26, 恋心 1

 

 

 

 
「おかえり。シホさん、何だったの?」
端末に向かっていたミリアリアが振り返り、ディアッカに笑顔を向けた。
 
「んー。もしかすると、今回の犯人がわかった、かも?」
「え?!」
「何だって?」
ミリアリアとカガリが驚きの声を上げる。
キサカも驚いた表情でディアッカを見ていた。
 
 
「キサカさん。イザークに連絡を取っても?」
「ああ、構わん。我々がここから移動するまで、君は自由にしていてくれ。」
ディアッカは頭を下げると、ミリアリアに勝手に動かないよう念押しして部屋を出て行った。
 
 
 
「イザーク!こっちだ!」
本部内のカフェ。
ディアッカはイザークの姿を見つけ、手を上げた。
「…すまない。待たせたか?」
「いや、俺も今来たとこ。国防委員の奴ら、何だって?」
「状況説明を求められただけだ。…ところで、なぜ俺の行き先を知っている?」
 
不思議そうな顔のイザークに、ディアッカはシホから連絡があったことを伝えた。
シホの名を聞かされて、イザークの表情が陰る。
 
 
「ディアッカ。聞きたい事がある。」
「…何だよ?突然。」
イザークは、カフェの入口に目を向けながら、いくら考えても分からない疑問を口にした。
 
 
 
「…お前は、いつ、どんな時にミリアリアを好きだと気づいた?
どんな時にミリアリアにキスがしたいと思う?
自分のせいでミリアリアが泣いたら、どうする?」
 
 
 
「…は?」
 
ディアッカは、顎が外れんばかりに開いてしまった口を閉じる事も忘れてイザークを見つめた。
イザークは、相変わらずぼんやりとカフェの入口を見ている。
まるで、誰かを待っているように。
 
 
ああ、そうか。
 
ディアッカは、晩熟な親友の姿を見やる。
そして、自分もかつてミリアリアに対して似たような事で悩んでいたのを思い出し、くすりと笑った。
 
 
 
「好きだと気づいたのは、俺がAAにいた頃。最初はなんでこんなに気になるのかも分かんなかった。
意識し始めたのは、お前に会った後、ヴェサリウスが堕ちた時、かな。
一人になりたかったはずの俺のとこに、ドリンク持ったあいつが来てさ。隣にいてぽつぽつ話してくれた。
なんでかその時の俺は、あいつがナチュラルとかそんな事考えずに、感じたままを話して、聞いてもらっててさ。
あいつ、俺の事慰めて、励ましてくれた。
それからちょっとして、それまで漠然としか分からなかった感情が、急に形になった。」
 
 
 
イザークは、こちらを見ない。
ただ、ディアッカの言葉を聞いている事は分かった。
 
 
「キスがしたいと思うのは…そりゃいつだってしたいさ。好きな女なんだから。
でも、そうだな…強いて言えば、好きって感情が言葉だけじゃ表現出来なくなった瞬間、かな。」
 
 
イザークが不思議そうな顔でディアッカを振り返った。
「言葉だけじゃ、表現出来ない…?」
 
「そ。まぁそんな難しく考えなくてもいいんだって。キスもセックスも、根本的には愛情表現なんだし?」
「なっ…!」
イザークの顔がぱぁっと赤くなる。
ディアッカは構わず先を続けた。
 
 
「で。泣かせた時、だっけ?…そりゃ、ケースバイケースだよな。
自分が悲しませちまったり、悪いことをしたと思えば謝る。そうでないなら話し合う。
…まぁ、いつもすんなり行くわけじゃないぜ?
意地張ったり、自分の否を認められずに悩むことだってある。俺達だってそうだし。」
 
 
「それだけ、なのか?」
 
 
イザークが今度は意外そうな顔をする。
 
 
「ああ。案外それだけでも通じるもんだぜ?
ただ、取り繕ってちゃ意味ねぇけどな。
シホはあれで鈍感だったり頑固なとこがあるから、明日にでもちゃんと思ってる通りの事、話してやれよ?」
「ああ…って、ディアッカ!?」
「あ、やっぱビンゴ?」
ディアッカはにやりと笑って、コーヒーを飲み干した。
 
「貴様っ!」
 
「ほら、紅茶が冷めんぞ。
俺もさっさとミリアリアんとこ戻りたいんですけど?隊長殿?」
イザークは、真っ赤な顔でディアッカを睨み付けると、ふん!とばかりに紅茶に口をつけた。
 
 
シホとイザーク、ねぇ。
こりゃ、ある意味姫さんとアスラン並に厄介な二人だな…。
そこまで考えて、ディアッカは本題を思い出し、イザークに話を切り出した。
 
 
 
 
 
 
 
016

イザークの真意が分からず混乱し、きつい言葉をぶつけてしまうシホ。

シホへの気持ちをうまく説明できず、泣かせてしまい戸惑うイザーク。

ディアッカがイザークに語った飾らない真摯な言葉に、ミリアリアへの愛情を感じます。

そしてイザークも、やっとシホへの想いに向き合う決意をします。

 

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2014,7,8up

2015,3,16台詞追加・改稿