プラント、アプリリウスにある古い教会。
第一世代のコーディネーターが地球の教会を模して建設したそこは、色とりどりのステンドグラスが天井に嵌め込まれ、堂内に幻想的な光を撒き散らしている。
華やかな雰囲気とはまた違う、荘厳な空気。
ここで今日、プラントで話題のカップルが結婚式をあげる。
コーディネイターで、ザフト軍将校である、ディアッカ・エルスマン。
その妻で、ナチュラルでありオーブ連合首長国特別報道官である、ミリアリア・エルスマン。
二人は入籍だけ済ませたものの、挙式と披露宴は今日まで執り行っていなかった。
その為、本日この場所にはプラント・地球の重要人物が勢揃いしている。
「ミリアリア!入っていいか?」
そう言うが早く、新婦用控え室のドアを開けたカガリ・ユラ・アスハもその一人だった。
「カガリ?元気にしてた?」
ドアを開けたカガリは、ウェディングドレス姿で振り返ったミリアリアの姿に言葉を失った。
「…ちょっとカガリ、大丈夫?」
「…すごく…綺麗だ、ミリアリア!」
華奢な肩に、繊細なレースのヴェールが映える。
同じく華奢な体を包んだ女性なら誰もが憧れるーーカガリすら例外ではなかったーーふんわりとしたシルエットのドレスは、やはり繊細な意匠を凝らしたレースが何重にも重ねられていて。
ちょこんと覗く、サファイアをあしらった控えめな髪飾りがなんともミリアリアらしい。
脇に置かれたブーケは、イザークの母であるエザリア・ジュールが自身の自慢の花壇から厳選して用意したもの。
ミリアリアのイメージに良く合う、柔らかな色合いの花達が上品に纏められていた。
「ありがと。ドレスに負けてないかな?」
「全然!すごく似合ってる!ディアッカと選んだのか?」
ブンブンと首を振るカガリに、ミリアリアは苦笑した。
「うん。でも、試着の時はいなかったから、実際着てるのを見せるのは初めてね。」
カガリは、はにかむように笑うミリアリアの手を取った。
「ディアッカ、きっと驚くぞ。こんな綺麗なんだから。
…本当におめでとう、ミリアリア。良かったな。」
「うん…カガリ、ありがとう。ごめんね、色々心配かけて。」
「何言ってるんだ!私達は友達だろう?友達は、そうやってお互いを気遣うのが当たり前だ!アスランもそう言っていたぞ?」
ミリアリアの瞳が少しだけ潤んだ。
「私…カガリと友達になれて、本当に良かった。大好きよ、カガリ。」
コンコン。
控え室のドアがノックされ、挙式の準備が整ったことが知らされる。
「さて。行きましょうか。今日は一日よろしくね?介添人さん?」
ミリアリアは涙を振り払うようににっこり笑って、介添人に志願したカガリに手を預けた。
「ディアッカ!タイが曲がっていてよ?」
エザリアがぐい、と胸元を引っ張り、ディアッカは危うくつんのめりそうになった。
「エザリアさん、痛い…」
「男の子がぐちぐち言わないの!はい、これで大丈夫よ。」
ディアッカの装いは、普段の軍服とは別の、白を基調としたザフト軍将校の礼服。
滅多に着る事が無い…というより、支給されたきりクローゼットにしまいこんでいたので なんだか落ち着かない。
「馬子にも衣装だな、ディアッカ。」
「実の父親にまで言われたかねぇよ…」
優雅に足を組みながら、タッドがくすりと微笑んだ。
「すまないね、エザリア。世話をかけて。」
エザリアはドレスの裾を翻し、振り返った。
「何を今更。小さな頃からどれだけ面倒を見ていたと思ってるの?」
「はは、そうだったね。」
ディアッカは居心地が悪くなり、目を泳がせた。
子供の頃から、親同士の付き合いもありエザリアには世話になっていた。
軍に志願した事をタッドに反対され、そのまま家出同然でアカデミーに入学した時は、長期休暇をイザークと共にジュール邸で過ごしていたほどだ。
それでなくても、早くに母を亡くしたディアッカに、エザリアは何かと目をかけてくれた。
「…まぁ、楽しかったけれどね。子供が増えたみたいで。」
「エザリアさん…」
ディアッカはエザリアの言葉に驚き、顔を上げた。
「親友の忘れ形見ですもの。タッドに頼まれなくても面倒くらいいくらでも見るわ。
私はこう見えて、とっても世話好きなのよ?」
イザークと同じ、アイスブルーの瞳を細めて微笑むエザリアに、ディアッカは頭を下げた。
「…色々、ありがとうございました。エザリアさん。」
「どういたしまして。ティナの代わりになれたかはわからないけどね。
これからは、地球にも両親ができたのだから。大事になさいな。」
ディアッカはその言葉に破顔した。
「エザリアさんも、俺の母親みたいなもんですから。これからもよろしくお願いします。」
今度はエザリアが目を丸くする。
そして、ゆっくりと微笑んだ。
「…幸せになりなさい。ディアッカ。ティナもきっと喜んでるわ。」
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いよいよ、結婚式です。
2014,8,5up