15, 今、出来ること

 

 

 

 
「だから…それが何だって言うんだよ」
微かに震えた声に、男はますます意地の悪い笑みを深めた。
 
「お前みたいなエリート様は知らないかもしれねぇけど、俺たちは何度もここに足を運んでる。それでも復興が進まないのは、ここにいるナチュラルどもが俺たちの助けを拒んでるからだ。せっかく手を差し伸べてやってるのに、コーディネイターってだけで化け物を見るような目で見られて、いい気分になれるやつがいると思うか?」
「…だから!それはあんた達のそういう上からな態度が!」
 
 
「だったらお前が交渉でも何でもすりゃいいじゃねぇか。偉そうに。デスティニーの前はインパルスだっけ?それに乗ってたんなら、ここをこんなにしたのはお前でもあるんだろ?」
 
 
シンは呆然と言葉を失い、立ちつくした。
ここを壊したのは、自分。
インパルスを駆り、デストロイと戦って、フリーダムと戦って。
そう、目の前の男の言う通り、ここをこんなにしてしまった原因の一端は自分なのだ──。
 
 
 
 
「ふーん。そういう現状な訳なんだ、ここ」
 
 
 
 
低くて良く通る声に、赤服の駐屯兵達だけでなくシンも意表をつかれ振り返った。
そこには白服を身に纏ったディアッカが、腕を緩く組んで立っていた。
 
「エ…エルスマン隊長!」
赤服の駐屯兵達が目を丸くし、居住まいを正す。
元ジュール隊副官、現エルスマン隊隊長であるディアッカ・エルスマンの名は色々な意味で有名らしい。
シンはどこか呆然としたまま、ディアッカを見つめた。
 
 
「お前らの苦労は今の話でもよく分かった。なかなか進まない復興支援に歯がゆくなる気持ちも、な。要はそういう事だろ?」
その言葉にシンは思わず落胆の表情を浮かべた。
なぜ、こんな奴らの言葉を肯定するのだろう。そう思ったからだ。
 
 
「…あのさぁ、子供の頃、自分が散らかしたものは自分で片付けろって親に言われなかった?」
 
 
シンを含めたそこにいる全員が、あまりの脈絡の無い言葉にぽかんとした顔になる。
その反応にディアッカはくすり、と笑いながら言葉を続けた。
 
「確かにここでこいつはMSに乗って戦った。俺だって当時プラントでその様子を見てたし、散々報道だってされた。そんな事みんな知ってる事だ。だろ?」
「は…はい!そうでありますが…」
 
ディアッカの真意を汲み取れないのだろう。
訝しげな顔の駐屯兵が律儀に返事をする。
「ここを散らかしたのは、インパルスに乗ってたこいつ。だからお前が片付けろって、そう言いたい訳?」
「いえ、その…」
狼狽える兵士達。
ディアッカの表情が変わった。
 
 
 
「こいつやミネルバにそれをさせたのは、俺たちが所属するザフトだ。こいつだけに責任があるわけじゃない」
 
 
 
今度は、シンが目を丸くする番だった。
 
「俺たちは軍人だ。そしてこいつは軍人として命令を受け、ここで戦った。お前らが当時やってた事と何が違う?まさか赤服のくせに任務の一つもこなした事がない訳じゃねぇだろ?」
ディアッカの鋭い言葉は続く。
「こいつはこの街を壊したくてMSに乗っていた訳じゃない。ザフトの兵士として戦った結果、今のこの惨状がある。でもそれはこいつだけのせいじゃなくて、連合軍も俺たちも同じように受け止めるべき問題なんじゃねぇの?」
 
シンに絡んで来た駐屯兵達は、返す言葉も無く立ちつくす。
いつのまにか、周りには他の兵士達も集まって、ディアッカの言葉に耳を傾けていた。
 
 
 
「差し伸べた手を振り払われて、もやもやする気持ちは分かる。悔しい気持ちもな。だが、そこで思考を止めるな。思うように事が進まないなら、今出来る事からして行けばいい。ザフトの兵士であるなら、戦争をひとごとだと思うな」
 
 
 
幾多の危険や困難を乗り越え、二度の大戦を生き抜いて来たディアッカが口にする言葉の重みに、そこにいたザフト兵達は静まり返った。
 
 
 
「…って事で、各隊の責任者は俺んとこへ。こっちの責任者とのこれまでのやり取り、簡単でいいから報告して?シン、MSでとりあえず許可おりてるとこの瓦礫撤去、指示全般任せていいか?」
 
ディアッカからいきなり話を振られ、シンは弾かれたように顔をあげた。
「…はい。いけます」
「OK。じゃ頼むわ」
ひらり、と手を振ってその場から立ち去るディアッカに、それまで成り行きを見守っていた各隊の責任者達が慌ててついて行く。
 
 
今出来る事から──。
 
 
「すみません!各部隊のMSパイロットは集まってもらっていいですか!」
 
シンはディアッカの言葉を噛み締めながら、声を張り上げた。
 
 
 
 
 
 
 
016

ディアッカの言いたい事、きちんと皆様に伝わっているでしょうか…
拙い文章力で申し訳ない限りです。
 

 

 

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2014,9,17up