33, 発見 2

 

 

 

 
「どうする?今日ここに来たのだって、不備のあった書類出すだけだろ?
ジュール隊のいる棟はだいぶ離れてるし、まさか俺らが本部にいるとは思ってないだろうからまだいいけどさぁ…」
「とりあえず、偽名で出るしかないだろう。オーブまで行けば、あとはどうにでもなる。」
 
カガリの表情が変わった。
 
 
「オーブかぁ…。ナチュラルに紛れて暮らすのも、悪くないよな?」
「ああ。あそこなら身元もばれにくいし、ザフトの基地からも遠い。
気をつける必要があるのはアスラン・ザラくらいか。」
「相変わらずソチは神経質だよな。
どうせあれだろ?オーブのお姫様にべったりなんだろうし、一般市民なんていちいち見てないって。」
ケインは楽観的な口調で笑った。
「まぁな…」
 
 
どうやら、この二人はオーブに移住するつもりらしい。
ミリアリアとカガリは、複雑な表情のままそっと顔を見合わせた。
 
 
「そういや、シホちゃん見かけなかったね。さすがにまだ来られないか。」
くすくす笑うケインの下衆な台詞に、ミリアリアの眉が顰められる。
「ああ…。エルスマンの邪魔が入って最後まで出来なかったのは残念だが、仕方ないな。」
「とか言って。虐めたくなったんだろ?泣きながら、イザーク、とか言ってるの聞いてさ。」
「ふん…。お前だって散々いたぶっただろうが。」
 
 
ドアの向こうから聞こえる下卑た会話に、ミリアリアの体が震えた。
下らない逆恨みと身勝手な欲望で、ひたむきにイザークを恋い慕うシホの想いを粉々に打ち砕いた男達。
 
絶対に、許せない。
 
 
【カガリ、隠れて。】
 
 
目の前に掲げられた画面に、カガリの目が見開かれる。
そしてミリアリアの携帯をさっと奪い取ると、返事を打ち込んだ。
ざっと目を通して、ミリアリアはしばらく考え、何事か打ち込む。
そして目を見交わして頷くと、ミリアリアは身支度を整えて立ち上がった。
 
カガリが慌てて書庫の奥に移動するのを見届けると、ミリアリアは、わざと物音を立てた。
 
 
 
 
「…誰だ!?」
 
ドアが開き、赤服の兵士が顔を出す。
「きゃっ!あ…あの、すみません。人がいるとは思わなくて…」
ミリアリアは驚いた表情を作り、淡いオレンジ色の髪の男を見上げた。
 
「…オーブの…?」
訝しげな表情の男に、ミリアリアは曖昧な笑みで答える。
「はい。あの、総領事館の館長から仕事を言付かっていて…。土地関係の資料を探してるんです。」
そう言って、胸元に抱えた書類の束からメモをひらりとかざして見せる。
 
「どうした?」
 
不意に緑服の兵士が現れ、ミリアリアはびくりと肩を震わせた。
短髪の黒髪に、鋭い黒の瞳。
声から判断するに、こちらがソチ・ギュネイルだろう。
ということは、赤服がケイン・ワットか。
 
「あ…す、すみません!この資料だけ探したら、すぐ退出しますので!」
 
ぺこりと頭を下げるミリアリアを、ソチは鋭い目で凝視する。
「もしかして、オーブの特別報道官…ハウさん?ジュール隊のエルスマンさんの婚約者の?」
ケインの、まるで誰かに説明するような言葉。
ミリアリアは笑顔を作り、頷いた。
 
「はい…。あの、もしかしてディアッカとお知り合いですか?」
 
無邪気な振りをしてそう問いかける。
目の前の男達の表情が一瞬だけ昏いものに変わった。
 
「なぜ、そう思う?」
ソチの低い声。
「そちらの方が赤服を着ていらっしゃるので…。ディアッカも以前、赤服だったでしょう?」
ミリアリアの言葉に、ケインが人好きのする笑顔を浮かべた。
 
「いや、直接の面識はないですよ。
ただ、年末の婚約発表もあったし、コーディネイターとナチュラルの結婚自体が大ニュースだからね。」
「そう、ですか…。すみません、いきなり。」
「いや、こちらこそ済まない。仕事の邪魔をした。行くぞ、ケイン。」
ソチの言葉に、ミリアリアは焦った。
このままでは、逃げられてしまう!!
 
「あ、それじゃシホさんの事はご存知ですか?ディアッカの同僚の。」
 
ソチとケインの表情が、それと分かるくらいに変わった。
 
 
 
資料室内を沈黙が支配する。
「あの…?」
咄嗟に口から出てしまった、あまりにも確信に近い人物の名前にミリアリアは内心の動揺を押し隠し、首を傾げた。
 
「…ああ、知っている。」
「ソチ!」
慌てたようなケインの声。
 
「ケイン。扉をロックしろ。」
ミリアリアの目が、驚きに見開かれた。
 
 
「お前は、どこまで知ってるんだ?ミリアリア・ハウ。」
感情の籠らない、冷たい声。
ミリアリアはその声に底知れぬ恐怖を感じながらも、気丈に声を発した。
 
「…あんた達に答える義理もないわ、そんなの。」
ソチが、くすりと笑った。
「さすが、ザフトの将校を誑かしたナチュラルだな。口だけは達者だ。」
なんとか、ディアッカ達が来るまでこいつらをここに引き止めておかなければ!
下手に動くと、隠れているはずのカガリまで見つかってしまう。
ミリアリアは息を詰め、必死でこの後の行動を考えた。
 
「…さて、こいつどうする?シホちゃんの代わりにやっちゃう?」
いつのまにか自分に忍び寄っていたケインの声に、ミリアリアはびくりと体を震わせた。
「あんた…いつの間に」
「一応さぁ、俺らも赤服だったから。その辺の一般兵よりは多少デキるんだよね。」
「きゃ…」
ミリアリアに出来た一瞬の隙をケインは見逃さなかった。
あっという間に逞しい腕に絡めとられ、羽交い締めにされる。
 
「離して!触らないでよっ!!」
ミリアリアが手にしていた資料が、ばさばさと床に落ちる。
「奥の部屋いこうぜ、ソチ。そっちのが声も漏れづらいだろうし」
「ああ、そうだな」
ミリアリアはその言葉にぞっとした。
このままでは自分も危ないどころか、カガリが見つかってしまう!
 
「いやぁっ!離して!!誰か!!」
 
ミリアリアは声の限り叫んだ。
その瞬間。
 
 
 
鋭い銃声とともに資料室のドアノブが破壊され、ばん!と大きな音を立ててドアが開いた。
「そこを動くな!」
ソチが驚いた表情でそちらを振り返る。
そこには、銃を構えるディアッカとアスラン。
そして後ろには、銃を手にしたイザークの姿があった。
 
「ディアッカ…!」
 
ミリアリアは思わず声を上げる。
 
「銃を降ろせ!でなければこの女を今すぐ撃つ!」
 
ソチの冷たい声が、資料室内に響いた。
 
 
 
 
 
 
 
016

危険な賭けに出たミリアリア。ディアッカ達が駆けつけたものの、まだまだ事態は深刻です。

 

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