ディアッカは慌てて画面を開いた。
送信時刻を見るに、送信されたのは今朝。
プラントを出る前に送信されたもののようだ。
テキストファイルが添付されており、本文にタイトルは、無い。
ディアッカは画面をスクロールさせた。
『 ディアッカへ。
ちゃんと、休んでますか?
ラクスからターミナルの許可証を渡されました。
ディアッカと一緒にいると決めた時点で、これを使う事はもう無い、と思っていたけれど、もしかするとそれは間違いだったのかな、と思います。
私は当時、あなたとずっと一緒にいる為にはジャーナリストとしての“ミリアリア・ハウ”の経歴は邪魔なものにしかならない、と思ってた。
ナチュラルの私をプラントに連れ帰って婚約者として世間に公表するあなたに、ナチュラルを敵視する人達がいい感情を抱くはずが無い。
それだけでもあなたを危険に晒す事になりかねないのに、その婚約者の職歴がカメラを持って戦場を回っていたジャーナリスト、だなんてますます変な勘繰りを受けたり危険な目に遭うリスクが高まるかもしれない。
だから、あなたに着いていくと決めた時、ラクスにこの許可証を預けました。
でも、今回のような事になった時、一つでも出来ることは多い方がいい。
私は私に出来ることでディアッカの助けになりたい、と思ったの。
そして、この許可証を使えばそれが可能になるかもしれないから。
都合がいい考えだけど、そう思って許可証を使う事を決めました。
昨日のうちに、ターミナルで調べたセリーヌ・ノイマンの情報をまとめました。
どれだけ役に立つかわからないけど、良ければみんなで共有してください。
私は死にに行くつもりなんて無い。
あなたと、あなたの大切なものを私も守りたいから、プラントを出ます。
だから、もし私がここを出た後、ノイマンさんのお姉様やその仲間がカーペンタリアやプラントに何かしてきたら、私に構わず迎撃してください。
お願いだから、迷わないで。
命を無駄にしないで。』
ディアッカはそこまで読んで、固く目を閉じた。
「また、勝手に突っ走りやがって…」
どこまでもディアッカを守ろうとするミリアリア。
だが、その想いはディアッカも同じで。
「俺だって…お前が何より大切だって、何でわかんねぇんだよ…」
本当に、いくつになってもこういう所は変わらない。
だが、そんなミリアリアだからこそ、好きになったのだ、とディアッカは思う。
無鉄砲ですぐ突っ走って、気は強いけど本当は底抜けにお人好しで、優しくて、まっすぐで。
ディアッカは目を開けた。
そこに宿るのは、決意。
必ず、守る。どこにいたって助けに行く。何度でも取り戻す。
そう誓ったのは、自分だ。
そう自分自身を叱咤し、メールの続きを読もうとした時、俄かに執務室の外が騒がしくなった。
「ちょ…待って下さい!」
おろおろとするシンの声に、ディアッカは首を傾げる。
隔離棟の兵士に何かあったにしては、様子がおかしい。
ディアッカは立ち上がり、足早に執務室のドアを開けた。
「シン、どうした…」
「あ、隊長!あの、この人達が…」
『おお!やっと見つけたぞ!!ほれ、さっさと通訳せんか!』
「いや、だから傭兵の仕事じゃねぇだろ、通訳って…」
戸惑い顔のシンの言葉は、途中から耳に入ることはなく。
ディアッカは紫の瞳を驚愕に見開き、震える声で目の前に立つ二人の名を口にした。
「な……ロイエンハイム、さん?…ラスティ!?」
ディアッカの目の前に。
ミリアリアの知り合いでもあり、父であるタッドの旧友でもある、地球で暮らすコーディネイター、オズワルド・ロイエンハイムと。
数年ぶりに対面する、かつてのクルーゼ隊の仲間であり、今は地球で傭兵として活動をしている、旧友。
「よ、ディアッカ。久し振り。」
今は中東地域にいるはずの、ラスティ・マッケンジーの姿があった。
「隊長、あの、お知り合いですか?」
困惑気味のシンの声に、ディアッカは我に返った。
「ああ。とりあえず部屋に入ってもらうから、お前も外の騒ぎ収めてすぐ戻って来い。」
「俺が?!…でありますか?」
突然の侵入者達に、ただでさえバイオテロで浮き足立っている兵士達は遠巻きに様子を伺っていて。
きっとカーペンタリアの司令官にも今頃何かしらの報告が行っている事だろう。
「しょーがねぇじゃん。俺も隔離棟に行く予定があるし、時間もない。頼むな。
…てことで、二人とも、とりあえず中へ。」
情けない顔で立ちつくすシンに軽く笑いかけると、ディアッカは二人を促し隊長室の扉を開けた。
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なぜこの二人が同時に現れたのか?
答えは、次で明かされます。
2015,4,15up