オーブとザフトの間で行われた復興支援に関する協議は、ほぼその日のうちに大筋が纏まった。
カガリは、ディアッカが想像していた以上に復興の遅れている地域への便宜を図り、それに続くようにスカンジナビア共和国をはじめとするオーブの友好国も支援の手を差し伸べてくれていたのだ。
「…まさか、地域住民の雇用まで考えてくれてるとは思わなかったぜ。あれ、お前の案?」
会談が終わり、人気のなくなったブリーフィングルームでコーヒーを飲みながら、ディアッカはアスランに微笑んだ。
「いや、言い出したのはカガリだ。彼女は多分、俺たちよりも世界を知っているから。」
「どういう事だ?」
きょとんとするディアッカに、アスランは薄く微笑んだ。
「こっちに来て思ったんだ。俺たちは本当に小さい世界しか知らなかったんだな、ってさ。
その日の食事に困った事なんて、俺たちは無いだろう?
着ているものが破れたら、新しいのを買えばいい。それが当たり前な中で暮らして来た俺にはカガリのような気遣いは出来ないさ。」
ディアッカはゆっくりと頷いた。
確かに、プラントでも指折りの名家に育った自分たちは、そういった苦労を知らない。
知識としてならもちろんそういった現実がある事も知っているが、あくまでも知識だけ、だ。
ミリアリアは多分、自分よりそう言った事に詳しいのであろうが、ディアッカは離れていた間の彼女の動向について、あまり詳しく聞いた事がなかった。
ベルリンの件で困り果て、通信で過去の事を尋ねた際ミリアリアが驚いていたのはそのせいだろう。
「だがその分、カガリが知らない、経験した事が無い事を俺は知っている。
だから、お互いの知らない事を補いあって、そうしてひとつずつ前に進んで行けばいい。
それは人と人、国同士でも言える事だ。
ーー目指すものは、同じなんだからな。」
そう言ってまたふわりと笑うアスランを、ディアッカは頬杖をついて見上げた。
「…変わったな、お前。」
「え?」
「なぁ、姫さんと結婚しねぇの?もういい加減頃合いじゃねぇ?」
途端、アスランの顔がぱぁっと赤く染まる。
「ディアッカ!俺はそんな…」
狼狽えるアスランを見て、ククク、とおかしそうにディアッカは笑った。
「まだ親父さんの事、気にしてんの?
自分は幸せになっちゃいけねー、とか考えてんのかよ?馬鹿だろお前。」
今度はアスランが目を見開く番だった。
「お前がパトリック・ザラの息子って事実は変えようがねぇじゃん。
でもさ、それが元で何か起こったとしても、その先をどうするか決めるのはお前だろ?
お前が迷わなきゃいい話だろ、そんなの。
あの情勢の中、プラントまで迎えに来た姫さんの気持ちも考えてやれよ。」
「…しかし、当人同士は良くても世間が黙ってないだろう?
俺はナチュラル排斥を謳った人の息子だ。そう簡単にはいかないさ。」
「だったら、黙らせればいい。お前がそんな未来を望んでない事を、分からせればいい。違うか?」
ディアッカの瞳が鋭くアスランを射る。
「お前の実力は、俺とイザークがよく知ってる。
直情径行型の姫さんと鬱陶しいくらい考え込むお前、いい組み合わせじゃね?
ま、お前は地味な性格の割にやる事は派手だけどさ。」
アスランはくすり、と笑った。
「それ、だいぶ昔にキラにも言われた台詞だ。」
そう言えばそうだったな、とディアッカも笑い、コーヒーを飲み干すと立ち上がった。
「幸せになっちゃダメなやつなんていない、ってうちの奥さんが言ってたぜ?
まぁ、その考えに行き着くまでだいぶ悩んだらしいけど。
だから、お前もちょっとは姫さんとの未来、考えてみろよ。」
「…ああ。ありがとう、ディアッカ。」
「どーいたしまして。んじゃ、姫さんとこ行こうぜ?うちの副官も同席させて、例の件についてさっさと話しちまわねーと。
俺、休暇取って行きたいとこあるんだよねー。」
「そうだな。…で、どこに行くんだ?」
「ひ・み・つ」
にやりと笑い、ディアッカは出口に向かって歩き出した。
アスランは苦笑すると、自分とディアッカの使っていた紙コップを片付け、ブリーフィングルームのドアを開けた。
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無印では、AAで再会して話をするまで「意見が合った事がなかった」らしいアスランとディアッカ。
でも運命を経てこのくらい時間が経てば、こういう会話もしてるんじゃないかな、と考え、
このお話を書きました。
補完作品行きかな?とも迷ったのですが結局こちらへ。
細かい状況は違えど、ナチュラルの恋人(妻)を持つ二人だし、共通した悩みや思いもあると
思うんですが、皆様はいかがでしょうか?
それにしても、ディアッカが「うちの奥さん」って言うの、自分で書いててなんですが萌えます(●´艸`)
2014,10,5up