ノイマンがカーペンタリアにやって来た3日後。
ディアッカはMSでノイマンの乗る専用機を護衛しつつ、オーブ国内にある瓦礫の撤去予定地に向かっていた。
この場所は代表首長であるカガリが提供を決めた場所で、ベルリンだけではなく他の土地からの瓦礫も運ばれてくる予定になっている。
ここで、モルゲンレーテに所属する専門家達による瓦礫の分別や、可能なものは再利用の処理が行われ被災地へと戻されると聞き、ディアッカはカガリの懐の広さに内心舌を巻いた。
カガリとともにあるアスランも一枚噛んでの発案、決定なのかもしれないが、多くの資金を投入し、モルゲンレーテの高い技術を自国のみならず復興が遅れている地域へ率先して提供する姿勢は、地球だけでなくプラント国内でも今後高く評価されるであろう。
シンは、この状況をどう思っているのだろうか。
ディアッカは近くを飛ぶパールホワイトの機体に目をやった。
プラントから地球に降りてすぐに一悶着あったものの、今のシンは比較的落ち着いている。
諍いを起こしたザフトレッド達とも少しずつ打ち解け、地球とプラント双方の情勢についても話をしているようだ。
かつて特務隊に在籍し、多くの戦果も上げて来た腕利きのパイロットでもあるシンから何かを学ぼうと話をしたがる兵もおり、また彼自身の素直な性格も良い方向に転じてシンの周りには少しずつ人が集まるようにもなって来ている。
3日前にノイマンとディアッカが説明したダストコーディネイターの件についてもシンは真剣な表情で聞き入り、コミュニティの捜索と証言者の招致という任務についてもすんなりと了承した。
自分で見たもの、聞いたものを受け入れ、自分で考えて行動する。
ディアッカが伝えた言葉を、シンは彼なりに受け入れ理解しようと努力しているようだ。
今回のオーブへの訪問は、カガリの提案によるものだ。
表向きは復興支援に関する協議とされているが、本題は別にあった。
それは、ダストコーディネイターのコミュニティについての情報交換だった。
聞けば、『ターミナル』とは、各地の報道関係者が所属する協会に登録すれば、一般に流れるニュースよりも少しだけ踏み込んだ話、程度であれば比較的簡単に閲覧が可能なのだと言う。
ただ、それ以上の深い話題や情報に関しては、ミリアリアの所持していたような「許可証」が必要となる。
それを手にするのは手練のジャーナリストでもかなり難しいそうで、それ相応の運と努力、そしてその人物の人柄や実績までもが吟味される。
非合法のジャンク屋なども利用しているため、自然と警戒も強くなるのだろう。
今回カガリは、フラガの伝手を辿ってコミュニティの情報を何とか入手したそうだ。
詳細は現地に着いてから、カガリとの会談の中で明らかにされることとなっている。
その為ディアッカはシンを伴い、ノイマンとともにカガリの元へ向かっていた。
オーブでの滞在予定は休暇を入れて4日間。
その中で復興支援の話を具体的にまとめ、場所次第ではコミュニティへも足を運んでおきたい。
そして、ディアッカにはもうひとつ、やりたいと思っていることがあった。
「…時間、キッツイなー」
任務とはいえ、ミリアリアと話す時間を削る事はなるべく避けたい。
プラントを出て、もうすぐ1ヶ月。
いいかげん、通信越しの会話では恋しさを押さえられなくなって来ているのだ。
これ以上顔を合わせる機会が減ったら、俺、倒れるかも…。
ディアッカは優秀と謳われる頭脳をフル回転させ、この後4日間の予定を組み立て始めた。
「ディアッカ、久しぶりだな。…と、シン!?」
オーブ本島から数キロ離れた場所にある島のひとつに降り立ったディアッカとシンを出迎えたのは、白い軍服を纏ったアスランだった。
「…どうも。お久しぶりです。」
ぶっきらぼうに答えるシンに、ディアッカは苦笑した。
さすがにまだシンも、アスランへのわだかまりは消えないらしい。
「ああ、こいつ俺の副官。コーヒー淹れるのとデスクワーク以外はなかなか優秀だぜ?」
「どっちも勉強中です!!ていうか、コーヒー!今それ関係ないでしょ?!」
「えー?適切な紹介内容だと思うけどぉ?ホントの事だし。」
そのやりとりをぽかんと見ていたアスランが、たまらず吹き出す。
「…なんですか!」
「い、いや…すまない。」
アスランは目に涙を溜めながらくすくすと笑った。
「いい副官を持ったな。コーヒーが淹れられるだけシンはきっと俺より優秀だよ、ディアッカ。」
「…フォローのつもりですか、それ。」
シンはじろりとアスランに視線を向けたが、そこに以前ほどの刺々しさは無かった。
アスランはそれに気づき、少しだけホッとする。
そしてディアッカは、そんなアスランを急かすように声をかけた。
「で?姫さんは?」
その言葉に、アスランは慌てて顔を上げた。
「そうだな、すまない。早速カガリの所に案内しよう。」
歩き出すアスランを見ながら、シンは少しだけ驚いていた。
この人、こんな優しい顔も出来るんだな…。
シンの知っているアスランは、大抵厳しい表情か思いつめている表情ばかりで。
今のような優しい穏やかな目をしたアスランを初めて目の当たりにし、シンはまた一つ知らなかった何かを知ることが出来たような気がしていた。
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ここで、アスランとシンが再会。
2014,9,27up