ミリアリアの碧い瞳が、大きく見開かれた。
そして俯き、ゆっくり目を閉じ、再び開いた。
顔を上げて、ディアッカをじっと見つめて。
「それならそれで、仕方がないと思う。だって、私はたくさんあんたにひどいことを言ったし、したもの。でも、それでも私はディアッカが好きだし、大切なことに変わりはないわ。迷惑だとは思うけど、これだけは譲れない。たくさん考えて、もう迷わないって決めたから」
ああ、あの時の瞳の色だ、とディアッカは思う。
オーブを守るために戦う、と言った時の、あの瞳。
「…お前と連絡が取れなくなってから、もうやめよう、って思ってたんだ」
ぽつりとディアッカが呟いた。
「ナチュラルとコーディネイターの恋愛なんて、どうせうまくいかない。俺はお前にとって、重荷にしかならない。アスランと姫さんだって別の道を選んだ。だからもう忘れよう。それがお前の為だ、って。そう思うことにした」
視界の隅で、ミリアリアが俯くのが見えた。
泣いたらダメ。
ミリアリアは必死に涙をこらえる。
決心したとおり、素直に、自分の想いをディアッカにぶつけた。
感情のままに言葉を選ばずわめき散らしてしまったけれど、後悔はしていない。
だがどこかで、まだミリアリアには甘えた感情があった。
ディアッカは、自分を受け入れてくれる――。
しかし、ディアッカの言葉を聞いて、ミリアリアは惨めな気持ちになった。
あれだけのことをして、まだ彼が自分を好きでいてくれているなんて、どこまで自分は思い上がっていたんだろう。
馬鹿な、勘違い女。
でも、それでも。
好きなのだ、ミリアリアは、ディアッカが。
だから、泣いてはいけない。
ディアッカを困らせたらいけない。
そう思って、必死に涙をこらえるミリアリアの耳に、再びディアッカの声が飛び込んできた。
「結局俺は、死んだ恋人には勝てない。だから諦めよう。そう思ってたんだ」
ミリアリアはゆるゆると首を振る。
「ちが…」
そんなことない。
そうじゃ、ないのに。
ミリアリアの目から、涙が零れた。
「けどさ、…やっぱ、ダメだったわ」
ディアッカの口調が不意に変わった。
「あれから、忘れたことなんてなかった。ユニウスセブンが地球に落ちた時は、お前を探しに行きたくてしょうがなかった。
数え切れないくらい女だって紹介された。でも、一人も頭に残ってねぇ」
ミリアリアがゆっくり顔を上げる。
あんなに思い焦がれたディアッカの顔なのに、なぜかユラユラぼやけて見える。
「弱っちぃナチュラルのくせに、無鉄砲で意地っ張りで照れ屋で。でも俺の知っている誰よりもしなやかで強い心を持っている、それでいて底抜けにお人好しの優しい女。コーディネイターの俺が、唯一尊敬して認めた女。それがお前だ。ミリアリア・ハウ」
いつの間にか膝を崩してへたりこむミリアリアの前に、ディアッカが膝をついていた。
「俺も、もう迷わない」
そして、背骨が軋むくらいにきつく抱きしめられる。
「好きなのか嫌いなのか、って言ったよな?ミリアリア。これが答えだ」
ミリアリアの目元に暖かい唇がそっと触れ、すぐに離れる。
そこで初めて、ミリアリアは自分が泣いていることに気づいた。
「俺もやっぱりお前が好きだ。誰よりも」
昔より大人びた、精悍な男の体にミリアリアも腕を回した。
想いをありったけ込めて、ぎゅっと抱きしめる。
「私も、好き…。ディアッカ…」
そうしてミリアリアは、自分からそっとディアッカに唇を重ねた。
ディアッカが驚いたように目を見開き、そして優しく微笑んだ。
「ごめんなさい、悲しい思い、させて…」
「俺もごめんな。寂しい思い、させた」
泣き顔を見られたくないのか、恥ずかしそうに俯きながらそれでも言葉を続けようとするミリアリアの唇を、今度はディアッカが塞いだ。
二年ぶりのキス。
二人は一つに溶け合うかのように、何度も深いキスを交わし合った。
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2014,6,7up
2015,2,4台詞一部改稿
2017,9,23改稿