの情報を送って来たと言う事は、彼女なりに何か引っかかるものがあったからだろう。
ならば、この件はしっかり覚えておこう、とディアッカは肝に銘じた。
そしてメールの最後に、ミリアリアからのメッセージが記されていた。
『ロイエンハイムさんは、先の大戦から現在までずっと復興支援に取り組んでいる人です。
だからきっと、ディアッカのしている事の助けになると思います。
勝手に話をしてしまったけれど、ロイエンハイムさんもディアッカのお手伝いがしたい、と言ってくれているの。
ワクチンに関しても、お父様と協力して早急に何とかしてみせる、と言って下さったから、ついその言葉に甘えてしまいました。
勝手な事をしてごめんなさい。
不本意かもしれないけれど、もし彼がカーペンタリアに訪れた時は、話をしてみてもらえると嬉しいです。
それと、万が一を考えてロイエンハイムさんにラスティの連絡先を調べて渡しました。
ラスティに連絡を取るかどうかはロイエンハイムさん次第だけど、彼はどうやら無事に傭兵として生計を立てているみたいです。
良かったね、ディアッカ。
それじゃ、もうそろそろ家を出ないと。
あなたが無事である事を、心から願ってます。
信じていると言ったのは本当だけど、無理はしないで。
離れていても、ディアッカはひとりじゃないから。お願いだから、それだけは忘れないで。
じゃあ、行ってきます。
ミリアリア』
最後まで目を通し、ディアッカはそのメールを保存し、閉じた。
きっとこのメールは、自分と話をする前に書いたのだろう。
文面から伝わる、自分を気遣うミリアリアの想いに、ディアッカの胸が締め付けられるように痛んだ。
ーーー愛してる。必ずこの手に取り戻す。
「…浸ってる場合じゃねーぞ?ディアッカ。」
「ああ。隔離棟はロイエンハイムさんにひとまず任せる。…で、お前の連れて来た美人。俺が上に話を通すから、基地内に連れてくる事は可能か?」
「ああ。てかその前に、お前は3時間でいいから休め。そんな顔ミリアリアに見られたら、馬鹿呼ばわりされた挙句確実にひっぱたかれるか怒鳴られるぞ。」
「…だな。」
ラスティの声に、ディアッカはくすりと笑う。
そして、笑う余裕ができた事に自分でも驚きながら、ぱたん、と端末を閉じた。
![]()
改めてミリアリアと自分の関係について想いを馳せるディアッカ。
ラスティがいい相談役となってくれています。
2015,5,1up