7, 差し入れ

 

 

 

 
「ふあぁ…腹減った…」
 
ディアッカは欠伸をしながら、寮の部屋へと向かい歩いていた。
手には、出発までに整理しなければいけない資料をたんまりと抱えている。
ひとまずこれを部屋に置いて、食堂行くか…。
ミリアリアの作る料理が恋しかったが、アパートに戻るきっかけも思いつかない。
軍服も取りに行かねばならないが、それはミリアリアのいない昼間にすればいい。
 
このままミリアリアの顔も見ないでカーペンタリアに行くことになるのか、と肩を落としながら角を曲がると。
 
 
「シン…?」
 
 
ディアッカの部屋の前には、大きな紙袋を抱えたシンが所在なさげに立っていた。
 
 
 
「お疲れ様です、隊長。」
「あ、ああ。どうした?」
 
先程とは違う、明確な意思を持った眼差しにディアッカは少しだけ驚き、狼狽えながら返事をする。
するとシンがつかつかとディアッカの前までやって来た。
ずい、と紙袋を渡される。
 
「うわ!なんだよ急に?!」
「…俺が言うのも筋違いだし、お前が言うなって感じかもしれませんけど…」
「は?」
 
 
 
「…ちゃんと向き合った方がいいと思います。ミリアリアさんと。」
 
 
 
その言葉にディアッカが瞠目する。
「な、え、お前…会ったのか?あいつに?」
その狼狽えぶりに、シンは思わずくすりと笑った。
さっきのミリアリアを思い出したのだ。
この二人は、似た者夫婦ってやつなのかもしれない。
 
「じゃ、ちゃんと渡しましたから!俺、食堂行くんで。失礼します。」
 
そう言ってさっさと去って行くシンを、紙袋を抱えたままディアッカは見送ることしかできなかった。
 
 
 
 
 
急いで部屋に入り、資料を適当に机に置く。
そしてディアッカは、そっとシンに渡された袋を覗いてみた。
 
「あいつ…」
ディアッカは袋の中身を次々に出し、ラグの上に並べた。
 
 
大小ふたつの保温ポット。
数日分の着替え。
アパートに置いたままだった仕事道具。
そして、ディアッカが何より求めていた、ミリアリアの料理が詰まったランチボックス。
 
 
ランチボックスは大小いくつか入っており、ディアッカは中身を確認する。
一番大きなボックスには、まだほんのり温かい、ディアッカの好物たち。
小さなボックスには、数日なら保存のきくおかずや、ミリアリアがいつも焼いているパンが入っていた。
 
「…こんな食えねえっつーの」
 
ディアッカは苦笑し、まずは大きな保温ポットに手を伸ばす。
思った通り、中身はクリスタルマウンテン。
自分の好みを熟知しているミリアリアが淹れたコーヒーを口にし、ディアッカは深く息をついた。
そして大きなランチボックスの蓋を開ける。
 
中には、たくさんのおにぎりと、色とりどりのおかず達。
肉、魚、野菜がバランスよく含まれている。
ディアッカは添えてあったフォークを手に取り、こんがりとちょうどよく焼けた肉を口にした。
程よい味と、柔らかさが口の中に広がる。
 
 
 
「…やっぱ、うめぇな…」
 
 
 
ぼそりと呟いたディアッカは、小さなポットの蓋を開ける。
中身は、熱い緑茶。
 
おにぎりには、お茶でしょ!
 
ミリアリアのそんな言葉が聞こえた気がして、ディアッカは微笑んだ。
そして、テーブルにランチボックスを置き自分もソファに座り直すと、まずはおにぎりから攻略を開始した。
 
 
 
 
 
 
 
016

いつだってディアッカの事を一番に考えて、一番欲しいものを与えてくれる存在。

それが、ミリアリアなんです。

 

 

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2014,8,22up