18, 再会 2

 

 

 

 
「アスハ代表、カーペンタリアより客人が到着しました。」
「ああ、入れ。」
 
 
ディアッカとシンがアスランに連れられて入った部屋は、殺風景と言ってもいいほどスッキリとした内装だった。
カーペンタリア基地の休憩室とほとんど変わらない程だ。
 
「ディアッカ、久しぶりだな。地球はどうだ?」
昔とちっとも変わらない、カガリ・ユラ・アスハの声。
「ああ、何とかうまくやってるぜ。姫さんも元気そうじゃん。」
「カーペンタリアはここより寒いだろ?風邪なんて引いてないか?」
オーブ代表首長となり、はや数年。
カガリ・ユラ・アスハは、相変わらずの飾り気の無い笑顔を浮かべた。
 
 
 
「あれ?お前、確かアーモリーワンで…」
カガリが、ディアッカの後ろに控えるシンに気付き、少しだけ目を見張った。
シンは、ぎくりと身体を一瞬強張らせた後、ゆっくりと口を開く。
 
「…一度、ミネルバの中でお会いしてます。その節は大変失礼しました。」
 
両親が、マユが死んだのはアスハの理想が、オーブが原因だ。
当時はそう思い、シンはカガリやオーブに対する憎しみを募らせていた。
オーブに関わる全てに不信感と恨みを持っていたシンは、デュランダル議長の客人として成り行きでミネルバに乗艦していたカガリとアスランに偶然出会い、辛辣な言葉でオーブを批判した。
その事で、ルナマリアやレイに後で酷く叱られた事も今は遠い思い出だ。
直接顔を合わせたのはその時だけだが、カガリの傷ついた表情は今もシンの脳裏に焼き付いている。
 
 
 
今のシンは、オーブに対してあの時とはまた違った感情を持っている。
まだ胸を張ってオーブは自分の故郷だ、と言える程シンは達観していなかった。
だがオーブの理念について昔のように『きれいごと』の一言で片付ける気にもなれなかったし、代表首長である目の前のカガリのたゆまぬ努力に対しては、尊敬に近い念を抱いていた。
カガリには当時、酷くきついことを言ってしまった自覚もあり、ダストコーディネイターの捜索任務を了承したとは言え今回の訪問も内心では躊躇していたのだ。
そんな事を考え、難しい顔をして俯いてしまったシンを不思議そうに一瞥した後、カガリはにっこりと笑った。
 
 
「いや、私こそあの時はかっとなって悪かったな。すまなかった。」
 
 
シンが、弾かれたように顔をあげた。
 
「あの当時は私の中で、お父様の考えこそが全てだった。
だけど、こうして戦争が終わってみて、たくさんの人と話をして。
何が間違っていて、何が正解かなんて簡単に決められるものじゃないと思ったんだ。
あ、もちろんお父様の考えやオーブの理念が間違っていると言っている訳じゃないぞ?
それでも…私こそ感情的になってしまってすまなかったな。」
 
飾らない言葉で自身の思いを語り、頭を下げようとするカガリにシンは仰天し、慌ててそれを止めた。
「いやあのっ!悪いのは俺だか…じゃない、自分でありますからっ!!やめてくださいよっ!」
「おいシン、言葉遣いおかしくなってるぞ」
ディアッカの突っ込みに、アスランが笑いを堪えて横を向き、俯いた。
「いや、だって!」
 
 
カガリはきょとんとしてディアッカとシンのやり取りを聞いていたが、笑いを堪えるアスランを見て、ふわりと微笑んだ。
 
 
「まぁ、いいさ。過ぎた事だ。ところでお前の名前、聞いていいか?」
 
 
シンは、カガリの琥珀色の瞳を真っすぐ見つめた。
自分の目で見て、考える。
それは、戦争についてだけではなく、今自分が立つオーブについても同様で。
かつて抱いていた憎しみの感情に振り回されないよう、シンはひとつ息をついた。
 
 
「ザフト軍エルスマン隊所属、シン・アスカです。エルスマン隊長の副官をしています。
ーーーよろしく、お願いします。」
「カガリ・ユラ・アスハだ。よろしくな、シン。」
 
 
ほんの少しだけ揺れている赤い瞳を見つめ、カガリはまたにっこりと微笑んだ。
 
 
 
 
 
 
 
016

かつて抱いた感情を心の中で整理し、カガリと向かい合うシン。

彼の中で、確かに何かが変わり始めています。

 

 

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2014,9,27up