11, 報酬は… 1

 

 

 

 
メイリンが格納庫にほど近い管制室に駆け込むと、そこには既にシホ・ハーネンフースの姿があった。
 
 
「すみませんっ!遅くなりました!」
慌てて敬礼をするメイリン。
ぴょこんとツインテールが跳ねる。
小動物みたい…。
メイリンを前にそんな事を思ったシホだったが、すぐに頭を任務中のものに切り替えた。
 
 
「大丈夫。定刻通りよ。…まぁ、ギリギリだけどね。
それより、テストの準備はいいかしら?内容は理解してるわね?」
メイリンは緊張した面持ちで管制室のシートに座った。
「あの…ハーネンフース副隊長」
「シホでいいわ。」
「えと、では…シホさん。このテスト、いったいどういう意味があるんですか?」
「…そうね、きちんと説明するわ。まだ時間も大丈夫そうだし。」
シホはメイリンの隣に腰を下ろした。
 
 
 
「ジュール隊には、情報処理や解析に長けている人材が不足しているの。
そんな中今後ジュール隊長は、軍と議員活動の両方をこなさなければならない。
忙しさは今までの比じゃなくなるわ。それは分かるわね?」
「はい。」
メイリンは素直に頷く。
 
「一応、うちの部隊はザフトの中でも精鋭、と言われていてね。
ラクス様からも全幅の信頼を置かれているわ。
そのせいもあって、色々と厄介な任務を回されたりもするわけ。」
「厄介な任務…?」
 
「そう、例えば…一番分かりやすいのはハッキングとかかしらね。」
 
「えーっ!?」
メイリンは思わず大声を上げ、慌てて口を押さえた。
「他言無用よ。分かってるわね?」
「は、はい…すみません、びっくりしちゃって…」
「今までは主にディアッカがやってたんだけどね。さすがに一人じゃ限界があるし、彼もそうそう暇じゃないし。
だから、あなたには期待してるのよ。隊長も、私も。
あなたのアカデミーでの成績、見たわ。情報処理、あのアスラン・ザラより上じゃない。」
「いえ、あの、それ以外は全然だったので、たいした事無いです…。
ええと、エルスマン隊長…そういうの、得意なんですか?」
シホはしばらく思案し、頷いた。
「まぁ、ね。ヤマト准将には負けるけど。」
 
ほんわかと柔らかい雰囲気の、ラクスの恋人でもある優しげな顔立ちの准将を思い出し、メイリンは絶句した。
 
 
「じゃあ、始めてもいいかしら?そろそろディアッカと隊長もこっちに来る頃だし。」
シホの言葉に、メイリンは背筋を伸ばした。
私にだって…出来ることがある。
そりゃ『赤』じゃないけど、情報処理なら簡単に負けないんだから!
 
「はい!お願いします!」
 
メイリンの手が、目の前のコンソールにそっと触れた。
 
 
 
 
「ではディアッカ、気をつけてな。隊員達を頼んだぞ。」
ぽん、と肩に手を置かれ、ディアッカは少しだけ驚いた表情でイザークに目をやり、微笑んだ。
「ああ。お前もあんま無理すんなよ?出来る事からやってきゃいいんだからさ。」
「…分かっている。」
 
ディアッカはイザークに向かって優雅に敬礼を送る。
「んじゃ、行ってくるわ。」
 
その所作に似つかわしくない、軽い口調でそう言うとディアッカは黒いブレイズザクファントムに向かって歩き出した。
 
 
 
戦時中に与えられた、自分のパーソナルカラーに染め上げられた機体。
かつての愛機、バスターにも愛着を持ってはいたが、この機体も今のディアッカにとっては馴染みの深いものとなっている。
幾度と無く共に戦火を潜り抜け、ミリアリアを救うために駆って出たこともある、今のディアッカの愛機。
 
感慨深く機体を見上げていると、程なく管制室からアナウンスが入った。
 
 
 
『ブレイズザクファントム、発進スタンバイ。パイロットはコックピットへ。』
 
 
 
ディアッカの体が、突如びくりと強張った。
思わず、格納庫に設置されているモニタで管制室を確認する。
管制を担当しているのは、先日シンと共にジュール隊に配属されたメイリンだ。
隣にはシホの姿もある。
 
 
聞き間違いだろうか?
無意識に、そう感じただけだろうか?
ディアッカは思わずイザークを振り返る。
 
 
イザークは、腕を組み微笑を浮かべながら、ディアッカを見ていた。
 
 
 
まさかーーー!!いや、あり得ないーー!
 
 
 
胸の鼓動が、パイロットスーツ越しにも分かるくらい激しく脈打つのが分かる。
ディアッカは素早くザクに乗り込み、シートに座ると計器類を起動させた。
 
すると、それを待っていたかのように管制室から次のアナウンスが流れる。
 
 
『プラットホームのセットを完了。中央カタパルトオンライン。
気密シャッターを閉鎖します。発進区画、非常要員は待機して下さい。』
 
 
そんなはずはない。
だってここはザフトで、民間人が入れるはずのない格納庫で。
だが、この声はーーーー!!
 
 
 
ディアッカは少しだけ震える手で、コックピット内のモニタを作動させた。
すぐに通信が繋がり、目の前にいくつもの画像が展開される。
格納庫の様子、これから向かう宇宙空間、先程目にした管制室。
 
そして、ディアッカが目にしたものは。
 
 
 
 
『中央カタパルト発進位置にリフトオフします。ーー全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。』
 
 
 
 
メイリンがいるはずの管制席に座り、インカムを付け発信シークエンスを行うミリアリアの姿だった。
 
 
 
 
 
 
 
016

ええ、もうありがち&御都合主義全開な展開ですみません…

 

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