40, 約束 1

 

 

 

 
カーペンタリア基地内。
与えられた執務室に戻り、シンは大きく息をついた。
ディアッカは隔離された兵士達の治療にかかりきりの為、まだここには戻っていない。
 
 
キサカから、AAが動く、と知らされたのはつい昨日の話だ。
彼らがコペルニクス近くに向かうと聞き、シンはすぐルナマリアに連絡を取った。
そしてカーペンタリアで起きた事件について簡単に事情を話し、AAについて協力を求めたのだった。
今までに無く真剣に、そして懸命に事情を説明するその姿に、ルナマリアはシンの申し出を快諾した。
 
「シンにそんな顔で言われたら、協力しない訳に行かないでしょ?
それに、テロリストを見過ごしになんて出来ないじゃない?だから、こっちは任せて!」
 
そう言ってウインクを寄越すルナに、シンはこんな時だと言うのについ笑顔になっていた。
 
 
リミットは明日。
アスハ代表の機転のおかげで、ウイルスの解析も完了し、ワクチンの開発も順調に進んでいるらしい。
しかし、さすがに明日までの開発というのは無理があった。
宙域に停泊しているであろう犯人と、本国はどう交渉するつもりなのかーー。
 
その時、通信を知らせる着信音が部屋に鳴り響き、シンははっと顔を上げた。
 
 
 
『あ…シンくん』
「ミリアリアさん?!」
モニタの向こうで少しだけ驚いた顔になったミリアリアは、ふわりと微笑んだ。
 
 
『ディアッカ…いないのね。』
「あ、はい。隊長は隔離棟で治療にあたってます。…呼びましょうか?」
『あ、うん…。あの…メールとか、見る暇あるかな?ディアッカ。』
 
 
どこか歯切れの悪いミリアリアの口調に違和感を感じながら、シンは会話を続けた。
 
「言えば見るとは思いますけど…返信は厳しいんじゃないですかね。」
『そう、よね。こんな時間まで戻れないんだものね…』
「そう時間もかからず、一度ここには戻ってくると思うんですけど…。何か伝言があればお伝えしますし、あの、やっぱり俺呼び出します」
『待って!』
「え?」
 
懐の通信機に手を伸ばそうとしたシンは、その切羽詰まった口調に思わず顔を上げる。
モニタの向こうには、泣き出しそうなミリアリアの顔があった。
 
 
『…シンくん。ディアッカの事、お願いね?』
 
 
ミリアリアの言葉に、シンはあのカフェでの約束を思い出し、「はい」と頷いた。
『…ありがとう。良かった。』
ほっとしたようにそう口にするミリアリアは微笑んでいて。
さっきの表情はなんだったんだ?
そう思ったシンだったが、その時背後から聞こえたドアが開く音に、びくりと肩を揺らし振り返った。
 
 
「シン、誰かと通信ーーーミリアリア?!」
 
 
そこには、隔離棟から戻ったディアッカが驚いた表情で立っていた。
 
 
 
 
「隊長…お疲れ様です。ちょうど今、通信が…」
『ディアッカ…ごめんなさい、仕事中に。今話せる?』
 
 
シンの言葉にかぶせるように、ミリアリアの声が室内に響いた。
 
「あ?ああ。」
「隊長、俺、外に出てますね」
 
シンはディアッカに目配せして、執務室を出ようとした。
 
『あ、待って!』
「え?」
 
ミリアリアに呼び止められ、シンは面食らった。
 
 
『シンくんにも、居て欲しいの。いいかな?ディアッカ。』
 
 
シンはディアッカと思わず顔を見合わせる。
 
「え?あ…はい。隊長がそれで良ければ…」
「…構わないぜ?こいつがそう言うなら、必要な事なんだろうし。
で、ミリアリア、どうした?何か分かったのか?」
 
 
『…AAが動いたのは知ってる?コペルニクス付近にいるみたいなんだけど。』
「ああ…。シンから聞いてる。ノイマンさんも、黙ってられなかったんだろうな。」
『ノイマンさんの所に、お姉様から連絡があったらしいの。それも関係あるみたい。それで…イザークの所にも、ノイマンさん、連絡をくれたわ。』
「イザーク?…そう、か。後で通信入れて聞いてみる。」
 
 
ミリアリアの言葉に頷くディアッカもまた、シンとおなじような違和感を感じていた。
どこか、いつものミリアリアらしくない話し方。
「…ミリィ、何か…」
『あの、ディアッカ!』
焦ったようなミリアリアの言葉に、ディアッカは首を傾げた。
 
「どうした?」
 
ミリアリアは、すぅ、と息を吸いーー一番言わなければならない大切な事を告げた。
 
 
 
『私…明日、プラントを出るわ。』
 
 
 
その言葉にディアッカは絶句し、シンが、ひゅ、と息を飲む音が部屋に響いた。
 
 
 
 
 
 
 
016

ついにプラントを出る事をディアッカに告げたミリアリア。
ディアッカの反応は…

 

 

戻る  次へ  text

2015,2,13up