当事者たちはもちろん、マリューとフラガまでもが言葉を失う中、バルトフェルドが口を開いた。
「当時のメンバー…トール・ケーニヒは先の大戦で戦死、カズイ・バスカークはオーブのオノゴロ戦ののちに脱隊、離艦。
サイ・アーガイルは先の終戦後スカンジナビア共和国に留学、カレッジに復学しそのまま卒業」
そしてミリアリアとキラを見やる。
「そして?お嬢さんとキラ・ヤマトは再び宇宙へ、か」
「ミリアリアさんの経歴が抜けていましてよ、バルトフェルド隊長。彼女はその筋では有名なフォトジャーナリストですわ」
ラクスの言葉に、ディアッカがそれとは分からぬ程度に渋い顔になったのを、フラガは見逃さなかった。
つい、笑みが浮かんでしまう。
ディアッカと目が合い、今度はそれとわかるほどきつい目を向けられる。ふざけてる場合かよ、という所であろうか。
まぁ、その通りだ。
フラガは再びラクスに向き直った。
「ラクス、ここまでは分かったよ。でも、その事実と今回の事にどんな関係があるのか説明してくれる?」
キラが続きを促す。
「はい、もちろん。ミリアリアさんもよろしいですか?」
「ええ」
ミリアリアが頷くのを見届け、ラクスは口を開いた。
「カトー教授は、ご自分の生徒たちに課題と称して各機体の開発をさせていました。とは言っても、本人達はもちろんその事を知りません。全ての決定権は教授です。彼らがしたことはあくまでも、お手伝い、でしょう。どなたがどの機体、と言った形ではなく、例えば…セクションごとの開発なのではないでしょうか」
そう言うと、ラクスはバルトフェルドの方をちらりと見て話を続けた。
「クライン派の諜報員からの報告で、Gシリーズの再開発を目論んでいるのは【ヴァレンタイン】というテログループであることが判明いたしました」
「そいつらの狙いは?」
ほとんど言葉を発することがなかったフラガが口を開く。
「つい最近まで、デスティニープランやらロゴスやらで揉めに揉めてたんだぜ、世界は?よくそいつら、そんな中MS開発なんて…」
部屋に静寂が訪れる。
「…ヴァレンタインは、ブルーコスモスからの派生組織です。その中枢を占めるのは、ロード・ジブリールの失脚を狙っていた一派。だから、彼のピンチなんてどうでもよかったんでしょうね」
ラクスではない声が、フラガの疑問に答える。
それは、ミリアリアだった。
「前盟主のムルタ・アズラエルは精力的に前線に出て指揮を取る方だったようですね。民間人でありながらドミニオンに乗艦していたくらいですし。対して、ジブリールはどちらかと言うと裏で糸を操るタイプ。彼らの中では、アズラエルのような盟主こそ求められていたんだと思います。そのせいかは分かりませんが…」
そこまで言うと、ミリアリアはためらう様子を見せた。
「続けてください、ミリアリアさん」
ラクスが優しく促した。
「ヴァレンタインの構成員の中に、エクステンデッドに関する研究所に在籍していた研究員が、複数存在しているとの情報があります」
フラガの表情が変わった。
ミリアリアは何となくいたたまれない気持ちになりながらも先を続ける。
「私も、詳しくは分からないんです。ただその組織については、以前からターミナルで様々な情報が飛び交っていて、私自身も一度潜入取材…」
ダンッ!!
テーブルが不意に揺れた。
驚いたミリアリアが顔を上げると、怒りに燃える紫の瞳がそこにあった。
ディアッカが、怒りのあまりテーブルの足を蹴ったのだ。
…怒って、る?ディアッカ?
ミリアリアは訳がわからない。
「お前…いったい…」
地の底から響くようなディアッカの声。
ますます混乱したミリアリアは、きょとんとディアッカを見つめてしまう。
「ディアッカ!後にしろ!」
イザークの鋭い声に、ディアッカは我に返った。
大きく息をつき、気持ちを落ち着ける。
こいつは…潜入取材って何だそれ!?どこのスパイだ!?分かってんのか?
過去の女、忘れたはず、そんな思いはこの時、遥か彼方に飛んで行っていた。
再度、息をつく。
やり場のない焦燥感と怒りは、まだ治まらない。
だが今は、彼女の話を最後まで聞かなければ。
そんなディアッカを心配そうにちらりと見やり、再びミリアリアが語り始めた。
「さっきもお話したとおり、詳しいことは私もわかりません。今お話しした事がターミナルを通じて私が知り得た最新の情報です。それと…あの…」
ミリアリアは一度話を切った。
ここから先は、本当に言いたくなかったから。
「ラウ・ル・クルーゼがフレイに持たせたニュートロンジャマーキャンセラーに関するデータと同じものを、彼らが所持しているらしいんです。つまり、前盟主のアズラエルが手に入れたデータを彼らが何らかの方法で入手し、今回の再開発に活用していると言う事です」
そこまで言って、ミリアリアは紅茶のカップに目を落とす。
誰のせいでもない、けれど。
クルーゼとあまりにも因縁の深いフラガ。
そして彼の元で戦っていたイザークとディアッカ、そしてアスランの方をどうしても見ることができなかった。
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2014.6.4up
2017.9.23改稿