「…シホ・ハーネンフースが?」
座り心地の良さそうなソファにゆったりと身を沈めたその男は、珍しく表情を変え顔を上げた。
「ああ。どうやら犯人は以前ジュール隊にいた男達だそうだ。」
「こちらの陣営の人間とは…」
「いや、関係ない。うち一人は父親が軍上層部の関係者らしいがな。」
「ほう…そうか…。」
報告に訪れた男はどこか疲れた様子で、寛ぐ男の向かい側に置かれたソファにどさりと腰を下ろした。
「どうするのだ?介入するのか?」
「いや?今更だろう。拾ってやるほどではなさそうじゃないか。
どうせ中途半端で終わったのだろう?」
「ああ…タッドの息子とその婚約者が発見し、犯人は寸でのところで逃走したらしい。」
「婚約者…?どこまでも出しゃばりなナチュラルめ…。」
男は顔を歪めると、手にしたワイングラスを割れんばかりに握りしめた。
「彼らの入籍ももうすぐらしい。披露パーティーの招待状が自宅に届いていたよ。
君の方へも届いているのではないか?」
「さぁ?…行くのか?」
「…迷っているがね。表面上とはいえまだ私はタッドと付き合いもある。簡単には欠席できまい?
どんな事で疑いの目がかけられるかも分からんしな。」
亜麻色の髪をくしゃりと手でかき混ぜ、溜息をつくと男は立ち上がった。
「しばらくここには来られそうもない。息子の命日も近いのでな。」
「…ああ、かまわんよ。礼拝堂の件が思ったより尾を引いているようだ。
少なくとも数ヶ月は我々も動けん。」
「情報収集に徹するのか?」
「ラクス・クラインの秘書にまた一人スパイを紛れ込ませた。
自然とジュール隊の動向も入ってこよう。」
「…先は長そうだな。」
「かまわんよ。何年かかろうとも。最終的な望みが叶えられるのならな。」
寛いでいる姿勢はそのまま、男の瞳が昏く翳る。
「幸せの絶頂から転落させるのも良い。だが、その幸せに慣れて来た頃に転落させるのもまた一興だろう?」
そう言って男はくつくつと嗤う。
扉に手をかけた亜麻色の髪の男は、その言葉に背筋が凍るような感覚を覚えた。
「…そうかもしれんな。では失礼する。」
「ああ。何かあれば例の回線で連絡してくれ。」
「分かった。」
扉を閉め外に出ると、亜麻色の髪の男は思わず空を見上げ、深く息を吐いた。
「…父さんは、間違っていないよな?」
答えは、もちろん無い。
今度は俯き溜息をつくと、男は待たせていた車に乗り込み去って行った。
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幕間、です。
「あの方」が再び登場しています。
彼らの狙いは、ディアッカとミリアリアなのか?それとも…
正体は、次の長編で明かされる事になります!もうしばらくお付き合い下さい(汗)
2014,7,12up