ディアッカとの通信から2時間後。
ミリアリアはオーブの白い軍服に身を包み、濃紫の首長服を纏ったサイと共にザフト軍本部内の格納庫に立っていた。
二人がこれから乗り込むのは、自動航行機能のついた小型のシャトル。
ザフト宙域にいる、セリーヌ・ノイマンの指示によるものだった。
「酸素はたっぷり充填してある。何かあればこの通信機を使え。」
「了解。信じてるよ、イザーク」
イザークの言葉に、サイは少しだけ固い笑顔で頷いた。
「外交官の腕の見せ所だろ?ミリィはしっかり守ってみせるよ。」
「俺も、お前を信頼している。頼んだぞ。」
サイがきょとんとし、そして今度は柔らかく、笑った。
イザークも微かに笑い、ただ頷いた。
「ミリアリア。ありがとう。カガリを…頼む。」
アスランの言葉に、ミリアリアは微笑んだ。
「カガリは必ず助けるわ。だから、心配しないでね、アスラン。」
頷いたミリアリアは、その時初めてアスランの手に光る指輪に気がついた。
「……それ」
一瞬訝しげな顔したアスランだったが、ミリアリアの視線の先にあるものに気づき、少しだけ微笑んだ。
「また今度、ゆっくり話をするよ。…カガリと。」
「…そうね。楽しみにしてるわ。」
アスランの隣に立つキラは、そんな二人の会話を無言で見守った後、ミリアリアに微笑む。
ミリアリアも、そんなキラににこりと微笑んで、頷いた。
「ミリアリアさん…どうか、無茶はなさらず。そして、ありがとうございます。」
ラクスが、ミリアリアをそっと抱きしめる。
「…ううん。覚悟はしていたから。私は、ディアッカやみんなを守りたい。私にできる方法で。だから、これでいいのよ、ラクス。」
ラクスが泣きそうな顔になる。
「…ディアッカさんは、きっと大丈夫です。わたくし達も、ワクチンが出来次第すぐに動きます。だから、ミリアリアさんもそれまでは無理をなさらず。…どうか、お気をつけて。“あの方”については、引き続き調査を進めます。」
ラクスが耳元でそっとそう囁いた。
ミリアリアは、今にも泣きそうな顔のシホの前に立ち、困ったように微笑んだ。
「そんな顔してると、イザークが心配しちゃうわよ?」
「…今だけ、です。あと少ししたらいつも通りに戻ります。」
ミリアリアはシホの体を柔らかく抱き締めた。
「…帰って来たら、またお買い物に行きましょ?今度は事件に巻き込まれないように気をつけながら、ね?」
小さな声で告げられたミリアリアの言葉に、シホの瞳が潤んだ。
だがそれは一瞬の事で。
「…必ず。その時はイザークへの誕生日プレゼント、一緒に選んで下さい。」
ミリアリアは一瞬目を見開いた後、ふわりと笑って、頷いた。
整備士が、シャトルの準備が整った事を告げる。
「じゃあ、行きましょう?サイ。」
「体調は大丈夫?ミリィ。」
「うん。もう平気よ。」
ミリアリアはくるりと見送りの面々を振り返った。
「…みんな、ありがとう。私は私の出来ることをしてくるわ。そして、カガリを連れて必ず戻ってくるから、心配しないで?」
ラクスもイザークも、そしてキラも言葉が出なかった。
「…ありがとう、ミリアリア。」
代わりに返事をしたのはアスランで。
ミリアリアは、にこりと笑った。
「では。射出します。」
二人を乗せた小型シャトルのハッチが閉められる。
そして、皆の目の前でゆっくりとシャトルは動き出しーーーあっという間に、空の彼方へと消えて行った。
「…参りましょう?皆様。ワクチンが出来るまで、やれることはたくさんあるはずです。」
ラクスの声に、皆は振り返り、頷いた。
***
「今朝、ディアッカと話をしたの。」
シャトルの窓から外を見ながら、ミリアリアはぽつりとサイに告げた。
「うん。あいつ、何だって?」
いつもと変わりないサイの声が、ミリアリアにはありがたかった。
「…今すぐにはここを離れられないけど。俺は必ず、お前を助けに行く。そう言ってたわ。あとね、サイにも…ありがとう、って。」
「え?」
サイは不思議そうに目をぱちくりさせた。
「通信を終わらせる直前、サイに伝えてくれって言われたの。“お前の事信じてるから。あと、ありがとう、って伝えて?”って。…自分で言えばいいのにね。連絡先だって知ってるくせに。」
そう言ってくすりと笑うミリアリアに、サイもまた笑った。
「…ミリィ、怖くないの?」
「…全く怖くないって言ったら嘘になるわよね。でも、不思議と落ち着いてるの。ディアッカ、必ず来てくれるって言ってたし、ここまで来たら腹を括るしか無いでしょ?」
ーー歳を重ねても、ミリィのこの性格は変わんないよ、トール。
サイは心の中で、空にいる友達にそう語りかけた。
何度心が折れそうになっても、ミリアリアは顔を上げ、前を向いて進んで行こうとする。
ミリアリアは脆いくせに、強い、とよくディアッカが言っていたが、本当にその通りだ、とサイは思う。
「…俺も、俺に出来ることをするよ。ディアッカの信頼に応える為にもね。」
「うん。サイが一緒に来てくれて…本当に心強い。ありがとう。危険な目に遭わせちゃって申し訳ないけど…」
ミリアリアがそこまで言った時、シャトルの窓からふたつの艦の姿が見えた。
ーーーふたつ?
「サイ!戦艦が…二隻いる!」
ミリアリアの声に、サイははっと顔を上げると慌てて窓から外を確認する。
その目に飛び込んで来たのは、見慣れた白い戦艦と、それより一回り小さな、黒い艦。
「…ミリィ、イザークに通信を!あれは…不明艦と、AAだ!」
あまりの驚きに、二人は顔を見合わせる。
そしてミリアリアは通信機を手に取り、必死でコードを打ち込んだ。
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プラントを出たミリアリアとサイ。
そして、AAがついに登場です。
2016キラカガ誕小噺に合わせ、少しエピソードを追加しました。
2015,3,31up
2016,5,19改稿