出撃! 2

 

 

 

ディアッカは、格納庫に向かい艦内を疾走していた。
ミリアリアの出立をマードックから知らされ、急いでいたところに敵襲の警報。
イザークも連絡を受け、すぐに追いついてくる。
「出撃前から敵襲かよ!セキュリティはどうなってんだ?」
「うるさい、さっさと走れ!狙いはサイとミリアリアだぞ!」
格納庫の入り口が見えてきた。
その時。

 

「サイ!きゃああっ!」

 

二人は腰の銃を引き抜き、そのまま格納庫に飛び込んだ。
迂闊だった。
まさかキャットウォークの足元から敵が現れるとは予測していなかったのだ。
ミリアリアは手すりの隙間から足首を掴まれ、悲鳴を上げた。
「ミリィ、撃て!」サイが叫ぶが、ミリアリアは銃を向けられない。
逆にレーザー銃で柵を破壊され、そのまま引き摺り込まれる。
「男は確保したぞ!」
サイが別の男に当身を食らわされ、倒れる。

 
「やめて、離してよっ!」
ミリアリアは咄嗟に足元の男を蹴った。
怯んだ隙に足場へとよじ登る。
しかし。
「この、生意気な…!」
サイを気絶させた男が、いつの間にかすぐそばに来ていた。
もう、ミリアリアに逃げ場はない。
「あ…」
乱暴に腕を掴まれ、腕に痛みが走る。
いやだ、怖い!
…助けて!ディアッカ…!!

 
「ディアッカ助けて!ディアッカ!!」

 
その瞬間。
ミリアリアの腕を掴んでいた男が吹っ飛んだ。
衝撃で思わず目を瞑ったミリアリアは、そのまま反対側に飛ばされるはずが、ぐいっと何かに引き寄せられる。
そっと目を開けると、そこには。

 
「ミリィ!大丈夫か?」
ひどく走ったのだろう。
息を切らせて。
ディアッカが、いた。

 
「え…ディアッカ…?」
助けに、来てくれた?
酷い喧嘩をして、心ない言葉で、また傷つけてしまったのに。
怖くてどうしようもなくて、ディアッカしか頭に浮かばなくて。
気づいたら、ディアッカの名を呼んで、助けを求めていた。

 

「ディアッカ…!」

 
すぐそばにある体温に安心して、涙が滲む。
ミリアリアはディアッカに思わずしがみついた。
「ミリィ…」
ディアッカの表情が一瞬緩む。
「坊主、急げ!」
フラガの真剣な声が遠くで聞こえた。

 
「おっさん、援護頼む!」
ディアッカも真剣な表情でそう叫び返し立ち上がると、そのままミリアリアを引っ張り起こした。
紫の瞳がまた一瞬、優しく煌めく。
「ミリィ、こっち…」
ディアッカが何か言いかけたが、その時ミリアリアの目はディアッカの背後で銃を構えた男の姿を捉えていた。

 
ディアッカが撃たれる!

 
「ディアッカ危ない!」
咄嗟の行動だった。
ミリアリアがディアッカの腕を不意に強く引き、それまで彼がいた場所に自分の体を入れかえる。

 
赤い光の線が、そのままミリアリアを貫いた。

 

 

ディアッカは少しの間、何が起きたのか理解ができなかった。
「ミリアリア!」
イザークの叫びとともに、ディアッカの背後にいた敵が銃撃を受けて倒れる。
ミリアリア。
俺はあいつを助けに来たんだ。
そうだ、ミリィ?
どこだ?
ディアッカの目に、破壊された柵の間に落ちていくミリアリアの姿が映った。

 

 

「ミリィ!」
「そこを動くな!」
先程失神させられたサイを肩に担いだ屈強そうな男が、こちらに銃を向けて立っていた。
「Gシリーズの開発者はこちらでお預かりする!
もしそこを少しでも動けばこの二人の無事は保証しない。」
「よし、撤収だ!急げ!」
離れた場所から声がする。
ディアッカがそちらを振りかえると、仲間であろう長身の男がミリアリアを抱えていた。

 
「ディアッ…カ…怪我…」
ミリアリアの唇がかすかに動く。
意識があることにひとまず安堵した次の瞬間、ディアッカは足元から崩れ落ちそうなほどの衝撃を受けた。
ミリアリアの体が、血に染まっていた。
「よかった…」
そう一言だけ言うと、ミリアリアはうっすらと微笑んだ。
その瞳から、一粒だけ涙が零れ。
そのまま、敵の腕の中で細い体ががくんと力を失った。

 

 

「おまえら、逃げ切れると思ってんのか!」
叫ぶフラガにサイを抱えた男が嗤った。
「ザフト兵などと馴れ合いやがって…
お前らも同じナチュラルなら、早く目を覚ましてもらいたいものだな。
青き清浄なる世界のために!」
そうして、彼らは軽々とした身のこなしで何処へともなく消えて行った。

 

 

「坊主!追いかけるぞ!」
フラガの声がする。
しかしディアッカは動けない。
ミリアリアは、自分を庇って、撃たれた。
あの、赤いものは。
ミリアリアの、血ー。
あれほど守りたかった大切なものが。
目の前で、傷つけられてしまった。

 

 

「今のこいつは使えん!俺が行く!」
イザークがMSデッキに走る。
「マリュー!坊主を頼む!」
「分かったわ!気をつけて!」
マードックとマリューがディアッカの元に駆けつけるまで、ディアッカはその場から動くことができなかったのだった。

 

 

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