17, 女傑 1

 

 

 

 

ロイエンハイムの登場で、やっとイワン夫妻から解放されたディアッカは溜息をついた。
 
 
「適当に切り上げれば良いものを。
婚約者を放ったらかしすぎだぞ、ディアッカ。」
「しょうがねぇじゃん。仕事の付き合いだってあるんだろ?
それに、変に相手してこいつにとばっちりが来るのも勘弁だし?」
 
 
自分に回された腕に力が入るのを感じ、ミリアリアはほんのり顔を赤らめた。
『さあミリアリア、しっかり旦那を捕まえておけよ。また別の狸に捕まると面倒だ。』
『ここにいるのは人間です。…とりあえず、ご忠告を無駄にしないよう努力します。』
ミリアリアは気を取り直すと、ロイエンハイムをディアッカに引き合わせた。
 
 
「ディアッカ。オズワルド・ロイエンハイムさんよ。
さっきも言ったけど、お父様の古いお友達で、私も昔仕事でお世話になった方なの。」
『…初めまして。ディアッカ・エルスマンです。』
ディアッカの口からドイツ語が飛び出し、ミリアリアは目を見張った。
「ディアッカ、ドイツ語話せたの?」
そう驚くミリアリアに、ディアッカは微笑んだ。
「挨拶程度だけ。その代わり会話は全然だけどな。」
 
『…タッド、そろそろ私たちが邪魔者になりそうだ』
 
二人の様子に、ロイエンハイムは微笑んでタッドを促した。
「ディアッカ、ミリアリアを頼むぞ。私達は他の客に挨拶をせねば。」
「ああ、分かった。」
 
『あ、ロイエンハイムさん、今日はありがとうございます!どうか楽しんで行って下さいね。』
 
慌てて声をかけるミリアリアに、ロイエンハイムは微笑み、髪飾りのついた頭を撫でた。
 
 
『幸せになりなさい、ミリアリア。君なら大丈夫。
何かあれば、いつでも連絡するように。妻と待っているよ。』
『…はい!奥様にもよろしくお伝え下さいね。』
流暢なドイツ語で答えたミリアリアは、嬉しそうににっこりと笑った。
 
 
 
パーティーはなかなかの盛況だった。
ミリアリアはディアッカとともにたくさんの客に引き合わされ、笑顔で挨拶を交わした。
中には少しだけ悪意のこもった質問もあったが、ロイエンハイムとの会話ですっかり緊張の解れた彼女の敵ではなかった。
何より先程の流暢なドイツ語での一幕が、ナチュラルであるミリアリアへの周囲からのイメージを自然と変化させていた。
 
 
「ディアッカ、お久しぶりね。」
「…エザリアさん!」
ミリアリアが声のした方を振り返ると、銀髪をさらりと揺らしながら、美しい妙齢の女性が微笑んでいた。
「来てくれたんですか?親父からは何も聞いてなくて…」
「タッドですもの。仕方ないわ。で、そちらがあなたの見初めたお嬢さん?」
ディアッカはミリアリアを振り返った。
 
 
「ミリィ、こちらはエザリア・ジュール。…イザークの母君だ。」
 
 
ミリアリアの碧い瞳が真ん丸に見開かれた。
 
 
 
「イザークは?一緒じゃないんですか?」
「一緒よ。でも、なんだか気がかりなことがあるらしくて、外で電話をしてから来るそうよ。」
エザリアはそう言うと、イザークと同じアイスブルーの瞳でじっとミリアリアを見つめた。
 
「ふふ、緊張してる?」
 
「…いえ、少し驚いてしまって。失礼しました。」
よく見れば、エザリアのふとした表情やしぐさがイザークと同じなことにミリアリアは気づいた。
 
「 …綺麗な瞳ね。とても力強い。
ナチュラルにも、こんな綺麗な色の瞳を持つ子がいるのね…」
 
 
ミリアリアはその言葉に、ふと思い出す。
エザリア・ジュール。
先の大戦で、アスランの父であるパトリック・ザラ議長の腹心として、ジェネシスの発射にも立ちあった女傑。
強硬派としてナチュラル排斥を声高に叫び、ザラ議長の失脚と同時に一時期軟禁状態にあったと言われている。
 
「…母譲りなんです、私の碧い瞳。髪は父譲りなんですが。」
 
不意に口を開いたミリアリアを、エザリアは少しだけ驚きながら見つめた。
「あとは、琥珀色や、ディアッカに似た紫、青みがかった灰色、茶色、水色、黒…。
ナチュラルにも、色々な瞳の色があります。髪も。」
 
 
未だナチュラルに偏見を持っているかもしれないエザリア、そして一部のコーディネーター達。
でも、瞳や髪の色がそれぞれ違うように。
プラントを、コーディネーターを排斥しようとしたナチュラルが全てではない、それだけはどうしても分かってほしくて。
 
 
「…申し遅れました。はじめまして、ミリアリア・ハウです。よろしくお願いします。」
ミリアリアは、エザリアに向かってふわりと柔らかく微笑んだ。
 
 
 
 
 
 
 

016

ついに登場、エザリア様!

ミリアリアの想いは、エザリアに通じるのでしょうか…

 

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