ミリアリアからのメールには、いくつかのデータファイルが添付されていた。
ディアッカは“セリーヌ・ノイマン”と名付けられていた添付ファイルを開く。
「あいつ…いつの間にここまで詳細に調べ上げたんだ?」
「ああ、ミリアリアの持ってる許可証は、多分コミュニテイのトップから渡されたものだと思う。あれはジャーナリストの中でもそうそう出回ってない種類のものだからな。ターミナル内のかなり深い所まで探りを入れられるし、下手すりゃ国家機密レベルの情報も閲覧可能だ。あとはジャーナリスト時代の伝手をフルに使ったんだろ。オーブの姫様が言ってたけど、彼女、意外に顔が広いっぽかったし。きっと俺達の知らないコネがあるんじゃねぇの?」
ラスティもディアッカとともに端末を覗き込み、感心したようにテキストに目を通す。
ミリアリアからのメールによれば、セリーヌ・ノイマンは先の大戦時、連邦軍の士官と結婚の約束を交わしていたらしい。
【婚約者の名前はキール・ミューリッヒ。
キール・ミューリッヒは先の大戦時にパナマで戦死。
婚約者の死によりセリーヌは心神喪失状態に陥り、勤務していた製薬会社を休職。
1年半程で復帰したが、その後も精神的に不安定な状態は続き、現在は非常勤の研究員として雇用されている。
解雇にならなかったのは、彼女が優秀な研究者であったからだと思われる。
彼女の勤務する製薬会社は、ロイエンハイム氏の企業グループの傘下のひとつ。】
ざっと目を通したディアッカは、重い溜息をついた。
他にもいくつかのファイルが添付されている所を見ると、ミリアリアはかなり多方面から探りを入れてこれらの情報をターミナルから引っ張り出して来たのだろう。
ディアッカは改めて、ジャーナリストとしての彼女の経歴について自分はほとんど何も知らないことを実感し、少しだけ寂しい気持ちになった。
「…なに考えてんの?」
はっと顔を上げると、自分の横で頬杖をついてこちらを向いていたラスティが、くすりと笑った。
「ミリアリアさ、しばらくターミナルから遠ざかってただろ。」
「…っ、お前、なんで…」
「俺たち傭兵もさ、ターミナルってある程度利用するんだわ、仕事の都合上。お前がミリアリアをプラントに連れてった辺りから、彼女の痕跡がぷっつり消えた。んで、一年経たずにお前との婚約発表だろ?コーディネイターと婚約したナチュラルの女性、しかも噂じゃ元ジャーナリスト。…まぁ、同業者ならいろんな意味で話くらい聞きたいと思うよな。」
ディアッカはラスティの話の真意が掴めず、首を傾げた。
「それ…どういう…」
「察しが悪いなぁ、お前。ミリアリアとつなぎを取りたい輩が一時期やたらターミナルで情報漁ってた、って事。仕事用のアドレス、消去してないならそっちにもきっと取材依頼の連絡行ってたんじゃね?」
仕事用のアドレス?取材?
オーブへの新婚旅行の時に記者にしつこく追われた経験はあったが、ミリアリアへ直接そう言った依頼が行っていたとすれば、ディアッカには全てが初耳な話ばかりだった。
よくよく考えれば、ミリアリアは自分といる時、業務用の端末を開く事はあってもAAから出る時に持ち出していたプライベートのラップトップを開く事はほとんど無かった。
「その分じゃ…お前、ミリアリアがどんな仕事してたか知らねーだろ。」
図星を突かれて、ディアッカはぐっと言葉に詰まる。
「ミリアリアも用心深いし、余計な事は言わねーもんな。ま、しょうがねぇか。むしろ賢明だ。」
自分の知らないあいつを、ラスティは知っている。
そう思うと少しだけ嫉妬心が刺激されたが、それよりもディアッカには気になる事があった。
「…あいつさ。プラントに着いてすぐ、ラクスに許可証預けたんだ。」
「は?」
訝しげな顔をするラスティに、ディアッカはミリアリアがラクスにターミナルの許可証を預けた経緯を話した。
「そんときは単純に、ああ、俺と婚約したからジャーナリストの仕事には戻らないんだ、って思ったんだけどさ。でも、そうじゃなかった。俺の立場とか安全を考慮して、あいつは自分のしていた仕事から離れた。それでも、こうやっていざという時のあいつの働きっぷりを見ちまうと、反対してたとは言え、ほんとにそれで良かったのかな、って…」
「ちょ、ストップ!」
突然ラスティに言葉を遮られ、ディアッカはきょとんとした。
「…意外に繊細っつーか…アレだよな、お前。」
「はぁ?」
「んー、まぁ、いいんじゃない?もうお前ら夫婦なんだしさ。次にゆっくり話するときがあったら、変な気とか使わねーで腹割って話してみたら?なんで許可証預けてまでジャーナリストやめたのか、とか未練無いのか、とかさ。」
「なんでって…それは…だから…」
「ほら、はっきり答えられないんだろ?ミリアリア本人からも聞いた事無いんだったらいい機会じゃん。それに、ダストコーディネイターについて話を進めるんだったら、必然的にミリアリアだって証言台に立つ事になる。……あのテロの様子を、自分の目で見て、写真て形で記録媒体にも残したんだからな。」
「あ…」
ディアッカはラスティの指摘に、言葉を失った。
![]()
ラスティがずばずばものを言っております(笑)
ほとんど公式では出番のなかった彼ですが、どこかニコルにも通じるほんわかキャラな
イメージを個人的には持っておりました。
でも、同時にこう言った鋭い部分もあったのではないか、と勝手に妄想し、うちのラスティが
出来上がりました。
2015,5,1up