「ダストコーディネイター?」
初めて聞く言葉にシンは首を傾げた。
「ああ。聞いた事は…その分だとなさそうだな。」
ディアッカは窓辺に立ち、ソファにはノイマンとシンが向かい合って腰をかけていた。
「無理もないさ。プラントではひた隠しにされている存在なのだろう?」
ノイマンはシンが入れたコーヒーを一口飲み、顔を僅かに顰めた。
「虎のコーヒーよりは飲みやすいだろ?」
意地の悪い笑みを浮かべるディアッカをシンはひと睨みし、ノイマンに視線を戻した。
カーペンタリアに来てひとつ学んだ事。
…どうやら自分には、コーヒーを入れる才能があまり無いらしい。
「今から話す事は、地球側でもプラントでもごく一部しか知るもののいない極秘事項だ。
俺はイザークからお前について全て一任されている。
こっちに来てから今日までのお前を見ていて、俺はこの任務にお前も携わって欲しいと思った。
だが、異存があれば遠慮なく今ここで言ってくれ。
一度聞いちまったら、最後まで付き合ってもらう事になるからな。」
普段あまり目にする事の無いディアッカの真剣な表情に、シンはたじろいだ。
一度聞いてしまえば、後戻りの出来ない任務。
しかもディアッカは、断る権利をもシンに与えてくれている。
要はそれだけ、大変な任務ということだ。
シンはしばらく逡巡し、顔をあげた。
「難しい任務なんですか?それ。」
意外な言葉にディアッカは眉を上げた。
「ん…まぁ、な。」
真っすぐに向けられたシンの赤い瞳がディアッカを映す。
「おれ…じゃない、自分はエルスマン隊の副官として隊長を補佐する為にここに来てます。
自分も何か出来る事があるのなら、その話、聞かせて下さい。」
ディアッカは破顔し、頷いた。
「ああ。今以上にこき使わせてもらうぜ?」
「いいですよ。どうせミリアリアさんと約束してますから。」
「はぁ?!約束?」
途端にぽかんと口を開け唖然とするディアッカに、シンは笑顔を向けた。
ーー不真面目なところもあるけど、きっと一人でぐるぐる考え込むこともあると思うから、そんな時は何でもいいから思ったことを言ってあげてーー
ミリアリアがかつて口にした言葉を、シンはきちんと覚えていた。
「はい。あっちを出る前に話した時に。」
「おまっ…上官の嫁さんとなに勝手に約束なんかしてんだよ!」
「別に浮気した訳じゃないんだから、いいじゃないですか。
しかも、あの時喧嘩してましたよね?隊長。」
そんな二人のやり取りに、ノイマンは思わず吹き出した。
「エルスマン…お前、偉くなっても中身は変わらないな」
「うるせーよ!」
「隊長、あと40分で司令官が来る時間ですけど?」
シンが前向きになるのは結構だ。結構な事なのだが!
今夜、きっちりミリアリア本人から何を約束したのか聞き出してやる!
ディアッカは無理やり頭を切り替える。
「…とりあえずこの件は後日きっちり片をつける。で、シン。本当にいいんだな?」
「はい。任務の内容、聞かせて下さい。」
ノイマンがコーヒーを飲み干し、また少し顔を顰めて息をついた。
「では、ダストコーディネイターについてまず説明しようか。」
シンは視線をディアッカからノイマンに移す。
そして、居住まいを正してノイマンの話に耳を傾けた。
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シンにも協力を仰ぐ事にしたディアッカ。
シンはダストコーディネイターについて何を思うのでしょう…。
2014,9,24up