ロイエンハイムの提案は、驚く程あっさりとカーペンタリアの総司令部に受け入れられた。
なかなか進展しない状況への苛立ちもあったのだろう。
また、ロイエンハイムが様々な地域の復興支援を行うボランティア団体の設立者であり、自身も被災地に足を運んで活動していると言う経歴が決め手となったようだ。
ディアッカはシンに、ロイエンハイムが連れて来たスタッフ達を隔離棟まで案内させ、医療班達との顔合わせと彼らへの情報提供をさせるよう伝えた。
「お前は防護服忘れんなよ。まだ空気感染の疑いが消えた訳じゃない。」
「はい。あの、ではこちらに。」
「フェブラリウスとの直通回線の用意は出来ているかね?すぐにでもタッドと話をしたい。」
「隔離棟の近くに用意してあります。ロイエンハイムさんはそちらをお使い下さい。」
短いやり取りの後、シンに連れられロイエンハイムが姿を消すと、部屋にはラスティとディアッカが残された。
「お前、いい隊長っぷりだな。クルーゼ隊長とは大違いだ。」
「…それ、褒め言葉か?」
常に仮面で自分の顔を隠していた、かつての隊長。
ヤキンで対峙した時、彼はきっとバスターに乗るのがディアッカである事に気付いていただろう。
その上で容赦なく攻撃を仕掛けてきたのだ。
あの状況であればそれは正しい選択だったのかもしれないが、それでも当時の薄ら寒い感覚を思い出し、ディアッカの眉間に皺が寄った。
「ザイルさんから話は聞いた。お前、わざわざスカンジナビアまで来たんだって?」
「ああ。イザークから頼まれてた事だし、俺自身も直接お前に会って、きちんと話がしたかったし?
…で?ここに来たって事は、答え、聞かせてくれるんだよな?」
ラスティの青い瞳じっと見つめ、ディアッカは核心に迫った。
「…ああ。俺はプラントへ行く。地球にいるダストコーディネイターの現状を証言する為にな。」
毅然とそう告げるラスティに、ディアッカは詰めていた息を吐き出した。
「そ、か。サンキュ。」
「イザーク、覚えててくれたんだな。俺との約束。」
感慨深げに呟くラスティに、ディアッカはあたりまえだろ、とオレンジの頭を小突いた。
「あいつは一度交わした約束を忘れるような男じゃねーよ。それに…あいつだけじゃない。
この件には、ラクス・クラインも噛んでる。」
ラスティの目が見開かれた。
「…そ、か。これで、何かが変わって行くのかな。」
「じゃなきゃ困るだろ。」
「まぁな。…プラントでの証言なんだけどさ、俺の他にもうひとり、連れて行きたいやつがいるんだ。
証言者は多いに越したことないだろ?」
「…は?」
ぽかんとするディアッカに、ラスティはにやりと笑った。
「今は基地近くに待たせてる。…聞いて驚け。かなりいいオンナだぜ?変な気起こすなよ?」
「俺はミリィ以外に興味なんてもうねぇの。…そうだ!なんだよあの物騒なスタンガン!
人のオンナにあんなもん持たせやがって!」
「え?何で知ってんの?つーかあの時はお前のオンナじゃねぇだろ。片思い中、って聞いたけど?」
「…っ、それでも何でも、あいつは俺のオンナだっつーの!」
ひさしぶりの、他愛もない会話。
ミリアリアの機転で駆けつけてくれたロイエンハイム。そしてラスティの来訪ともうひとりの証人による証言の確約。
がちがちに固まっていたディアッカの心は、少しずつ緩み、解されて行く。
「そういや、なんでお前ロイエンハイムさんと…?」
「ああ、ミリアリアがあの人に俺の事斡旋してくれたの。ターミナルを通して俺の居場所を特定して、一般には公開されてない連絡手段をあの人に教えたらしい。
んで、ちょうどスカンジナビアに帰る途中だった俺んとこに連絡が来て、こうしてここにいるってわけ。
昔いたコミュニティに語学堪能なやつがいてさ。そいつと、あとミリアリアからも護身術教えるのと引き換えにドイツ語とか教わってたし、通訳って名目があれば基地の内部まで入れるだろ?」
たった一日か二日でそこまでの情報をターミナルから引き出し、ディアッカのサポートをするべく動いたミリアリア。
「…やっぱ、俺の嫁さんってサイコー、だな。」
ぽつりと、しかしどこか嬉しそうに呟くディアッカの頭を、そういうのはサイコーじゃなくて有能だろ、と今度はラスティがぱこんと叩いた。
「いって!!」
「とにかくお前、まずは仮眠でもとって頭をしゃっきりさせるんだな。……行くんだろ?ミリアリアの事、助けに。」
ラスティの視線が一瞬鋭さを帯びる。
「ーーーああ。当然だ。」
「ロイエンハイム氏の状況次第じゃ、俺と俺の連れも手伝ってやらなくもないぜ?氏の了承も得てる。
…ミリアリアには、沢山辛い思いをさせちまった貸しがあるからな。」
ラスティの言葉に、ディアッカは目を見開く。
それはきっと、北欧でのテロの事を指しているのだろう。
凄惨な光景を必死でカメラに収め、全てを見届けた結果心が壊れかけたミリアリア。
彼女の存在は、ラスティだけでなくそこにいたダストコーディネイター達にとっても特別なものだったのだろう。
ザイルの元で目にした写真からも、それは容易に想像ができた。
「…ああ。頼む。」
ディアッカは、遠く宇宙にいるミリアリアを想った。
待ってろ、ミリィ。お前の努力を無駄にはしないから。
俺も俺の出来ることをして、すぐに助けに、行くからーーー。
ディアッカは仮眠を取る前にミリアリアのメールの続きを読もうと、机に置かれた端末の画面に目を落とした。
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ミリアリアの働きにより、満を持してラスティ登場です。
そして、またもやオリキャラ登場の予感(笑)
2015,5,1up