14, 任務 2

 

 

 

 
MSを操るシンの目に、かつてデストロイ、そしてフリーダムと戦ったベルリンの姿が映った。
「…ステラ…」
シンの脳裏に、華奢な金髪の少女の姿がよぎった。
 
 
地球連合軍によって、兵器として体を改造されてしまったステラ。
自分の腕の中で最期に微笑み息絶えたステラの姿を思い出し、シンは操縦桿を握りながらついぎゅっと目と瞑った。
 
両親にマユ、ステラ、そしてレイ。
この地球で、あの戦争でシンがなくした大切なものたち。
どうして、何の為に、誰のせいで──。
それをずっと考え、シンは家族を護ってくれなかったオーブを、ステラを殺したフリーダムを憎んだ。
己の力のなさ、非力さをも憎いと思った。
そして、強くなりたい、大切なものを守る力が欲しいと願い、自分を助けてくれた人の力添えもありプラントに渡って、ザフトの軍事アカデミーに入学した。
 
それからは、あっという間だった。
無事アカデミーを卒業し、念願だった赤服を纏い同期の友人達と共にミネルバに配属された。
新鋭機のインパルスを与えられ、「敵」と戦って。
だが、シンの信じたものは無惨にも打ち砕かれ、二度目の大戦は終わった。
いくつもの隊を転々として、そしてどの隊でもシンは周りと打ち解けられず孤立し、ルナマリアとも距離を置いた。
 
 
ジュール隊への異動命令を受けた時、シンは内心酷く驚いた。
厄介者の烙印を押された自分が、なぜザフトの精鋭であるジュール隊へ?
隊長であるイザーク・ジュールは二度の大戦を生き抜いた歴戦の勇者。
副官であるディアッカ・エルスマンもまた、噂では数奇な運命を辿り一度は緑服へと降格になったものの、なんと敵であったナチュラルの女性を妻として娶った男である。
それ以外にも女性初のザフトレッドである副隊長のシホ・ハーネンフースなど、ジュール隊は色々な意味で異端な部隊であった。
 
 
しかし、なぜかイザークはシンの能力を高く買い、こうしてパーソナルカラーの専用機までを自分に与えた。
あの人は、何を、狙っている?何を俺に求めているんだ?
イザークの思惑を疑わずにはいられないシンであったが、先程のディアッカの言葉を思い出した。
 
──他人の言葉や評価に流されるな。イザークはそれが出来ると思ったからこそ、お前にその機体を与えると決めたんだ。
 
感情の起伏が激しいものの元来素直で真っすぐなシンには、その言葉だけでイザークの真意を計り知る事は難しかった。
今日の任務が終わったら、隊長ともう一度話をしてみよう。
シンはそう心に決め、操縦桿を握る手に力を混めるとしっかりと前を見据えた。
 
 
 
 
ベルリンの町並みは、地球上でも美しいと評判だったらしい。
話だけはシンも聞いて知っていたが、今目の前にあるのは中途半端に復興が進んだ歪な町並みであった。
目立たない場所ではあるが、そこかしこに積まれたまま放置された瓦礫。
焼けた煉瓦はそのままに、表側だけを補修して営業を再開する商店。
煤けた空き地に咲く小さな花が、MSから降り立ったシンの心に複雑な感情を生んだ。
 
ここで、ステラは死んだ。
それ以外にも、たくさんの罪も無い人々が巻き添えになり亡くなった。
命があれば、とはよく言うものだが、家を無くし仕事を失い、ここまで再建するのも並大抵の苦労では無かっただろう。
そんな事を思いながらついぼんやりとしてしまったシンだったが、次の瞬間耳に飛び込んで来た言葉にはっと我に返った。
 
 
「ったくよぉ…。助けてやる、って言ってんのに、何で俺たちがあんな態度取られる筋合いがあるんだろうな?」
「あの時一番に助けに来たのだって俺たちだぜ?ナチュラルはそういう恩義とか、簡単に忘れちまうのかねぇ」
「ほんとだぜ。なのに、コーディネイターだからってびくびくこっち見てるだけで…訳がわかんねぇよ」
 
 
あまりの言い草に、シンは頭に血が上るのが自分でも分かった。
後先も考えず、口から言葉が零れ出る。
 
 
「…あんたたちのその上から目線な態度が原因じゃないんですか?」
 
 
鋭い言葉とともに、シンの赤い瞳が背後にいた兵士達を射すくめる。
そこにいたのは、カーペンタリアに駐屯しているザフトレッド達だった。
 
「はぁ?俺たちに言ってんのかよ?」
「そうですけど?他に誰がいるって言うんですか?」
挑発的なシンの言葉に、兵士達の目が細まる。
と、その中の一人がにやりと笑った。
 
 
「プラントで優雅な生活を送ってたやつには分からない苦労だってあるんだよ。そういやお前、デスティニーのパイロットだったんだってなぁ?」
 
 
シンの赤い瞳が大きく見開かれ、揺れた。
 
 
 
 
 
 
 
016

シンが思わず発した言葉かきっかけで、揉め事発生…?

 

 

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2014,9,11up