13, カーペンタリア 1

 

 

 

 
カーペンタリアは、大洋州連合オーストラリア地区のカーペンタリア湾に建設されたザフトの地上最大の基地である。
システムによって管理されたプラントとは気候が異なる為、現在こちらは冬、であった。
艦から降り立ったディアッカは、予想外の寒さにぶるりと身を震わせる。
 
「さむっ!そっか、こっちは冬かよ…」
「確認して来なかったんですか?」
ディアッカに続けて降り立ったシンが、首を竦めるディアッカに呆れた表情を浮かべた。
 
「そんな時間、なかったっつーの。
それでなくても任務で地球に来るの、何年ぶりかだぜ?」
 
プライベートでは何度かオーブに降り立っているものの、あちらとカーペンタリアでは気候が違う。
時間が出来たら、ミリィに頼んでコートの一枚でも送ってもらうかな…。
そんな事を考えていたディアッカの前に、カーペンタリア基地に駐屯する司令官が現れた。
「隊長。」
シンが小声で呟く。
「はいはい。」
ディアッカはすぐさま有能な軍人の顔を作り、美しい所作で司令官に敬礼を送った。
 
 
 
 
時は遡り、カーペンタリアへと向かうボルテール艦内。
 
「良かったですね。ミリアリアさんの発信シークエンス。」
コックピットから降り立ったディアッカを待っていたシンの言葉に、ディアッカは目を見開いた。
 
 
「お前っ!知ってたのかよ!?」
 
 
その慌てぶりに、シンはくすりと笑って頷いた。
「知ったのはついさっきです。ハーネンフースさんから通信があって。
隊長に説明してやってくれって言われました。
今回の件、メイリンのテストだったんでしょ?」
「メイリン・ホークの…テスト?ああ、そんな事言ってたな。」
「メイリン、情報処理のエキスパートですから。
…それ以外の成績があんまり良くなくて、赤服には届きませんでしたけど。」
ディアッカは頷き、ブリッジへと歩き出した。
シンも後に続く。
 
 
「で、うちの奥さんはそのテストに使われた、と。」
「協力してもらった、って言ってましたけど?
あと、敵を欺くにはまず味方から、って言ってましたよ、ハーネンフースさん。」
「よく言うよ、シホのやつ…」
ディアッカはがしがしと頭を掻いた。
 
「本部の格納庫は、無数の監視カメラによってモニタリングされていますからね。
ミリアリアさんは本来あの場所に入る事すら出来ません。発信シークエンスなんて以ての外です。」
「まぁそうだな。一応オーブ軍属とは言え、ザフトから見ればあいつは部外者だし。」
ディアッカとシンは、ブリッジに向かいながら会話を続けた。
 
「メイリンに与えられた任務は、本部のシステムにハッキングしてモニタされている内容を別のものに差し替える事、だったそうです。」
「ハッキング…?」
「ミリアリアさんの侵入がばれないように、穏便かつ迅速、的確にシステムに侵入し処理すること。
これがメイリンに与えられた課題です。」
「だから、あいつが管制に入る事も可能だった、って訳か。」
 
 
まぁ、シホもなかなか気の利いた事してくれんじゃん?
ディアッカはにやりと笑った。
あの意味深な笑顔を見るに、イザークも承知の上だったのだろう。
 
 
「声だけなら、あの短時間の事だしばれないでしょ?
それでなくても、ぱっと聞いただけなら二人とも似たような声してるし。」
「そっかぁ?」
訝しげな表情になるディアッカに、シンは呆れたような視線を送った。
ミリアリアしか目に入らないこの男は、ろくすっぽメイリンの声も覚えていないのだろう。
 
 
「…簡単に言うとそう言う事だそうです。
でも、良かったじゃないですか。ミリアリアさんに見送ってもらえて。」
シンの言葉に、にやり、とディアッカは笑った。
「まぁな。あっちに戻ったらシホになんか奢ってやんねーと。」
 
ーー行ってらっしゃい。気を、付けて。ーー
そう言ってふわりと微笑んだミリアリアを思い出し、ディアッカは全身に気力が漲るのを感じた。
 
 
「とっとと任務終わらせて、プラントへ戻ろうぜ?副官殿?」
 
 
そうしてウインクを一つシンに送り、ディアッカはブリッジへの扉をくぐった。
 
 
 
 
 
 
 
016

えと、11話の種明かしです…。
ご納得の行く説明が出来ていれば良いのですが(汗

 

 

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2014,9,8up