10,想い 1

 

 
 
 
静寂が、非常階段を包んでいた。
ディアッカは、ミリアリアをただ見つめて、今しがた聞いた言葉の意味を必死で探る。
いや、探るべくもない。
 
 
『私は、やっぱりディアッカが好きなの』
 
 
確かに彼女はそう言った。
ディアッカはやっとの事で言葉を発する。
「お前…いや…え…」
俺は、何を言ってるんだ?!
しどろもどろなディアッカを、ミリアリアがじっと見上げる。
 
「やっぱり、嫌われて当然よね…」
「ミリアリア、あの」
 
ディアッカが何か言おうとしたが、自覚のないまま焦って混乱しているミリアリアにはそれに気づく余裕がない。
 
「私、だめなの。ディアッカの前では全然素直になれなくて。一方的に振った形になっちゃって、本当はずっと謝りたかった。ディアッカの気持ちに甘えて、酷いことばかりしていたから。私」
「えと、ミリ…」
「ほんとはずっと後悔してたの。でも今更恥ずかしくて、どうすればいいかわからなかったの。ジャーナリストになれば、ディアッカの隣で一緒に戦えると思ったけど、やっぱり失敗ばかりで…。でも、私にも力が欲しかったの。ディアッカに認めて欲しかったの!」
 
息をすることも忘れたかのように、ミリアリアは思いの丈をぶちまけ続けた。
それが、焦りと緊張のあまり支離滅裂になっていることにも気づいていない。
かたや、口を挟めず告白を聞く一方だったディアッカは、息を切らせて黙り込んだミリアリアの発したある言葉に衝撃を受けていた。
 
 
「俺に、認めて欲しかった…?」
 
 
ディアッカがやっと発した一言で、ミリアリアもはっと自分を取り戻した。
 
「…トールが戦死して、大切なものをなくすことがすごく怖かった。だから、大切なものを持つのはもうやめようと思ったの。始めから持ってなければ、無くすこともないでしょ?でも、ディアッカっていう、絶対なくしたくない大切なものを見つけたから。だから、守りたかったの。頑張って強くなろうと思って。私に出来ることで、ディアッカを守りたかったの!だから…」
 
そこまで言って、しゅんと項垂れるミリアリアをディアッカは呆然と見つめた。
こいつは、自分が何を言っているか理解しているんだろうか。
かよわいナチュラルで、それも成り行きで軍人になったくせに。
小さくて華奢で、すぐ泣くあまのじゃくで強がりな女。
それが、俺のことを、守りたいって?
 
「ミリアリア。一つ聞いていいか?」
 
感情のこもらない声でディアッカがそう尋ねると、ミリアリアはびくりと体を震わせ、顔を上げた。
 
 
「俺が、もうお前の事をなんとも思ってないって言ったら、お前どうする?」
 
 
 
 
 
 
 
016

 

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