カーペンタリアに着いて1週間。
ディアッカは本日何杯目か分からないコーヒーを口にし、顔を顰めた。
「シン、この辺にコーヒー豆売ってる店とかあったっけ?」
「…駐屯兵に確認しておきます。ていうか、今日の予定聞いてました?
もうすぐベルリンに飛ぶんですけど?」
イザークから与えられた任務ーーダストコーディネイターとの接触とプラントへの招致ーーは、予想通り難航していた。
こちらに到着して現在まで、ラスティの消息もダストコーディネイターのコミュニティの所在地も杳として掴めてはいなかった。
1ヶ月、このままの状態が続くようならミリアリアに事情を打ち明け、協力を仰ごうとディアッカは密かに考えていた。
ミリアリアをジャーナリストの世界に再び関わらせるのは気が引けたが、任務を遂行させてプラントへ戻る為には仕方がない。
そしてもうひとつ。
ディアッカにはザフト軍上層部とカーペンタリア基地上層部より大きな任務が与えられていた。
それは、未だ復興が進まぬ地域への支援と技術協力、である。
地球上のどの国もが、オーブのように戦後順調に復興が進んでいるわけではない。
予算や人手、技術が不足し思うように復興が進まない地域も多くあるのだ。
ラクスとプラント最高評議会は、そんな地域へザフト兵による人的支援と、プラントの技術を惜しみなく提供する事を決めた。
ただ、反コーディネイター思想を持つテロリスト達やブルーコスモスの脅威もあり、実際は思う程手を差し伸べきれていないのが現状であった。
「支援しに行ってテロに巻き込まれてんじゃ、そりゃ兵の士気も下がるよなぁ…。」
思わずぼやくディアッカに、シンは思わず口を開いていた。
「そんな簡単に、今まで敵だと思ってたものを受け入れられませんよ、誰だって。
実際目で見て、触れて、話して。
初めてそこで疑念みたいなものが生まれるんじゃないですか?」
ディアッカは興味深げにシンを見つめ、そしてにやりと微笑んだ。
「それって、お前の実体験に基づく話?」
シンの顔がぱっと赤くなった。
「一般論、です!…多分。」
そうしてふてくされたようにそっぽを向く副官に、ディアッカはクク、と意地悪く笑った。
出立前、ディアッカが家を出ている間に、どうやらシンはミリアリアと話をする機会があったらしい。
詳しくは聞いていないが、ミリアリアが差し入れをシンに託した事、シンがミリアリアの事をさん付けで読んでいる事からも二人の関係は容易に窺い知れる。
ミリアリアの言葉は、不思議な程人の心に入り込む何かを持っている。
それはディアッカ自身が一番良く知っている事だった。
「隊長、お時間です」
ドアの向こうから声がかかると、ディアッカは伸びをして立ち上がった。
「さて、格納庫行くか。あ、お前も一緒に来いよ。」
「は?」
「いいから、ほら!さっさと来いって!」
ディアッカの声に、シンは追い立てられるように格納庫へ向かった。
「どう?これ。」
目の前に立つパールホワイトのブレイズザクファントムを、シンはぽかんとただ見上げた。
「はぁ…どう、って言われましても…きれいな機体ですね、としか…」
「ロールアウトしたばっかの機体だからさ。さっさと調整始めた方がいいぜ?」
「へ?」
「だーかーら。これ、お前の。」
「……はあぁぁぁっ!?」
シンは素っ頓狂な声を上げ、慌てて辺りを見回した。
つい最近まで部隊を転々としていた自分に、パーソナルカラーの機体?!
シンは呆然と言葉を失う。
「イザークが決めた事だ。…まぁ、俺も正直驚いたけどな。」
ぽん、とディアッカに肩を叩かれ、シンはようやく我に返った。
「お前に、期待してんだよ。イザークは。こういう形でしかそれを表せねぇ、不器用なやつなんだけどな。」
シンは改めて、ハンガーにかけられたパールホワイトの機体を見上げた。
自分専用の機体は、デスティニー以来だ。
あの時は、デュランダル議長から直々にロールアウト直後の機体を受領した。
そこに込められた思惑など、考えもせずに。
「イザークが、シン・アスカという人間を一人のパイロットとして正当に評価した結果がこの機体だ。
この機体で何が出来るか、それはお前次第だ。それをまず、自分で考えろ、シン。」
その言葉に、はっとシンが振り返る。
「もう、他人の言葉や評価に流されるな。
イザークはそれが出来ると思ったからこそ、お前にその機体を与えると決めたんだ。
それだけ、覚えておけよ?」
そう言ってにやりと笑い、シンに背を向けるとディアッカは自身の機体へと歩き出す。
「…了解しました!」
ワンテンポ遅れたシンの声に、ディアッカは振り向かず片手を上げて応えた。
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またも捏造満開。
シンにパーソナルカラーの機体、です。
色は散々悩んだ末、パールホワイトとなりました。
2014,9,11up