42, 家路

 

 

 

 

「なぁ、なんでお前、あそこにいたわけ?」
手を繋いでアパートへの道をゆっくりと歩きながら、ふと尋ねたディアッカにミリアリアははにかんだ笑顔を向けた。
 
 
「うん…あそこに行けば考えがまとまる気がしたの。
プラントに来て、ディアッカが初めて連れて行ってくれた場所だし、指輪、貰った場所だし…。
そういえば、ディアッカはどうして?」
 
逆に聞かれるとは思っていなかったらしい。
ディアッカの目が泳ぐ。
「えー、と。その、あれだ。」
「何?」
ディアッカは不思議そうに首を傾げるミリアリアから目を逸らし、ぼそぼそと話し始めた。
 
 
「…昨日、あんなこと言っちまって。
どんな顔してお前に会えばいいかもわからなくてさ。
もう一度、あの場所から始めようと思ったんだ。
あの時の気持ちを思い出して、それでお前に向き合おうと思った。」
 
 
ミリアリアは、繋いだ手を思わずぎゅっと握りしめた。
「…また、同じこと考えてたのね。私達。」
「また?」
「忘れたの?AAで話したじゃない。会えない間、月や星空を見てたって。」
「あ…。」
ディアッカも思い出した。
別離の間、気付けば星を見上げ、ミリアリアを想っていた事を。
 
 
 
「なんか、信じられねぇよな。」
あの頃は、こんな未来があるなど予想もしていなかった。
ミリアリアと手を繋いでプラントを歩き、同じ家に帰る。
ミリアリアの作る料理を食べ、笑いあい、たまに喧嘩をして。
ミリアリアを抱き締めて眠りにつき、目が覚めれば隣にミリアリアがいる。
 
 
 
「…そうね。私も信じられない。」
戦場カメラマンからジャーナリストと呼ばれるようになったあの頃。
紛争地域を周り、心が壊れそうになりながらも何かを伝えたくて必死で写真を撮って。
それでも、ディアッカの事を想わない日はなかった。
元気でいるだろうか。
笑っているだろうか。
新しい恋人が出来て、もう自分の事など忘れてしまっただろうか。
 
 
「これからは、二人で星を見られるんだね。」
「星だけじゃなくて、なんだって見られるだろ?一緒にいるんだから。」
 
 
そう言ってディアッカは、繋いだ手を解き、そのまま指を絡めた。
するとなぜか、ミリアリアの頬がうっすら赤くなる。
「なんだよ?」
「…っ、なんでもない。早く帰ろ?」
「あ?ああ。」
首を傾げるディアッカに気づかないふりをして、ミリアリアは歩みを早めた。
 
 
 
 
 
言えるわけがない。
二人が指を絡めるのは、ベッドの上にいる時。
不意にそれをされて、無意識にその時の事を思い出してしまったなんて。
だから、早く帰りたい、と思ってしまっただなんて。
 
 
 
絶対に、言えるわけがなかった。
 
 
 
 
 
 
 
016

オマケ的なお話です。

二人の言葉や心情が、なんだかとっても感慨深い…。

独身時代最後の、手繋ぎデートですv

 

 

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