『…アスハ代表がプラントに着いてすぐ、宙港で拉致された。
犯人の要求は、オーブとプラントの国交断絶と、それに伴って在プラントオーブ総領事館の職員をプラントから出すこと。
そして、手始めにミリアリアさんをプラントから出して自分たちの元に寄越せ、と。
まとめると、そう言う事ですか?』
「…ああ。そうだ。」
ディアッカとシンは、MSでカーペンタリアまで移動しながら、通信越しに会話を交わしていた。
オーブを発つ前にキサカからプラントでの事件について簡単に聞かされた二人は、続報が入り次第すぐに連絡する、との言葉を受け、とにかくカーペンタリアへと急いでいた。
「カーペンタリアを襲った犯人とプラントでカガリを拉致した犯人は同一人物…と考えていいと思う。」
『でも、たった一人で出来るような犯行でもないですよね?地球とプラントで同時に事件を起こすなんて。
黒幕は一人でも、その下には…』
「…ああ。手駒がいるんだろ。例えばブルーコスモスのようなテロ組織、って可能性もあるな。」
ディアッカは昨日、ミリアリアの実家を訪れた時に感じた謎の視線を思い出していた。
あれはやはり、気のせいでは無かったのだーーー。
二人は、大丈夫だろうか。
ラクスがハウ夫妻に護衛をつけてくれていたのは、もうずいぶん前の話だ。
基地に戻り次第、ラクスにその事を確認しよう、とディアッカは心に決めた。
そして、何より心配なのは、ミリアリアだ。
カガリを人質に取られ、自分の行動次第でプラントにウィルスを撒く、と聞かされた彼女の胸中はいかほどだろうか。
そばにいて、支えてやりたい。
守りたい。
しかし、この状況下で叶うはずもないその想いに、ディアッカは唇を噛み締める。
すぐにでもミリアリアと連絡が取りたかったが、ディアッカはひとつの隊を纏める立場にいる“隊長”だ。
この状況の中、私情に走る訳にはいかない事くらいは、よく分かっていた。
『ミリアリアさん…大丈夫ですかね』
シンの言葉に、ディアッカはそっと息を吐く。
「…基地について状況が分かり次第、あいつにも連絡を取る。
あいつは大丈夫だ。イザーク達もいてくれるし、そうそう無茶はしないはずだ。」
優しいミリアリアはきっと、ひどく思い詰めている事だろう。
ディアッカは、一刻も早くミリアリアの顔が見たかった。
しかし軽く頭を振ってその思いを振り払うと、「急ぐぞ。」とだけシンに告げ、MSのバーニアを吹かした。
カーペンタリアに到着し、二人は防護服姿でデッキに降り立った。
「エルスマン隊長!」
同じく防護服に身を包んだ駐屯兵達が慌てて駆け寄ってくる。
「こんな時に留守にしていてすまなかった。状況は?」
ディアッカの真剣な表情と言葉に、駐屯兵達は真剣な顔で頷くと詳細を語り始めた。
「ベルリンに出向いていた部隊が帰投してからすぐ、バタバタと倒れたんです。吐血する者もいました。
こちらにいる医師だけでは何とも判断がつきがたく、本国にも連絡を取り現在医師団たちが対応を協議中です。」
「倒れた奴らは?」
「……バイオテロの可能性を考慮すべき、という本国の指示を受け、別棟に隔離しております。
ほとんどの者は意識もありますが、高熱や吐血、激しい腹痛など症状も様々で対応のしようがなく…」
「分かった。俺が行く。」
さらりとそう口にしたディアッカに、駐屯兵だけでなくシンも驚きその姿を見上げた。
「エルスマン隊長!危険です!もし本当に未知の細菌が原因だとしたら…!」
「何の為の防護服だよ?それに俺、こう見えても遺伝子工学の権威の息子でさ。その辺の医者レベルの知識なら充分持ってんだよね。」
一気に砕けた口調に変わるのは、ディアッカ本人にも余裕が無いから。
「シン、お前はここにいろ。本国から連絡があったらすぐ俺に繋げ。いいな?」
「え、でも…」
「いいから!副官ってのはそう言う役目なんだよ!あと、無事な兵士達に防護服の着用を義務づけろ。俺からの…なんなら本国からの命令だと言っていい。必要ならイザークの名前を出せ。」
そう言うとディアッカは駐屯兵に通信機を借り、隔離された兵士達に会う為足早に格納庫を後にした。
犯人はプラントで、カガリを衆目の前で拉致して逃げた、とキサカは言っていた。
カーペンタリアにウィルスを仕込んだ、とも。
犯人の言葉に、何か手がかりは無いか?
優秀な頭脳をフル回転させながら、ディアッカは苦しむ兵士達の元へと急ぐ。
そして、ひとつ息をつくと、自分に知りうる中でこの手の話に一番詳しいであろう人物ーーー自分の父親である、タッド・エルスマンへと回線を繋いだ。
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情報が錯綜する中、行動を起こすディアッカ。
ミリアリアの事も気がかりながら、まずは自分の責務を全うしようとします。
そして、この件に関するタッドの見解は?
2015,1,16up