ディアッカの腕にぎゅっと掴まったままのミリアリアが、ひく、とひとつ嗚咽を漏らした。
「落ち着いた?」
「…うん。」
そう言いながらも、ミリアリアはディアッカから離れようとはしなかった。
泣いたせいで腫れてしまった瞼に、ディアッカは優しく唇を落とす。
そしてミリアリアの手を取り、うっすら赤く跡が残る手首にも、そっと唇を触れさせた。
「…ごめんな、これ。」
「…いいの。そのうち消えるし大丈夫。」
俺が、ミリアリアに付けた傷。
もう二度と、こんな事があってはならない。
守りたい。
出来ることなら、ずっとそばに置いておきたい。
ディアッカは、意を決してミリアリアに向き直った。
「…やっぱさ、一緒に、住まねぇ?」
「え?」
ディアッカはミリアリアの肩に手をかけ、その驚いた顔をじっと見つめた。
「婚約発表も済んだ、ってのもあるけどさ。
それよりも、俺はもう、お前と別々の場所に帰りたくない。」
「ディアッカ…」
ミリアリアはディアッカを見あげた。
「記憶がない間、お前、うちの別邸に一緒にいてくれただろ?
あの時、何だかんだでお前の事待ってたんだぜ?俺。」
ミリアリアはぽかんと口を開けた。
「う、そ…。そう、なの?」
「そ。まぁ最初はともかく、さ。今日はいつ帰るのか、ちゃんと飯食えたか、いつ寝てんだろ、とか。
そんな事ばっか考えてた。」
ディアッカは、涙で赤くなってしまったミリアリアの頬に指を這わせ、微笑んだ。
「それと。」
「…それと?」
「俺、お前の作る飯、毎日食いたい。」
ミリアリアは、なぜかきょとんとディアッカを見上げていて。
そして、じわり、と碧い瞳にまた涙を滲ませた。
「おっ、おい!なんだよ!」
「ディアッカ…何にも言わなかったから、ひっく、おいしくないんだと、思ってた…」
ディアッカは慌てて弁解した。
「違うって!俺、毎回完食してたし!イザーク達も褒めてたろ?!」
「イザーク達は優しいから、ひく、不味いなんて言わないわよ…。
ディアッカだって、昔から出されたものは残さないじゃない…。」
「う、や、そりゃそうかもしれねぇけど!でも、お前の飯はマジで美味いの!俺好みなの!」
「…そう、なの?」
「そう!そうなの!ああもう!」
ディアッカはまた嗚咽を漏らし始めたミリアリアを抱き寄せた。
「…あん時は、意地はってて。
素直に美味いって言えなかったんだって。いいかげん気付けよな?」
「っく、…うん。」
ミリアリアは嗚咽を堪え、ディアッカの背中に細い腕を回す。
「…で、返事は?」
そのままの体勢で、ディアッカがぶっきらぼうに言った。
「返事?」
「…結構、一大決心して言ったんだぜ?一緒に住まねぇ?って。」
ミリアリアが、ディアッカの胸に顔を埋める。
「…今年中に、引っ越し、っく、出来る、かな?」
ディアッカは、再びミリアリアの肩に手をかけた。
「ミリィ?それって…」
ミリアリアは、子供のようにごしごしと洋服の袖で涙を拭って、ふわりと笑った。
「うん。一緒に、住もう?…きゃあっ!」
その言葉を聞いて、ディアッカは思わずミリアリアをそのままベッドに押し倒し、ぎゅっと抱きしめた。
「ちょっと!危ないでしょ!」
「…ほんとに、一緒に住む?嘘じゃねぇよな?」
「こんな大事なこと、嘘なんてつかないわよ。」
ミリアリアは、すぐ近くにあるディアッカの顔を見て、微笑んだ。
「あ、でもディアッカのアパート、キッチンに調理器具、ほとんどないわよね…」
ディアッカも、はにかんだような笑顔になる。
「二人で揃えてけばいいじゃん。足りないものはさ。
まぁ、俺はミリィとベッドがあれば当面なんもいらねぇけど?」
ミリアリアは、恥ずかしそうにディアッカを見上げ。
「私は、ディアッカがいれば、当面何もいらないけど?」
馬鹿!と怒られるかと思ったディアッカは、いたずらっぽく笑うミリアリアの言葉に目を丸くし。
晴れやかな笑顔を浮かべて、婚約者にとびきり甘く優しいキスを送った。
甘い・・・(笑)でも、幸せな二人の様子が書けて楽しいです!
ちなみに、公式ではどうか知りませんが当サイトのミリィは、お料理がそこそこ得意、です。
2014,6,18up