4,脱出 1

 

 

 

ミリアリアは絶望に閉じていた目を開いた。
「くそっ!出せ!」 
男がミリアリアを押さえつけ、座席の奥へと押しやる。
しかしミリアリアの目には、拳銃を構えたディアッカの姿がはっきりと映っていた。
 
「いや!ディアッカ…!んぐ…っ」
 
必死でディアッカの名を呼ぶミリアリアの口を、後ろから大きな手が塞いだ。
そしてそのままドアは閉められ、シホとディアッカの目の前で車はブレーキの音を軋ませ走り去った。
 
 
 
「イザークに連絡を取れ!追いかけるぞ!」
シホは厳しい顔でディアッカを振り返った。
「足もないのにどうやって?今からじゃ…」
『ディアッカ!』
シホとディアッカの耳に、イザークの声が聞こえた。
『ラクス様はキラとアスランが無事保護したと連絡があった!』
シホが目を丸くする。
ディアッカは忌々しげに答えた。
 
「あのキラが、丸腰でラクス嬢を歩かせるわけねぇんだよ。」
『…まぁな。とにかく次はミリアリアだ!こちらでも逃走車を確認した。
アスランがそこに車で向かっている!それを使え!』
「了解。シホを借りるぜ?」
『分かった。シホ!ディアッカの援護につけ。いいな?』
「…了解しました!ですが隊長、この礼拝堂に爆弾が仕掛けられているとミリアリアさんが!」
『何?!』
「なんだって?!」
「おそらくそのせいで、彼女は人質として甘んじていたのだと思います。そちらの捜索を!」
『了解した。すぐに爆弾処理班を手配する!』
 
シホはディアッカに向き直った。
「行きましょう。エルスマン、彼女の想いを無駄にしないで!」
低いエンジン音が近づいてくる。
二人は通りに向かって駆け出した。
 
 
 
 
 
「きゃああっ!」
ミリアリアは悲鳴をあげた。
車は先程から蛇行運転を繰り返している。
「どうなっている!?」
「さっきの一撃でタイヤがやられたらしい!くそっ、ハンドルが…」
「エルスマンの息子め、どこまでも…」
男は悔しげに呟くと、ミリアリアを忌々しげに睨みつけ、手を伸ばした。
 
「触らないで!」
 
男は、恐怖に怯えるミリアリアの軍服を掴むと、力任せに引きちぎった。
ボタンが飛び、破れかけたアンダーが露わになる。
「おい、こんな時に何やってんだ!」
「うるさい!このナチュラルさえいなければ…」
「よせ!あの方が何と言うか…」
「うるさい!」
仲間の声に、男はますます激昂してミリアリアを座席に押し倒した。
 
「殺してやる…この女を殺して、エルスマンの息子の前に突き出してやる…」
ミリアリアは恐怖で声を上げることもできず、ただ男を見上げる。
 
ドォン!
突然車が大きく揺れた。
 
「うわぁ!」
男が体勢を崩し、座席に転がった。
ミリアリアの目の前に、男の胸がある。
今の衝撃のせいだろう、爆弾のスイッチボタンが内ポケットから顔を出していた。
ミリアリアはなおも揺れる車内の混乱に乗じ、咄嗟にそれを抜き取る。
 
「何をする!」
 
男はミリアリアの行動に気づき手を伸ばすが、ミリアリアは必死でそれをかわし続けた。
「この…ナチュラルがぁ!」
「いやあぁっ!離してっ!」
男がミリアリアの手を掴んだ瞬間、ひときわ大きい揺れが車内を襲う。
反対車線にはみ出した車は、ガードレールに車体を擦り付けるようにしてそのまま止まった。
 
 
 
その光景は、逃走車を追っていたディアッカ達の目にも入っていた。
「シホ、援護を!アスラン行くぞ!」
「ああ!」
ディアッカは、アスランとともに車を飛び出した。
シホもタイミングを見計らい、後から走り出る。
 
その時、車のボンネットから突然炎が上がった。
 
 
 
 
 
 
016
 
ミリアリア、危機一髪!
 
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2014,6,22up